焼締還元電気炉で窯変・桟切・胡麻「備前」を焼く 焼締還元電気炉P13,C13のお勉強 その20 | (株)誠興電機産業のブログ

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岡山県和気町で電機産業盤や陶芸用電気炉をやってる会社です

当社の電気炉について昔の雑誌で分かりやすい物を見つけましたので紹介です

 

備前を焼くために
備前で誕生した画期的な

焼締還元電気炉
窯変・桟切・胡麻「備前」を焼く

 

ガスを使わず、焼成空間と加熱ヒーター空間をセラミックス隔壁材により分離 [特許製品]

 

 土味がそのままに表現される備前焼の味わいは深く、その玄妙無類な奥行は「やきもの好き」の人々の心をつかんではなさない。
 北大路魯山人も晩年には備前焼に取り憑かれ、備前焼を「やきものの最高峰」として位置付けていた。

それは、無釉でありながら、素朴な土味と同時に、窯変による不思議な味わいを見せるからである。

備前焼にとって何がもっとも重要な要素かといえば、窯焚きである。

もちろん、備前特有の土、成形、窯詰めのいずれをとっても大切ではあるが、窯焚きにこそ備前焼の焼き味を左右するもっとも重要な要素があるからである。

薪窯の大きさにもよるが、備前焼では最低でも一週間、昔の大窯では一か月近くも焚き続けたといわれる。

それは備前土が火に対してきわめて敏感な性質をもち、性急な焼ではヒビが入ったり割れたりしやすいからである。

薪窯では、最初の数日は温度を静かに静かに上げていく。

この段階はいわゆる酸化焼成である。

焼き始めはこの酸化焼成を持続することによって土を徹底的に焼き切る必要がある。

その後は温度を急に上げたり、焚き口を大きく開いて急に温度を下げたりし、灰の上にさらに灰を被せ、枯淡で変化に富んだ美しさを築き上げてゆくのである。
 こうした登り窯による備前焼独特の風情を、薪窯焼成以外で再現しようとする試みはこれまでもさまざまに行われてきた。

灯油窯やガス窯による再現はかなりのレベルまで達しているが、電気窯による再現にはこれまで限界があったといえよう。

今回ここに紹介する「焼締還元電気炉」は、その意味では画期的なものである。

それはカラーページの焼成作品例を見ていただければ一目瞭然であろう。

作品によっては、薪窯焼成との区分けができないほどの味わいが現れているからである。

 

上部の断熱炉材を外すと発熱体が見える。このように焼成空間と加熱空間をセラミックス隔壁材で分離したことが、電気窯による多様な還元焼成を可能にした


 この「焼締還元電気炉」は、備前焼の地元・岡山県和気郡の電気制御機器メーカーによって開発された製品である。

つまり、開発の最初から「電気窯で備前焼を焼くこと」がコンセプトであり、地元である備前だからこそできた製品といえよう。

従来の電気窯は、本来が酸化焼成用の窯であり、これで還元焼成しようとすればガスを充填するか、あるいはサヤ鉢を用いるかが一般的である。

しかし、それで再現される備前焼の風情はやはり、本物にはとうてい敵わず、灰被りや胡麻、桟切、窯変にも人工的な痕跡を残してしまう。

しかも電気窯での還元焼成は発熱体の消耗を招き、断線などのトラブルがつきものであった。

 

壺1つ、徳利4つ、ぐい吞み12個が普及型(P13)の焼締還元電気炉に窯詰めできる。写真は窯詰め前の素焼作品


 しかしこの「焼締還元電気炉」はその構造がまったく異なり、作品を焼成する空間(炉内)と、加熱ヒーター空間が隔離材によって完全に分離されており、いわば炉内自体がサヤ鉢状態になっている窯である。これはまさに発想の転換によって生まれた電気窯。この空間分離によって、釉薬の付着、薪や炭や灰との接触、侵触化学反応などによるヒーターの断線が確実に防止できるのである。

 

窯詰めの途中でぐい吞み作品の上から、松灰を適当に振り掛ける

 

