和光の根岸でございます。

 

私には、忘れられないお客様がいる。

20年前・・・

「左眼が『網膜剥離になって、手術をした』・・・視力が上がらないみたい」

とのことで初めて来年される。

 

当時検査をさせていただいた結果、

確か、右は1.2の視力が。

しかし、左は0.3か0.4程度しか上がりませんでした。

「手術をされた眼科さんは、何と?」

と確認をすると、

「これ以上は難しい」と。

 

しかし、数年に1回。

検査をさせていただくたびに、

少しつづですが視力が回復していったのですおねがい

 

もちろん理由は分かりません。

ただ、実施したのは、定期的な視力検査と

定期的なレンズ交換でありました。

現状で一番良い見え方にすることだけを実施いたしました。

 

そして、最後に私が検査をしたのが2019年。

「根岸さん、急に右が左よりも見えなくなった」

とご来店されました。

事実は、確かに右の視力が落ちてはおりましたが、

長年右の方がかなり見やすかったので、右の方が見にくく感じたようですが、

最後のメガネでの視力が下記になります。

右0.9

左0.8

一番良い時は、左0.9まで視力が出ておりました。

 

メガネ屋として、このような喜びは・・・

言葉では表せないほど、喜びと至福の時であります照れ

 

嬉しさを感じる一番の時ですね!!

 

 

実は、話はここでは終わりません。

このお客様。

視力、見え方に関しては、

私のお話を聞いていただけるのですが、

 

メガネフレーム選びは ・・・ 真逆でして、

適当と言いますか、こだわりが全くなく、

ご使用できるメガネが3個ほどはお持ちいただいていたのですが、

大抵はメガネは傷み、

必ずと言って良いほど、

「レンズ交換で良いよ」から始まります。

「いやー、もうこのメガネ傷みが激しくて・・・」

との説明をさせていただいてから

渋々・・・メガネを探していただける・・・ならまだしも、

大抵は ・・・

「根岸さん・・何か適当なの持ってきて」

と数点お持ちすると、

「じゃこれで」

「いやー、もう少しいろいろと・・・」

「いいよこれで」

で終わってしまうのです。

 

まあ、なかなかメガネフレームに興味を持っていただけなくて

数十年が過ぎたある日 ・・・ 2017年ごろだったでしょうか?

 

「少し見にくくなったので」と来店。

案の定、検査は慎重に。

しかし、例の如く「全部(3つとも)レンズ入れ替えて」と。

その1点がどうしても傷みがあり、

数年持ちそうになかったので、

「このフレームだけは、お取り替えされては・・」と

お伝えすると。

「じゃ」となり。

1つだけは新規メガネフレームに。

しかし、もちろん、フレーム選びは1分で終了いたします。

 

そして、あることが起きます。

3つのメガネが出来上がったその日。

当社のカウンターに座られたそのお客様が目にしたのが

下記のメガネになります。

 

 

「これ掛けてみたい」

「持った時の重さとは違って、掛け心地も最高ですよ」

と言って、掛けていただくと

「すごく良い。これにすれば良かった」と。

同時に「根岸さんがこれを紹介してくれれば・・・」と。

 

その時は「えっーーーー」って感じでしたが。

そこから私の反省の日々が始まります。

 

そして、お客様。

「おれさー、時計が趣味で・・・この時計いくらすると思う」

 

このお客様は、決してお金がない方ではないどころか

最初から逆ぐらいには思っておりました。

しかし、時計のことは気がつきませんでしたし、

メガネには興味がない方だと、

そして、興味を持っていただくことを私は諦めてしまっていたのです。

 

それからは、メガネフレームにも興味を持っていただいたのですが、

2019年の検査が最後。

21年街でばったりお会いして

「また、メガネ作りに行くよ」

という会話が最後となってしまいました。

 

2022年とある日

お客様のお嬢様が来店されて

「父が亡くなりました」と。

 

 

最初にお会いしたのは、

おそらく2003年ぐらいだったと思います。

視力で悩んでいたお客様。

それを少しでも改善できたお客様。

メガネにずっと興味がなかったお客様。

ある時、あるメガネに出会って、メガネに興味が湧いたお客様。

 

今でも、お顔を鮮明に。

私には常に優しかったですね。

少し強面の方でしたけどね。

私にはそんな感じには見えませんでしたが。

「根岸さんさー」

「根岸さんの言う通りにするよ」

「明日、根岸さんいるー」

って言葉が未だに鮮明に。

 

私を成長させてくれたとても大きな存在のお客様。

 

ご冥福をお祈り申し上げます。