ここ2年半というものおこもり生活が続き、

外食からすっかり遠ざかっておりました。

ところが先週は、メイン州でとり行われた

夫の友人の葬儀参列のために、パンデミック

以来初の遠出を敢行!

なので水・木・金の3日間はおのずと

外食三昧となりました。


我々夫婦は、決してフーディーとか美食倶楽部

会員とかいうわけではありませんが、

かつては自分たちのお店を持っていた

フードサービス業者の端くれ。

すっげー食い意地張って…… 24/7365日、

真剣に食と向き合っております。

一度は訪れてみたい、地上のシャングリラ


昨今はコロナ禍に耐え切れなくなり、

老舗ですらクローズを余儀なくされるという

飲食店界隈にとっては未曾有の混迷期。

しかしそれを逆手に取れば、現在でも元気に

営業している飲食店たちは、雨ニモマケズ、

風ニモマケズ、外食禁止令ヤ営業時間短縮

ニモマケズ、様々な工夫をこらして淘汰を

まぬがれた精鋭たちという解釈もできる

わけです。

感染症対策はもちろんのこと、提供される

飲食物が安定のおいしさ・新鮮さ・安全さで、

かつ費用対効果が高くなければ生き残れる

はずがない!と、大きな期待をもって外食に

挑んだ今回の旅でした。


ところが…… 出鼻は、「行ってきまーす」の

わずか2時間半後にくじかれることに!

州間高速道路 I-95を北上して行く途中、

ニューハンプシャー州はポーツマスの

ベトナム人経営らしき日本食屋さんで

ランチ休憩を取ったのですが……

まずはご覧くださいませ。


こちらは夫が注文したTempura Bento Box

お気づきでしょうか?

みそ汁が…… Box内に収納されている?!

ニポンジンの我々には、逆立ちどころか

バンジージャンプしてもたどり着けない

プレゼンテーション ポーン

コンパートメントの他の部分にはしっかり

食べ物が詰まっているため、ボックス自体を

持ち上げ、斜めにしていただくことも

できません。

レンゲで四角い器から液体をすくい上げる

のは至難の技で、体の半分はみそ汁で

できている夫でも、残さず飲み干すこと

叶わず!


コレはもう……毛色が違うというより、

元々の「種」が違っていたのでしょうね。

日本人の既成概念をぶっ壊し、悠々と

常識の斜め上を爆走する姿に脱帽でした。


出だしはこのようにショッキングでしたが、

一旦メイン州に突入してしまうと、ご飯も

スイーツもおいしいわ、人々は純朴で

いい笑顔だわで、食べることに関しては

大・大・大満足♡

メイン名物ブルーベリーパイ。ベリーゴロゴロです。


なんの変哲もないカフェの朝ごはん。

お姉さんが巡回していて、カップが開く前に

自動的にコーヒーが補充されます。


フードトラックのテイクアウト飯ですら

我々を唸らすハイクオリティで、大変

嬉しゅうございました。


木曜のお葬式が済むと、翌日午前中には

もう帰途に着いたのですが、その日の

ランチでまたもや度肝を抜かれることに

なりました。

以前訪れて気に入っていたとあるお店で、

初日の大失敗和食のリベンジなんぞを

企てたわたしが浅はかだったのです。


我々がお昼ご飯をいただいたのは、

メイン州の人口最大都市・ポートランドに

ある、日本人経営のジャパニーズレストラン。

有名な観光地、金曜日、しかも快晴とくれば、

相当な混雑が予想されましたが、運良く

小上がりのテーブルが一つ空いていて、

すぐに通されました。

左側の席に着きました。

(写真はウェブサイトからお借りしました。)


はしゃいでビッグ・ランチをいただいて、

後でスイマーに襲われ運転に支障が出ると

いけないので、緑茶・2、アボカドサラダ・1

握りスペシャル・1、刺身スペシャル・1

オーダーするにとどめたわたしたち。

(TPOをわきまえた量を注文するなんて、

我ながら成長したものです!

No woman, No 酒池肉林。)


10分近く待って供された緑茶は色・味・

香り・温度、どれを取っても控えめ。

注目したいのは、わたしの湯呑みの

飲み口部分が二箇所、欠けていたこと

でした。

この時点ですでに胸中に巣食い始めた

不安の雨雲……


およそ5分後、我らがサーバーくんがアボカド

サラダを手に舞い戻ってまいりました。

え〜〜と、ママン、ぼくのアボはどこ??


