広汎性発達障害(自閉性スペクトラム障害)の診断、中核症状が何かが重要、について名古屋の児童精神科医が解説

 

 

こんにちは、医療法人永朋会、児童精神科医の加藤晃司です。

 

 

 

今回は、広汎性発達障害(自閉性スペクトラム障害)(ASD)の診断、中核症状が何かが重要、について解説します。

 

 

まずは一般的なASDの診断基準について確認しましょう。

 

自閉性スペクトラム障害(ASD: Autism Spectrum Disorder)の診断基準は、主に『アメリカ精神医学会』が発行する『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-5)に基づいています。以下はDSM-5におけるASDの主な診断基準の概要です。

 

1. 社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用における持続的な障害

 

これには以下のような特徴が含まれます:

 

    非言語的なコミュニケーションの障害: 目の合わせ方、身体言語、表情の理解や使用に困難がある。

    社会的関係の形成における困難: 友達を作ることや保つことが難しい、共感や社会的相互作用の理解に問題がある。

    社会的相互作用における共有感情の欠如: 他人の感情や興味に共感する能力が限られている。

 

2. 限定的で反復的な行動パターン、興味、または活動

 

この項目には以下が含まれます:

 

    反復的な運動、使用物、言葉の使用: 手を振る、回転する、特定の物への固執、繰り返しの言葉やフレーズを使うなど。

    日常のルーティーンへの固執: 予定の変更に対する柔軟性の欠如、日常のルーチンや儀式への固執。

    特定の興味の強い固執: 通常の範囲を超えた特定の話題や物への強い関心。

    感覚入力への反応の異常: 光、音、温度、痛みなどへの感覚の過敏または鈍感。

 

3. 早期発症

 

    発達の初期段階での症状: 通常、症状は子供の初期の発達段階で現れますが、社会的要求が増えると症状が顕著になることもあります。

 

4. 臨床的に重要な機能障害

 

    社会的、職業的、その他の重要な機能領域での障害。

 

5. 他の神経発達障害との区別

 

    他の障害による症状との区別: ASDの症状は他の障害(例えば、知的障害やグローバル発達遅延)と区別される必要があります。

 

 

といった感じです。

 

 

DSMでもICDでもですが、グローバル共通の診断基準を作るのは非常に重要なことです。

なんらかの研究をやる時に、国によって診断基準が異なれば、有効性、安全性の検討が意味があまりなくなってしまいます。

 

ですが、各国共通での診断基準となれば、このようにかっちりとしたものになります。まあ当たり前なんですよね。

 

しかしどの疾患にも中核症状というものがあります。

 

つまりこの症状だけは絶対になければ診断はつかない、というものです。

 

それがDSMでの言葉で表現されていないこともありますし、中核症状とは書いていません。

 

ASDでいうならば、対人相互性の障害、が中核症状となります。

 

これがなければ、PDDや、PDDNOSとも診断つきません。

 

対人相互性の障害とは、他者の心の理解、がどの程度できるのか、ということです。心という見えないものを見る力がどのくらいあるのか。

 

 

生育歴では、心の理論、を通過しているかどうかを見ます。

 

では、心の理論とは何か

 

「心の理論」(Theory of Mind)は、他人が独自の考え、感情、信念、意図、知識を持っていると理解し、それに基づいてその人の行動を予測や解釈する能力を指します。これは、他者の視点を理解し、自己と他者の精神状態が異なることを認識する社会認知の一部です。

 

心の理論の重要性

 

    社会的相互作用: 他人の行動や発言の背後にある意図や感情を推測することで、効果的なコミュニケーションや社会的な関係を築くのに役立ちます。

    共感の形成: 他者の感情や状況を理解し、共感する基礎となります。

    行動の予測: 他者の行動や反応を予測し、適切に対応するために必要です。

 

心の理論の発達

 

一般的に、心の理論は幼児期に発達し始めます。子供たちは他人が自分と異なる知識や信念を持っていることを徐々に理解し始め、それに基づいて社会的なやり取りを行うようになります。

自閉性スペクトラム障害(ASD)と心の理論

 

ASDを持つ人々は、しばしば心の理論の発達に困難を抱えます。これは、他人の視点を理解することが難しく、社会的なやり取りや関係の構築に影響を与えることがあります。彼らは、他者の感情や意図を読み取ることが難しく、誤解やコミュニケーションの問題を引き起こすことがあります。

心の理論の不足による影響

 

    コミュニケーションの誤解: 他者の言葉や行動の意図を誤解することがあります。

    社会的な適応の困難: 社会的な状況や関係を適切に理解し、対応することが難しくなります。

    共感の欠如: 他者の感情や経験に対する共感や適切な反応を示すことが難しくなります。

 

 

ASDの人は、この心の理論の通過が通常より遅くなります。

通常は4歳くらいには通過しますが、これが遅れれば遅れるほど、程度としては重たい可能性があります。

 

 

まとめ

今回はASDの診断、中核症状について解説しました。

対人相互性の障害、これがASDの中核症状です。

0歳からの生育歴を聞くのは、これを確認するためです。

心理検査でも、それは見ています。

こだわりだけがあっても、ASDとは診断されません。

診断はDSMに書いているあとこと以外に重要なことがあります。

 

 

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