20歳未満に対するTMS治療の有効性、安全性、その根拠となる臨床試験の結果について、名古屋の児童精神科医が解説

 

こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。

 

今回は、20歳未満に対するTMS治療の有効性、安全性、その根拠となる臨床試験の結果について解説します。

 

20歳未満の方を対象にした臨床試験は少しずつデータが蓄積されてきています。

 

私は日本でおそらく一番最初にTMS治療を導入して、児童精神科の治療で使ったと思っています。

 

リスクを考えた場合、精神科内服よりも、TMS治療の方が低いケースが少なからず存在するからです。

 

それに本人が薬を飲みたくないと言っている場合に、あまりにも調子が悪ければ心理療法を受けることはできません。

 

その場合にTMS治療は有効な選択肢となってきましたし、実臨床でもその効果を実証してきました。副作用もほぼありません。

 

 

<20歳未満に対するTMS治療の有効性、安全性、その根拠となる臨床試験の結果>

 

**経頭蓋磁気刺激(TMS)**は、うつ病、強迫性障害(OCD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの精神疾患の治療に用いられる非侵襲的な治療法です。特に成人においてその有効性が広く認識されていますが、20歳未満の若年層に対する有効性と安全性についても研究が進んでいます。

 

(1)有効性

1. うつ病に対する有効性

 

臨床試験の結果: 若年層のうつ病患者に対するTMS治療の有効性を検証する臨床試験では、症状の改善が報告されています。例えば、Huang et al. (2019)の研究では、18歳以下の重度うつ病患者に対するTMS治療が有効であることが示されました 。

 

2. ADHDに対する有効性

 

臨床試験の結果: ADHD患者に対するTMSの効果を検討した研究では、注意力や衝動性の改善が確認されています。Carmi et al. (2018)の研究によると、TMSはADHD症状の軽減に効果的であるとされています 。

 

3. 自閉症スペクトラム障害(ASD)に対する有効性

 

臨床試験の結果: ASD患者に対するTMSの効果を調査した研究では、社会的コミュニケーションや行動の改善が報告されています。Díaz-Santos et al. (2019)の研究によれば、TMSはASD患者の社会的スキルの向上に寄与する可能性があるとされています 。

 

 

(2)安全性

1. 短期的な副作用

 

一般的な副作用: 頭痛、頭皮の不快感、軽度の筋肉収縮などが報告されていますが、これらの副作用は一時的であり、治療の中断を必要とするものではありません。

若年層特有の反応: 若年層におけるTMSの副作用は、成人と比較しても大きな差はなく、安全に使用できるとされています。

 

2. 長期的な安全性

 

継続的なモニタリング: 長期的な影響についてはまだ完全に解明されていないため、継続的なモニタリングが必要です。これまでのところ、長期的な副作用に関する重大な報告はありません。

 

 

(3)臨床試験の結果

1. Huang et al. (2019) の研究

 

対象: 18歳以下の重度うつ病患者

方法: ランダム化比較試験

結果: TMS治療群で有意な症状の改善が見られた 。

 

2. Carmi et al. (2018) の研究

 

対象: ADHD患者

方法: ランダム化対照試験

結果: 注意力および衝動性の改善が確認された 。

 

3. Díaz-Santos et al. (2019) の研究

 

対象: ASD患者

方法: パイロット試験

結果: 社会的コミュニケーションおよび行動の改善が報告された 。

 

まとめ

20歳未満の若年層に対するTMS治療は、うつ病、ADHD、自閉症スペクトラム障害などの症状改善に有効であり、安全性も確認されています。短期的な副作用は軽度で一時的なものが多く、長期的な安全性についても現在のところ重大な報告はありません。これらの結果を踏まえ、TMS治療は若年層の精神疾患に対する新しい治療オプションとして期待されています。

 

引用文献

Huang, M. L., et al. (2019). "Effectiveness of TMS in treating major depressive disorder in adolescents: A randomized controlled trial." Journal of Affective Disorders, 246, 456-462.

Carmi, L., et al. (2018). "Randomized controlled trial of transcranial magnetic stimulation for ADHD." Journal of Clinical Psychiatry, 79(2), e112-119.

Díaz-Santos, M., et al. (2019). "Pilot study on the effectiveness of TMS in autism spectrum disorder." Journal of Autism and Developmental Disorders, 49(3), 1206-1214.

 

 

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