『 FIRE〜炎〜』
僕は夢の中にいた。
夢の中で、1/15の昨日65歳の誕生日を迎える父親と、なぜか二人で一緒にいた。
(ちなみに僕には4つ下の弟がいるが、1/14おととい誕生日だ)
僕『誕生日、おめでとう。』
父『ジャスティンビーバーいないかな〜いないよな〜こんな所にいるはずがないよな〜』
(なぜか父は、あのジャスティンビーバーの猛烈な大ファン、という設定になっている)
僕からの誕生日おめでとうという言葉をかき消す勢いで、ジャスティンビーバージャスティンビーバー
一言目にジャスティン、二言目にビーバーと、まるで子供の様にとてもうるさかった。
ジャスティンビーバーの曲は僕も聴くし、素敵な曲は沢山あるが、まさか自分の父親がジャスティンビーバーのファンだとは。
初めて知ったよ。
ジャスティンビーバーのファン層の厚さそして幅の広さに、とても驚いた事を覚えている。
そんな父親が、急にソワソワし始めた。
ソワソワ。 ソワソワ。 ぇ、なに?なに?
年甲斐もなく、あの屈強な父が、乙女の如く。
僕は隣にいるそんな父親から目をそらす事しか出来ずにいた。
すると、
まさかのそのまさか。
父親から外した目線の先には、あのジャスティンビーバーがいたのだ。
ジジ、ジャ、ジャスティン⁉︎
え、ちょ、な、な、え!?日本、ジャパえ!?なんで?
あの世界のジャスティンビーバーが、僕の育った地元の街に君臨しているのだ。
しかも人はチラホラ通りかかるが、誰もジャスティンに気づいていない。
(ここからはもうビーバーは省きますね)
ジャスティンは、マネージャーらしき大男と二人で立ち話をしている。
いや、こりゃマネージャーとかじゃないな、ボディーガードだなあのガタイは。
流石、ジャスティン。
立ち話をしているだけで、物凄いオーラを放っている。
カッコいい。
サングラスをかけているものの、紛れも無い、どっからどう見ても、ジャスティンだ。
とてもカッコいい。
引き寄せられる様に父と僕はジャスティンに近づいていく。
父親が乙女になってしまう程のジャスティンビーバーの魅力に、近づいていくにつれ僕まで乙女になり始める。
乙女になった二人のおじさんが歩幅を合わせてソロリソロリとジャスティンの視界にお邪魔して僕ら二人の事を認識してくれた時、Monna Lisaバリに優しく微笑んでくれた。
2.3メートル先には、あのジャスティンビーバーがいる。
目の前だ。
その時点で、なぜかさっきまで隣にいたガタイの良いボディーガードの存在が消えた。
今思えば僕ら二人(乙女おじさんず)に気を使ってくれたのだと思う。(流石、紳士的)
対峙する三人。
こちらから声を掛けねば。
対峙した状態で数十秒だったであろう。
見つめ合う三人。
僕は、駅前で習得した英語という英語をフルに活用して応用をきかせた上でまた基礎的なイングリッシュに頭の中で戻どして、自分達がファンである事とジャスティンなぜ君が日本に?しかもこの街に⁉︎
と質問をした。
するとジャスティンは流暢な日本語で、
ジャス『君達に逢いに来たんだよ!』
乙女おじさんず『ポッ❣️』
(ジャスティンビーバー色に染まりたい)
隣にいる父親が、興奮を全力で抑えているのが伝わって来る最早震えている。
そんな状態の父親はあまり見たくないがそれ以上に自分の興奮が、隣にいる父に伝わってしまわない様、必死だった。
日本語が出来るとわかったジャスティンとの距離を縮める為の時間は必要なかった。
アッと言う間に僕らは仲良くなった。
ジャスティンは車で来ているみたいで立ち話もなんだから、ドライブでもしようと提案してきた。
次の瞬間、超ドデカい車が音を立てて横付けされた。
『キキィーーーッ!』
運転席を見ると先程までジャスティンの隣にいたガタイの良いボディーガードじゃないか。
ヤルゥ〜!超気が効くじゃんか!
