インボイス制度のポイントと対策を、実務の手順に沿って お伝えする12回シリーズ、

今回は、免税事業者の方を対象に「適格請求書(インボイス)発行事業者になったら...」というお話です。

「免税事業者」のままでいるより、

「適格請求書(インボイス)発行事業者」になった方が良いと判断された場合に、

「必要な作業」「納税額はいくらか」などについて、お伝えしていきます。

 

目次

 

1.必要な作業

 1)手続きすること

 2)整えること

 

2.  納税額はいくら? シュミレーションしてみよう

 1)原則課税の場合

 2)簡易課税の場合

 3)シュミレーションまとめ

 

3.支援策があります

 1) 2割特例 しばらくは納税額が少なくてすみます

 2) ソフトの購入に補助金あります

 

  1.必要な作業

 

 1)手続きすること

  「適格請求書(インボイス)発行尾事業者」は「課税事業者」のみがなれます。

   まず、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して「課税事業者」となります。

   その後「適格請求書発行事業者登録申請書」を提出します。(同時でも可)

 

   しかし2029年9月30日を含む課税期間中であれば、

  「適格請求書発行事業者登録申請書」の提出のみでOKです。

 

  「適格請求書発行事業者登録申請書」の提出方法については、こちらをお読み下さい。  

 

 

 2)整えること

 

  ① 請求書フォームの変更

    請求書を「適格請求書(インボイス)」のフォームに変更します。

      詳細は、こちらのブログをお読み下さい。

 

    ② 記帳

   記帳の仕方を整えます。

   詳細はこちらのブログをお読み下さい。

 

 

  2. 納税額はいくら? シュミレーションしてみよう

 

 「免税事業者」から「適格請求書(インボイス)発行事業者」になる時の一番の心配は、

 「納税額は、いくらになるのだろう...?」ではないでしょうか?

  あくまで、仮定をおいてですが、ちょっと、計算してみましょうか?

 

  個人事業主で、大手ハウスメーカーの協力業者として電気工事業を営んでいる

 Aさんを例に試算してみます。

 

  売上や経費を以下のように仮定します。

 

  売上  税抜700万円

  経費    税抜300万円

  経費のうち消費税がかかる支払を 税抜200万円

       ※消費税はすべて10%とする

 

  経費には消費税がかかるものとかからないものがあります。

  消費税がかからない主なものは、従業員に支払うお給料や社会保険料の事業主負担分、税金などです。

 

  消費税には「原則課税」と「簡易課税」という2種類の計算方法があります。

  それぞれの方法で計算してみましょう。

 

 1) 原則課税の場合

 

  「原則課税」は、本ブログ「② まずは、ざっくり。消費税の仕組」でご説明した計算方法です。

   売上にかかる消費税から、実際の支払いにかかる消費税を引いた差額が納付額です。

   (実際には細かい計算があります)

 

 Aさんの場合

  売上にかかる消費税は、700万円×10%=70万円

  経費にかかる消費税は、200万円×10%=20 万円

 

  消費税納付額   70万円  –  20万円  =  50万円 

 

 2) 簡易課税の場合

 

   「簡易課税」では、

   売上にかかる消費税から

   売上にかかる消費税に 事業ごとに定められた率 (みなし仕入率)をかけた額を差し引いた金額が、

   納税額となります。

 

  支払の消費税は関係ないので、記帳が楽です。

  経費が少ない場合、原則課税よりも簡易課税の方が、納税額が少なくなる場合が多いです。  

  ただし、逆に損をする場合があったり、適用には細かいルールがあります。

 

  事業ごとに定められた率は「みなし仕入率」といいます。

    事業は、6種類に分けられています。

 

  第1種 90% 卸売業

  第2種 80% 小売業

  第3種 70% 製造業、農林水産業、建設業、電気業、ガス業 等

  第4種 60% 第1種~3種、第5種、第6種の事業以外

  第5種 50% 運輸業、生活関連サービス業、専門・技術サービス業 等

  第6種 40% 不動産の管理・賃貸業

 

  簡易課税は、2期前の売上額が 5千万円以下の 事業者のみ採用できます。

  現在、免税事業者の方は2期前の売上額が1千万円以下なので、採用できますね。

 

さて、Aさんは電気工事業なので、第3種となり、みなし仕入率は70%です。

 