そしてコレが$8.50 (¥1,087)ってほんとう??

夫がサーバー氏に、もうちょっと濃い目に

淹れたお茶をいただけないかと打診している

間に、わたしはアボカドの捜索開始。

トッピングのグリーンミックスが思いの外

ライトだったおかげで、愛しのアボはすぐに

発見できましたが、それは半身()に満たない

くらいの小ぶりサイズ。

わたしの心の中の雨雲は今やすごい勢いで

成長稲妻が走り、雷のゴロゴロ音すら

聞こえてきました。


2分でサラダを平らげて待っていると、

いよいよラスボス・握り & 刺身スペシャルの

御登場です。

板前の夫、ここに来て見得を切る歌舞伎役者の

面持ちに……

わたしは知っています。彼がこの顔になったら

最後、まともなご飯にありつけません。

↑ すてきに盛り付けられてますね。↓


夫、握りのかたわらに鎮座まします

カニ&アボ巻きのうち2巻を端にのけ、

「コレ食わないでね。変色した

アボカド平気で使ってるから。」

苦々しく言うと、今度は刺身をチェック。

「マグロも冷凍焼けして

まるでカツオだな。

巻物にするならわかるけど、

刺身で出すのか?」

盛り付けが「なんちゃって」じゃない

ところを見ると、どちらもジャポネ板さんの

お作と思われるのに、食材の管理が

イマイチな上に、自分なら絶対お客さんに

出さないような劣化部分をしれっと

提供したことに対し、同国人・同業者として

不誠実さを感じた模様です。


ここまで来るともう、わたしの胸中は

どんより暗く重たい静けさの「台風の目」

状態ですが、反対に夫の方は竜巻の如き

憤りをどうにか抑えているような有り様。

もはや……ものを味わうというより、

食べられるところをさっさと食べて、

お店を出ちまおう作戦に移行した我々。

お刺身ののび具合にも、酢飯のはっと

するような熱さにも一切言及することなく、

黙々と7割方やっつけると、サーバーくんに

伝票をいただき精算の流れへ。


わりと看過できない量の料理がお皿に

残っているというのに、

「フードに問題でもありましたか?」でも

「お気に召しませんでした?」でもなく、

最上級の笑顔で「お持ち帰り用ボックス

持ってきましょうか?」

と無邪気に尋ねるウェイターくん。

わたしたちは口角をむりやりググッと

引き上げて

「いえいえ、我々今観光旅行中ですので

結構ですよ。聞いてくれてありがとう。」

と答えると、チェックブックに現金を

挟みこみました。

こちとら、

Thank you.  But “hell” no thank you.

の心境でしたが……

この時ばかりは、彼が言葉の裏の裏を

読んだりしないアメリカンであったことに

感謝いたしました。

だってママン、ぼくはもうさっさとおうちに

帰りたかったんだもの!


あのランチに$100 (¥12,800)を費やした

自分たちが悔しく情けなくて、帰りの

車中では「良い飲食店とは?」

「サービスとは何か?」「クライシスでも

生き残るために必要な食べ物やさんの

必須条件とは?」といった、ちょっと

真面目なフードサービス談議に花が

咲きました。


結局我々がたどり着いた結論は、

「仁義の道にもとることなかれ」

日常生活に取り入れたい、極道ライフハック。


お客さんを、従業員を、取引先をしっかり

リスペクトして、己の良心に沿った行動を。

儒教国日本では当たり前に聞こえても、

この国ではガン無視されることもザラです。

ズルしようが人をだまそうが、「より多く

お金を手にした者が勝ち組」的な風潮は

否めません。

ちょっと古くさいワークエシックスですが、

日本人経営者なら、この部分で他国籍軍

和食屋さんと一線を画さないでどうする??

と思いました。


あのがっくり脱力体験が功を奏し、

帰路では眠気を催すどころか、家に着くまで

3時間、瞳孔がギンギンに開きっぱなしでした。

ギラギラおめめついでに調べてみたところ、

例のポートランドの日本食屋さんは、

以前の日本人オーナーさんが外国の方に

ビジネスを売り渡され、Newマネージメントの

もとで経営されているとのこと。

どおりで、遠い昔にお邪魔した時とは

印象が違っていたわけです。

また一つ、行くのが楽しみで、想像するだけで

ドキワクドキドキ しちゃう貴重なお店を無くして

しまったなぁ……と、ぬくいお寿司と一緒に

切なさも噛み締めた外食体験でした。