上掲の作品を窯詰めした状態


 作品焼成空間が全面セラミックス隔壁材で囲われていることにより、焼成中の炉内を空気の調整で酸化雰囲気、中性雰囲気、還元雰囲気の切り替えが自由にコントロールできる。

このため、炭や薪といった還元材を焼成途中で投入することで、備前焼独特の胡麻、桟切、紫蘇、窯変といった土味の変化を存分に楽しむことができるのである。

この焼成途中の昇温中、降温中に炉内雰囲気を変化させることが可能なことにより、土味のさまざまな変化を生み出しているのである。

もちろん、緋襻などの酸化焼成、炭化焼成も可能であり、ガスを用いた還元焼成にも対応できるようになっている。

図1


 後で紹介する備前の窯変焼成パターンを見ていたければ分かるが、その焼成時間は備前の登り窯焼成に匹敵するほど長時間にわたっている。この焼締還元電気炉の開発当初は、電気窯の特性を生かして短時間で効率良く焼成する窯を目指したという。

しかし試行錯誤を繰り返すうちに、備前焼の本物に迫るにはやはり、かけるべき時間はかけて、備前土をしっかりと焼き切る必要性を痛感したという。

ちなみに、炉材には高断熱性のセラミックファイバーを用いており、レンガ炉に比べて昇温効果が高く、長時間焼成ではあっても省エネを実現している。

 

複雑な焼成条件を多点折れ線プログラムコントローラーで容易に入力することができる

 

図2

※こうした焼成パターンが、胡麻や桟切を含めた窯変など、目的とする焼き味に応じて用意されている。なお、今回は紹介しなかったが、備前以外の焼締や志野・唐津・萩などの各焼成パターンも個々に確立しつつあるという。

 

炭投入による焼締還元焼成の実際

 

窯上蓋には4カ所の炭投入口(閉)と排気扉穴(中央)があり、400℃までは水分抜きのため中央のみ全開で昇温

 

900℃に達したら、炭投入を始める

まず投入する炭を投入口のそばに用意し上蓋穴を2カ所開ける

 

ちょうど炉内の四隅あたりに炭を落としていく

この作業を30分ごとに1050℃まで行う

 

赤松の割木片を2本だけ投入すると煙突部からやや黒煙が出る

 

登り窯焼成で残った赤松の熾炭を用意して使用してみる

 

炭を投入するために、1050℃に達した時点で上蓋を開けたところ

 

炉内の作品が3分の1まで埋まるように炭を入れる

 

1100℃までにもう一回、今度は作品が全部埋まるように炭を入れる

 

下部の空気穴(Pガス穴)の開閉で酸化・還元を調節する

 

 以下には、炭投入による還元焼成で得られた備前焼作品を見ていただくが、備前焼の見所である土味を具体的に紹介しておこう。
■桟切(さんぎり)
備前焼特有の降灰による発色部分をいう。

普通の酸化焼成では赤褐色の肌を呈する所に、灰がかかって部分的に還元焼成された結果、灰青色を帯びた個所を指す。
■紫蘇(しそ)
これも備前焼特有の見所であり、いわゆる赤紫蘇の葉の色部分をいう。

備前土に含まれる成分と降灰との反応によって現れる発色で、濃色の紫蘇色を呈する。

この紫蘇色が深いものほど評価される。
■胡麻(ごま)
備前焼などの表面に灰が降りかかり、大小の斑点状の紋様が現れたものを指す。

その自然釉の発色には変化があり、黄胡麻・青胡麻などと呼び分けられる。

藁などが作品の表面に巻かれて、線状に胡麻が現れたものは糸胡麻という。
■窯変(ようへん)
備前土に含まれる鉄分などと灰の成分とが、強い還元焼成条件下で現れる赤や黒が入り混じった複雑な発色を呈したもの。

備前焼ではその趣ある複雑な発色を高く評価している。

 

窯出しと焼成作品紹介

ここで紹介する備前焼の焼成作品は、前ページまでと同様の方法で以前に焼成したものである。

壺と徳利4点、ぐい吞み12点のうちのいくつかの焼き味を見ていただきたい。

ただし、ここに紹介する作品は素焼きではなかったので図2の焼成パターンによるものである。

 

7日間にわたる焼成と徐冷が終了し、いよいよ窯出しが始まる

(素焼きした場合は焼成時間が短縮される)

 

胡麻・桟切・窯変が現れた ぐい吞み

 

道具土を当て横向きに窯詰めしたもの

 

 

備前窯変ぐい吞 6.5×5.5cm

 

同上/道具土(童仙房)に黒灰をまぶして横向きに窯詰めした部分の緋色が美しい

 

 

藁を内部に詰め、伏せて窯詰めしたもの

 

備前桟切ぐい吞み 7×5cm

 

同上/高台側を上にして伏せ、窯詰めに際に上から松灰を降り掛けて焼成したもの

 