 Aさんの売上は、税抜700万円と仮定しましたので、

 簡易課税で計算した場合の消費税納付額は

    売上にかかる消費税    -   (売上にかかる消費税 × みなし仕入率)

   =(700万円 × 10%)  - (       700万円     ×    70%     )

   =        70万円     -       49万円

   =        21万円

 

 3) シュミレーションまとめ

 

電気工事業で、売上が税抜700万円・消費税のかかる経費が200万円と

仮定した場合の納税額は、

  一般課税では 50万円、簡易課税では21万円 となりました。

(実際には細かい計算があるので、あくまで概算と捉えて下さい)

  どうでしょう?思ったより多かったですか?少なかったですか?

  このケースでは、簡易課税を利用すると、納税額がかなり抑えられました。

  どちらがトクかは、売上と 消費税のかかる経費の金額、業種によって変わってきます。

  「適格請求書(インボイス)発行事業者」になる場合、どちらの計算方法を取るかの検討も必要ですね。

 

 

  3.支援策があります

 

 ここで、朗報です!

 「免税事業者」から「適格請求書発行事業者」になった場合、いきなりの負担増は厳しすぎると、

 負担緩和のための支援策があるんです。

 

 1) 支援策1 2割特例 しばらくは、税金が安くなります!

 

  納税額と事務作業の負担軽減のため、計算方法の特例です。

 

 『免税事業者から適格請求書発行事業者になった場合、

  令和5年10月1日から令和8年9月30日までの取引にかかる消費税の納付額は、

  売上にかかる消費税の2割でよい』

例えば、売上にかかる消費税が、先ほどのAさんと同様に70万円だった場合、

2割特例適用後の納税額は、

  70万円×20%=14万円となります。

 

先ほどシュミレーションしたAさん(売上:700万円、消費税のかかる経費:200万円)の

計算方法別の納税額は以下のようになります。

  ・原則課税の場合     50万円

  ・簡易課税の場合     21万円

  ・2割特例を利用した場合 14万円 

  特例を利用すると、かなり負担減になります!

  また、この特例は、売上にかかる消費税だけを把握すればよいので、記帳作業が楽になるうえ、

  事前の届も不要で、申告時に適用するかどうかの選択が可能なので、使い勝手も良いです。

 

 2) 支援策2 会計ソフト購入時に補助金があります! 

 

  「免税事業者」から「適格請求書(インボイス)発行事業者」になると、

  請求書発行や記帳・集計が複雑になります。

  エクセルや手書でされている場合、たいていはソフトを利用した方が効率が良くなるでしょう。

  「そうしたいけど、また、負担が…」

  そんなお悩みを軽くするため、新しくソフトを導入する場合、「IT導入補助金」があります

  会計・受発注・決済・のECの機能を有するソフトと、

  そのソフトと同時に購入する場合のパソコンにも補助がつきます。

  ただし、審査があります。

  審査がおりる前に購入しても、補助の対象となりません。フライングに ご注意下さい。

 

  制度の内容、利用方法については、後日、本ブログでもまとめてお伝えする予定ですが、

  とりあえず、事務局のURLを貼っておきます。

  正直、わかりづらいとは思うのですが、制度の概要・詳細などが書いています。

 

  また、コールセンターも開設されています。

  気になることがあれば、電話でさっさと聞いてしまうことも手かと思います。

   <  サービス等生産性向上IT導入支援事業 コールセンター >

     ・ナビダイヤル           0570-666-424 (通話料がかかります)

     ・IP電話等からの問い合わせ先  042-303-9749

               ( 受付時間 9:30〜17:30(土・日・祝日を除く))

 

以上で、インボイス制度導入における 免税事業者の方へのお話は終了です。

後日、補足的に「専門家に相談したい時・税理士さんの探し方」というブログを

UPする予定です。

もし宜しければ、こちらの方もご覧頂けたら...と思います。

それでは、長いシリーズを最後までお読み下さいまして、誠に有難うございました。

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本ブログはインボイス制度のポイントと取るべき対策を理解して頂くことを目的に作成しています。

そのため、敢えて細かいところは説明を省略している箇所もあります。

活用にあたっては、自己責任でお願いいたします。

最終的には、税務署や有資格者の方へのご相談をお勧めいたします。