SF小説「宇宙惑星物語」 -16ページ目

~ロームキンの最期~

~ロームキンの最期~

こんなはずはない!


またこの青年が・・・!


憎らしい、この邪魔な若者に、どうしてこうも魅せられてしまうのか!

アメジストグロッサともあろう女が・・!


SF小説「宇宙惑星物語」

巨大な立体ビジョンに大きく映る、美しかったはずの若者の片方の眼球は黒く陥没している。


片目がない。ロームキンの拷問にでもあったのか?片目だというのにこの動きはどうか?!


惑星バックスラーの立体ビジョンに群がる群衆はどんどん増える一方である。映画か何かわからぬこの映像に突然現れ出たこの怪力の豪傑に、歓声が湧いている!


「いいぞ!やれ!若い奴!」


「全部打ちのめせ!」


生物は両目で見ることで遠近感を図っている。


視界が半分遮られたというのに、飛び交う電子ボールを見事に避け、次から次へとあの恐ろしい大蛇のような太い鞭を振って、兵士たちをなぎ倒していくとはいったい、この青年は、同じヒューマノイドなのか?!


うぎゃ!


容赦なく鉄の紐のような鞭で止めを刺す残酷な青年は、次の獲物を見つけて素早く飛翔する!


「これでは、兵士が皆やられてしまいますな、アメジスト様、兎に角撤退させては如何でしょうか?TDSAに長居ももう、不要かと。ピーンハリ様に伝えましょう。」


コルネリウスの忠告はアメジストグロッサには届いている様子は無い。美しい唇を半開きにして、その名にふさわしい宝石のような瞳が必死にとらえているのは、紛れもなくあの、青年、ベクトル王朝の十一番目の庶子、ゴルドン=ヒューマである。


美しい!そして危険なほど、魅力的である!


片目こそ無いが、この青年は全ての生物の胸を高揚させる特別な美しさを持っている。


リズム?

躍動?

憎しみ?

力?

筋肉が?!


全てが自分を魅了すると同時に、心の底から湧く憎しみも激しい。


危険だ・・この青年は危険だ!


「コルネリウス、この青年をどうにか、殺しなさい!」


「それができれば問題ないのですが・・こうも我々を悩ますとは思いもよりませんでしたな。意外な結末でした。」


「いいえ、これから、私達はこの青年に苦しめられるかもしれない。ねえ、コルネリウス、早く、なんとかして、この青年を!」


「わかりました。スパイダーを百基ほど放つよう命令します。」


「100?!足りないわ!500、投入しなさい!たとえ全滅しても構わない!」


コルネリウスの胸の内ではこの青年一人、拘っている状況ではないと判断していた。偏った判断を下すアメジストグロッサの命令にすべて忠実に従う必要はないと感じていたのだ。


長旅を同行して感じたことがある。彼女は、感情的すぎる!噂には聞いていたものの、贔屓目に見ても冷静な判断力を持っているとは思い難い。


勘が冴えていると聞いた。最初は戸惑うことも多いかもしれないが、まず間違いのない判断だと、元老院からは聞いていた。しかし、実際一緒にいてみてどうだろう?ほとんどが感情のままで、支離滅裂である。幸運にも、結果は良しと出ていたが、この青年の処理については余りにも情けない結末である。


スパイダーが一基どれほどの価値なのか計算もできるはずである。このトールドーン侵攻においては限られた予算しか組まれておらず、このような意味のない場所で、これだけの散在は無意味としか言いようがない!


コルネリウスは、自分の疑念に自信を持った。


・・・・・忠実に従うことは無い。結果を示せばそれで機嫌を直すだろう。もともと自分は彼女の監視役なのだ。


ゴルドンは、残りわずかとなった兵を蹴散らして、失神するトーマスとジルの横たえる舞台に降り立った!


「ジル!トーマス!」


ゴルドンがトーマスを揺さぶったとき、彼がうめき声を上げる。


「トーマス!しっかりしろ!ここを出るんだ!すぐにでも!」


「・・・ゴルドン!」


トーマスがぼんやりした視界の中に、間違いなく探し求めていた友を見つける。


「ゴルドン!無事だったのか!目が・・・!どうしたんだ!」


「そんなこと言ってる場合じゃねえ。いいか、俺はここをぶっ壊す。お前はジルを連れて一秒でも早くここを脱出しろ!」


「お・・・お前は?!一緒に行こう!それが、ジルの願いでもある!そのために俺達は危険を冒してきた!」


トーマスが突然手元の電子フェンシングを振り上げて、ゴルドンの背後の兵にそれをぶち当てる!ゴルドンが振り向いてホイップを床に打ちならす!


