実は、あまり知られていないことですが、エリート層でも階層分化が進んでいます。

昨年、久しぶりに我が母校、埼玉県立浦和高校に行って講演をしてきたんです。講演が終わってから、進学先について生徒たちが相談にやって来たので話を聞いてみると、文化系を志望している生徒の多くが弁護士、あるいは公認会計士になりたいと言うんですね。

僕は「あーあ」と思って、次のように言いました。

せっかく司法試験をパスして弁護士になっても、年収100万にもならず、弁護士会の月々の会費約5万円も支払えず、早々に廃業してしまう連中が1年で何十人もいる。公認会計士にしても、監査法人に就職して2年間の実務経験がないと免許の取得ができず、しかも監査法人に就職できるのは全体の8割ほど。残り2割は資格があっても就職できない。そんな、貧困ビジネスに陥る可能性のある道へわざわざ進むことはない、と。

ところで私のところに年に1回、二十数人の灘高生が訪ねてきます。私の知るかぎり、将来、弁護士になりたい、公認会計士になりたいという灘高の生徒はいません。実は灘高の東大進学率は漸減傾向にあって、東大すら見切られています。英米圏の一流大学が進学先となりつつある。あと15年もすれば、灘高出身の国際的エリートが活躍し始めるはずです。

井手:興味深い話ですね。それにしても、浦和高校と灘高の違いは、どこから来るのでしょうか。

佐藤:ひと言でいえば、親の情報格差ですね。灘高の場合、すでに親たちのほうで、「自分たちが考えているようなエリートは、もはやエリートではない」ことがわかっている。ですから、「東京に行って、第一線はどうなっているのか、先輩たちに話を聞いてこい。その上で進路を決めろ」と、子どもたちに指導しているわけです。

井手:なるほど。所得間格差が開くことで、貧困層の子どもの学力低下が生じてしまうという問題があるわけですが、富裕層の間でも、情報格差によって分断線が生み出されているわけですね。