夫は、気に入らない事があると、拳で床や壁を思い切り殴り付け、びくびくする私を見て、ストレスを発散することが度々あった。


特に夜中。

一旦眠りに落ちた頃に、夫の部屋から物凄い音がいきなり響き、私と愛犬が飛び起きる事が多かった。


鼓動が速まり、血の気がひいて、必死に何が夫の気に障ったのか、思い出そうと暗闇で怯えた。


何度か床を殴り付けた後、静かになっても、私は、夫がとうとう私を殺しにくるのではないか?と恐ろしくて過呼吸になった。


安定剤に頼りながらの生活。


愛犬が、不安そうに尻尾を振っている。


彼女もまた、自分達を脅かしている音が、夫の腹立ちのアピールだと、知っていた。


「大丈夫、大丈夫」


愛犬を抱きしめ、何度眠れない夜を過ごしただろう?


夫が私に腹を立てるのは、

「人前で恥をかかせた」

「言葉遣いを間違った」

「質問する内容がおかしい」

と言った、謝罪しても許してもらえない内容なので、どんなに気を付けていても、どんなに夫の機嫌が良くても、何時なんどき夫の癇に障るか、心が休まる時がなかった。


夫は私の仕事を手伝い、それで私から収入を得ていたが、私が大病を患い、仕事がなくなると、次第に追い詰められていった。


「アルバイトでいいから、自分のお小遣いだけでも、働いてね」


何年も、丁寧にお願いし続けた。


その度に、夫は不機嫌になり、腹いせのようにバイクでツーリング仲間と出掛けてばかりいた。


勿論、ガソリン代は私のカードを使って。


衣食住、困らない。


働かなくても、人生を謳歌できる。


気に入らなければ


私が逆らえば、


キレるふりをすれば良い。


巨漢の夫が暴れると、小柄な私にはどうしようもなかった。


自宅で仕事をしていたので、仕事を捨てて逃げることだけは、考えられなかった。


大切な、母の遺してくれた仕事。


夫は、その事をよくわかっていた。


私は、奴隷だった。



🍀好きなものを、好きな時に食べることができる、幸せ