ビシン!


「う・・・うわあ!」


威嚇されただけで兵士は慌てて出口を求めて走り出す。


「トーマス、俺は俺でやる。お前たちはお前たちのやり方で戦っていけ。」


「何故だ?」


「お前のしたいことと、俺のしたいことが違うからだ。そうだろ?」


「・・・」


ゴルドンとトーマスが騒然とする、TDSAの会議場の舞台で、黙って見つめあう。


「ロームキン!」


二人の青年の前でよろめきながら、軍服の美しい女がヨロヨロと立ち上がる。彼女は持っていた冷凍レーザガンを床にほうり投げると、肩から電子フェンシングを引き抜いた。


「私と戦いなさい!」


「・・・フフフ・・・これは、大統領代行閣下。」


会議場の椅子の背もたれに立ってシバーと睨み合っていたロームキンは、ひらりと黒いマントを翻しながら微笑んで降りてくる。


「美女が台無しですな。これは全世界に放映されておりますよ。貴女方の不実な愛も、この殺戮劇も・・・」


ロームキンは満足そうに微笑んで、電子フェンシングをゆっくりと引き抜く。


「女性だとて手加減は致しませんよ・・」


ビュウ!ボッボッボ!


いきなり、ロームキンが電子ボールを三弾打ち付けてくる!


バシン!


軽々とそれを躱し、ジーゼルマッフルがロームキンに飛び掛かる!ジーゼルはロームキンのマントの片隅を掴むと思い切りそれを引っ張り、女とは思えぬ力でロームキンを床に倒した!


「女性にしておくのはもったいない!」


ロームキンがジーゼルマッフルの襟首をつかみ、二人がゴロゴロと床を転がりまわる!


「さあ!トーマス!行くんだ!ついて来い!」


ゴルドンがジルを背負い、二人の戦いを横目にトーマスの腕を引っ張る。


「しかし・・・!」


ジーゼルの危機を横目にトーマスが戸惑うが、ゴルドンが走り出すので仕方なく出口に向かう!


ジーゼルはロームキンに馬乗りになられ、思い切り首を締め上げられる!見た目とは違う、凄い怪力の持ち主に、さすがのジーゼルマッフルもその手を払いのけることができない。


「美人を殺すというのは、男にとって、残念でもあり、実は、快感でもあるのですよ。あなたの死に様がこのスクリーンで捉えられているとするなら、全世界の男たちは、貴方の美しい死に顔を、興奮して覗き込むことでしょう。貴女に相応しい、最期ですな。」


ロームキンは、ハアー!っと汚らしい息をわざとジーゼルマッフルに吹きかけ、渾身の力を込めて首を絞めた!



「ううっ・・・」


美しいジーゼルマッフルの薄紅色の唇から溢れる唾液の泡を、ロームキンが興奮して見つめる。


「美しい・・・本当に素晴らしい」


ぐっと力を入れると、ジーゼルマッフルの美しい瞳が少し飛び出したように見える!


「あぐ!」


「死にそうで死ねない。これを何度も繰り返して差し上げようか?私が昔こんな目にあったように・・・」


ロームキンは少しその手を緩める。

バシン!


「うが!」


凄い力で頭部を叩きのめされたロームキンは不意打ちを食らって舞台の椅子の角に頭を打ち付ける!ロームキンを引っ叩いたのはシバーのしなやかな鞭のような尻尾である。


「おのれ・・老犬!裏切り者め!」


ガブ!


「ウギャア!」


ロームキンが悲痛な叫び声を上げる!シバーが足に噛み付いたのだ。ロームキンの足首から鮮血が迸る!


「シバー・・・!あなた・・」


驚きの顔でシバーを見つめながら、せき込むジーゼルがゆっくりと起き上がる。まだ足元がくらくらするが、ジーゼルは、肩からレーザ銃をゆっくりと引き抜き、倒れるロームキンの上に跨る!


「ロームキン・・・志半ばにして、残念だったわね。惑星レイの民は誰もあなたの登場を待ってはいないのよ。時の声を聴くことね。」


「ま・・・待て!話し合いの余地はないのか!」


ジーゼルマッフルがロームキンの顔面向けて、レーザ銃を構える。


「さようなら」


トゥトゥトゥトゥ・・・


エネルギーをためる、レーザ銃の音が響く!


ビーーツ!


レーザ銃は、ロームキンの顔面に直撃した!