ボディーガードに嫉妬心さえ芽生えていた僕らは、彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
さて、さて。
運転はボディーガードにしてもらいジャスティンは後ろの席に飛び乗った。
(ハマーよりも大きなSUVの車)
手招きをしてくれている。
後ろの席に三人で一緒に座ろうと言われる。
ここで問題が発生。
ジャスティンの隣に、どっちが座るかだ。
父親は大のジャスティンファン。
アッシャーがジャスティンの事をYouTubeかなんかの動画を見て発掘するそれ以前から大注目していたらしいのだ。
アッシャーよりも先に。(先見の明)
それはそうと、今日が誕生日の父親にジャスティンの隣の席をプレゼントとして譲ってあげるつもりだったが、気づいたその時点で僕は父親以上にジャスティンの大ファンになってしまっていたのだ。
ジェネレーションのGAPを上手く埋めるとか日米の橋渡し役は任せてとか年功序列だとか上手い言い訳をとっさに作って父親を納得させて、なんとか僕がジャスティンの隣に座る事が出来た。
運転席にボディーガード。
助手席に誰もいなくて、後ろの席に左から、
ジャスティン、僕、父親の順で並んで座った。
腰を下ろした時点で、僕らはファミリーの様に仲良くなった。
ラーメンが好きみたいで、僕がお勧めするラーメン屋さんに今月中に連れて行く約束もした。
とても贅沢で濃密な時が流れている。
父親も物凄い喜んでいる。
全てが、良かった。
車が走る。
僕のトークも冴え渡り、父親にツッコミを入れたりと漫才さながらの掛け合いにジャスティンもボディーガードも笑っていた。
走る車が繁華街付近に到着すると、人が沢山いるのにも関わらず窓を開けて民衆に手を振るジャスティン。
民衆も、ジャスティンビーバーがいる!となり人がドンドン集まって来た。
スマホで撮影する人、握手を求める人。
ここでもやはりジャスティンのファン層の厚さにそして幅の広さに驚かされる。
お爺さんお婆さんまでをも魅了している。
そこで、ジャスティンはボディーガードに、そろそろ車を出してと伝える。
ボディーガードは車を動かそうとするが人が多過ぎて身動き取れない。
そこで、ジャスティンは声を荒げて怒鳴り散らす様に
ジャス『どけ!そこにいる奴ら皆どけ!』
乙女おじさんず『(驚)』
え!?いきなり?あんなに気分良くニッコリ笑顔で終始朗らかな感じだったのに⁉︎
しかも、どけ!って言われているのに車の前に立ちはだかる様に行く手を阻む男が一人。
何この状況。いきなり。
行く手を阻む男に罵声を浴びせるジャスティン。
全く動こうとしない男に対して怒り心頭ジャスティン。
車を飛び出してその男に殴りかかる。
ボディーガードも運転席から降りて、殴りかかる。
もうね、ヴォッコヴォコ。
何この状況。
車の中に取り残される乙女おじさんず。
殴り合いを見ているだけの僕らは、プロ野球界で言うところの乱闘に参加しなかったとみなされ、罰金モノ2人組だ。
とは言え、状況を飲み込み始めた時には殴り合いをしているジャスティン達は、ドンドンと車から遠ざかっていくのである。
ドンドンと遠ざかり、しまいには見えなくなってしまったのだ。
ハマーよりも大きなSUVの車の後部座席に二人っきりになった乙女おじさんず二人。
僕は、何より素敵なジャスティンビーバーと言う人物が、ファンに対してすぐに沸点に達しすぐ様殴りかかってしまう気の短さそして人格にとてもガッカリしてしまった。
乙女以上に異常なまでに瞬間的にファンに大ファンになってしまっていたからこそ、そこから後頭部をバットでいきなり殴打されたかの様な感覚で、とても残念な気持ちになった。
隣に座っている父親も表情を見る限り、同じ気持ちだと思われる。
残念な気持ち、とても残念な気持ちが、、
時間が経つに連れ、、何故だか怒りに変わっていた。
隣に座っている父親も表情を見る限り、同じ気持ちだと思われる。
裏切られた感と言うのか、、なんと言うのか。。
この怒りの矛先をどこに向けたらいいのだろうか。
本当はジャスティンにぶつけるべきだが、
目の前にジャスティンビーバーはいない。。
チキショーどうしたらいいんだ!
ぁ、このハマーよりも大きなSUVの車を僕が運転して誕生日でもある父親とドライブがてら行けるところまで行こう❗️
(なんでしょうねこの発想は)
ヨシ❗️そうしよう❗️
誕生日の父親もノリノリだ❗️
ヨシ❗️出発だぁーーーッ❗️
と、車のKeyを回してギアをドライブに入れてアクセルを踏んでも動かない。
動け!
何度tryしても、動かない。
動け!動けよ!
動かない。。。
このタイミングでボディーガードが帰って来たりしようものなら命がいくつあっても足りねえぜ!
なぁ!頼む!頼むから動いてくれぇ!
思いっきりアクセルを踏み込む己の右足を見ると、なんと力の限り踏んでいたのは、紛れも無い、ブレーキだったのである。
と、次の瞬間。
何かが小さく爆発して(不具合か?)煙がモクモクと出てきた。
父親は昔から、いつも冷静だ。
この瞬間も慌てる僕をよそに、
父『窓を開けろ!換気だ!換気だ!』
この日の父は冷静だが、ジャスティンショックのせいもあり(無理もない)鈍っていた。
いや、ジャスティンショックにより僕が冴えていたのかもしれない。
窓を開けて換気と言うよりは、扉を開けて脱出だしょ⁉️そうでしょ⁉️今でしょ⁉️
しかし、窓も開かなけりゃ、扉も開かない!!
煙はドンドンと立ち込めてくる。
車内が煙で充満する。
扉を叩く! 叩いてもダメ! ダメだ!
閉じ込められた!チキショー!
志半ば、こんなところで死んでしまうのか⁉️
チキショー!
気がドンドン遠退く。。
もうダメだ。。
。。
。
。
。
。
ここで、目が覚めた。
え!? ここまでのクダリは、、夢⁉️
良かったのか?良くないのか?
複雑になりながらも、鼻には煙の匂い、
煙の匂いがして、いる、ん?
火事だ。
コレは、火事だと思った。
火事だった。
隣のマンションが…………燃えていた。
脇崎智史(ノンフィクション)