見事な窯変と胡麻玉垂れが現れた 徳利

 

道具土を徳利底部の一方に当てて、窯内部の四隅にそれぞれ傾けて窯詰めする

 

投入する炭がちょうど徳利の上あたりに落ち、灰が下のぐい吞みに行き渡るように、壺を置く

棚板は斜にセットした状態

 

 

備前窯変徳利 9×12.5cm

 

同上裏面/多くの灰が掛かって流れた「玉垂れ」と、緋色や桟切が現れた面

 

複雑な窯変と玉垂れの胡麻が現れた徳利の焼き肌

 

 

備前窯変徳利 9×12.5cm

 

同上裏面

 

 

備前焼窯変徳利 9×12.5cm

 

同上裏面

 

深い味わいを見せる複雑な窯変 花器(壺)

 

炭投入による還元焼成の実際 の項目までの窯詰めを再現した例では、四耳大茶壷を用いたが、前回の窯詰めでは同じ大きさの写真の花器を焼成した

備前焼独特の深い味わいを見せる窯変をみていただきたい

 

窯詰め時の様子(再現)

 

1100℃までには、作品全体が埋まるように炭を投入した

 

花器(壺) 27×24cm 灰被り、焦げ、石はぜも見られる

 

同上裏面

 

備前焼作品例

 

焼締還元電気炉で焼成された様々な作品例を紹介しよう

 

 

擂鉢 16.5×7cm 古備前独特の伝統的な形状の擂鉢

 

徳利 8×12.5cm

 

徳利 9×12cm 炭だけでもこれだけの桟切と窯変ができる

 

花入 11.5×19.5cm

 

耳付花入 20×19cm

 

耳付花入 18×22cm

 

窯変茶碗 12×7cm サヤ鉢に入れて焼成した作品

 

窯変沓茶碗 13×7cm

 

灰被茶碗 12.5×7cm 鉄分の多い土を用い、松灰を降り掛けて焼成

 

 

 

鶴首花入 8×25.5cm

 

ぐい吞み 3点 左)6.5×5cm

 

同上 ぐい吞み3点の裏面

 

青備前

温度が下がる時点で強還元がかかると緋襷部分が白くなったり、鉄分が反応して黒味を呈したりし、地肌が赤くならずに青みを帯びるものを「青備前」と呼ぶ

 

青備前ぐい吞み 6×5cm

 

青備前徳利 9×13cm

 

緋襷(酸化焼成)・炭化焼成(強還元)も可能

 

備前独特の味わいを追求した焼締還元電気炉だが、焼成パターンを変えれば、酸化焼成や炭化焼成ももちろん可能である

 

緋襷ぐい吞み 6.8×5.5cm

 

緋襷徳利 9.5×24cm

 

炭化焼成花入 12.5×21cm

 

炭化焼成小壺 6×5.7cm  ぐい吞み 6.5×5.2cm

 

ここで紹介した備前作品は、すべて誠興電機産業が開発した焼締還元電気炉によって焼成された作品である。

ここまで紹介すれば、備前焼以外の作品、誰もが憧れる「志野」や「信楽焼締」ではどんな結果が得られるかという関心が高まってくる。

今回の備前作品を含め、志野や信楽作品が下記の陶芸展に展示される。

ぜひその実物をご覧いただきたい。

 

SEIKO窯(電気十炭)焼成作品展 ー備前・志野・信楽ー

会期◆2月17日(木)~21日(月)    ※昔の雑誌のため昔々の2005年2月です  

      時間/午前11時~午後6時

会場◆ギャラリー桜(中央区銀座4-8-13 蟹睦会館ビル5階 電話03-3563-4141)

 

 

雑誌記事で使用されたのは電気窯は当社のP13-PEB335K-1Z

 

以下が2024年5月時点の価格です

P13-PEB335K-1Z 4SC  価格  910,000円(税抜本体)  1,001,00円(10%税込)

C13-PFG555K-2Z 4SC  価格1,800,000円(税抜本体) 1,980,000円(10%税込)

C13-PFG775K-2Z 4SC  価格2,850,000円(税抜本体) 3,135,000円(10%税込)

 

誠興電機産業のホームページに

焼締還元電気炉の特徴いろいろと記載ありますので、一度ご覧ください

電気炉製品紹介

 

また、当社の電気炉中古品がお安く入手できる時もありますので、こちらもご覧ください

電気炉中古品情報