強迫症状は、それを前駆症状として統合失調症へ進行する可能性があるから注意が必要

汚れが気になってなんども手を洗う、鍵をしめたか何度も確認する、これら馬鹿げていると思っているのに、なんども頭に浮かんでくる考えを強迫観念といいます。
そしてその強迫観念を打ち消すための行為、汚れが気になるから手を洗う、とか、鍵を実際かかっているか何度も確認する、これらを強迫行為といいます。

自分の吐き出した息が汚れているから、それが空気を通じて拡散していしまう、というのを主訴で来院した小学生の男子もいました。
その子は、汚れた息が拡散するとみんなに迷惑がかかるからと、なるべく息をはかないようにしていましたし、はいてしまったらすぐに吸い込んでいました。

このように汚れ一つとっても、触ったら汚れが伝染すると考えるのと、空気でどこまでも伝染してしまう、というのでも不安の強度が変わってくると思います。

空気感染のイメージが思いつく方が、どこまでも広がっていくという意味では、病態がわるい、と考えています。


ここでいったん、一般的な強迫性障害について記載しておきます。
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強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder、OCD)は、精神疾患の一種であり、特定の症状や行動が特徴的です。主な特徴は、強迫観念(obsessions)と強迫行動(compulsions)です。

    強迫観念(obsessions):
    強迫観念は、患者の頭の中で繰り返し出てくる不快で不適切な思考、イメージ、または衝動です。これらの思考はしばしば不合理で、コントロールが効かないものと感じられます。一般的な強迫観念の例には、以下が含まれます:

    汚染恐怖: 物事や場所が汚れているという恐怖。手を洗う、物を洗うなどの強迫的な行動が起こることがあります。
    怪我や疾患への恐怖: 自分や他人が怪我をするか、病気にかかることへの不安。
    細部への執着: 特定の順序、対称性、または数字に異常な執着を持つこと。

    強迫行動(compulsions):
    強迫行動は、強迫観念から生じる不安を軽減しようとする反応であり、一般的に繰り返し行われます。これらの行動はしばしば非合理的で、時間とエネルギーを消耗します。一般的な強迫行動の例には、以下が含まれます:

    手を洗う: 汚染恐怖に対する対処法として、手を何度も洗う。
    特定の順序で物を配置する: 物を特定のパターンや順序で配置することに強迫的にこだわる。
    数える: 特定の数字や順序に従って物事を数える。
    祈る: 不安を和らげるために特定の祈りを何度も唱える。

OCDの診断には、これらの強迫観念と強迫行動が日常生活において時間をかけ、機能を妨げる程度に出現することが必要です。また、患者はこの症状に対して抵抗を感じることが一般的で、それが苦痛を引き起こすことがあります。

OCDは神経生物学的な要因、遺伝的な要因、環境的な要因によって影響を受けると考えられています。治療法として、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy、CBT)、薬物療法(抗うつ薬や抗不安薬)、またはそれらの組み合わせが一般的に使用されます。治療によって、症状の管理や軽減が可能であり、患者の生活の質を向上させることができます。しかし、OCDは慢性的な疾患であるため、長期的な治療やサポートが必要な場合があります。
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強迫性障害は、強迫観念、強迫行為があり、それが不合理なことだと思っていて、日常生活に支障がでていると診断がつきます。


しかし強迫症状は、統合失調症の前駆症状として出現することが、少なからずあります。

私もそういう子どもや大人の方を実際にみてきました。

強迫症状だけでなく、やはり漠然とした恐怖感をともなっていることが多いです。

漠然とした恐怖感が、強迫という形で具現化したって感じにとらえています。形や名前がついた方が、本人からすると扱いやすいからです。
人間というのは、少しでも自分の体をディフェンスしようと防御システムが発動するものです。


だから漠然とした恐怖をともなう強迫の人をみるときは、常に統合失調症に進行しないかを注意してみていくことになります。

内服を使うにしても、統合失調症の症状を悪化させるようなものは使わない、ということになります。

だから、強迫症状が主訴の場合は、どのパターンでもかなり慎重にみていくことにしていました。

認知行動療法もシンプルな強迫の方には適していますが、統合失調症の前駆症状としてでている場合は逆にしんどくなってしまうかもしれません。




医療法人永朋会  理事長
加藤晃司




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和光医院 


児童精神科・精神科・心療内科 


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