イギリスでは6月8日に総選挙がありました。

 

主な注目が集まっていたのは、保守党を率いるメイ首相と労働党を率いるジェレミー・コービン氏でした。先月にあった地方選挙ではメディアのバッシングの影響もあり、労働党はかなり苦戦していましたが、総選挙の日程が公開されてからは社会現象とも思える勢いでノリに乗りきったコービン氏が信じられない躍進をし、結果総選挙は保守党がわずかに過半数を割るという、実質的に労働党の勝利というような形になりました。

 

 

 

 

【関連記事】

イギリスの革命児が労働党党首選挙に圧勝 ジェレミー・コービン

 

これは2015年の記事ですが、この記事を掲載してから後もずっと、コービン氏はメディアに徹底的に叩かれ続け、同じ労働党内からはクーデターのように彼の失墜を求める動きが連発しつづけていました。

 

メディアも彼自身の政策を批判するよりは、たとえばかなり昔にアイルランド共和国軍(IRA)と交流があったことから「テロリストのシンパ」だと同じことを聞き飽きるくらい繰り返し、理性よりも感情に訴えるような手法でした(同組織は実質上、活動を停止している過去のもの)。また労働党内からの彼に対する批判も「Unelectable( 選出される見込みのない )」と抽象的で具体性のまったくない表現をおうむ返ししていただけでした。

 

一方、そういった批判の中地道に何十年も政治家を続けてきているコービン氏は、そういった中から外からの批判の中も、党首になってからも地道に活動を続け、特に若者層に熱い支援を集め続けていました。政策の方向性や頭の柔軟な若者から手厚い支援を受け、無投票層を動かしている点などでアメリカのロンポール氏やサンダース氏とよく似ています。

 

コービン氏の具体的な政策については大手メディアなどでも報道があると思いますのでこちらでは割愛し、最近のコービン氏に関する、歴史を塗り替えるような出来事や怪しい事件について順不同でまとめました。

 

イギリスがようやく大きく動き始めました!!

 

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★選挙制度自体を否定するアナキストやインテリ系著名人の心を動かした

 

・ハッキング活動なども行う政治的活動集団アノニマスの概念の始まりとなった映画、「Vフォーヴェンデッタ」の原作の著者アラン・ムーア氏もコービン支援の理由を熱弁しています。

 

根っからのアナキストである彼も、選挙制度自体になんの信頼感も持っていなかったのですが、その基本的方針を変えて労働党に投票することにしました。

 

http://www.prruk.org/why-v-for-vendetta-author-alan-moore-says-you-should-support-jeremy-corbyn/

 

(この映画とアノニマスに対する陰謀論的批判は、もううんざりするほど聞き飽きていますので、その点に関するコメントはご遠慮ください)

 

 

 

・そして「世界で最も賢い人物」として知られているスティーブン・ホーキング博士もまた、「保守党政権になればイギリスは壊滅的な状態になる」とし、公に労働党支援の意志を表明しています。

 

 

 

http://www.independent.co.uk/news/science/

 

 

 

・俳優や作家、ジャーナリスト、コメディアン、徹底した無神論者などとして有名なスティーブン・フライ氏も労働党支援に回りました。

 

ちなみにイギリスではコメディアンはケンブリッジ卒が多く、かなりのインテリな人が多く、日本でいうお笑い芸人とはかなり違った感じです(頭のいい方も多いですけどね)。そのためか洗練された政治的な発言も多いのが特徴です。

 

 

 

 

・私の大好きな、正体不明の謎の政治的ストリートアーティスト、バンクシー(Banksy)氏も、おもしろいキャンペーンをしていました。

 

保守党以外に投票した人(ただし彼の出身地のブリストル周辺限定)で、その投票用紙の写真をバンクシー宛に送ると、彼のサイン付きの作品を無料で進呈するというものです!一部では投票者の投票内容を明らかにしているために、法律違反ではないかという声もありましたが・・・同意の上で公開しないのであれば、そういった法の目もかいくぐれそうな。

 

【バンクシー氏の関連記事一覧】

 

リンク

 

 

http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/art/news/

 

 

 

 

・ノーム・チョムスキー氏も選挙権があればコービン氏に投票すると支援の念を明らかにしています。

 

 

 

 

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★知識層でなく、政治にあまり関心のなかった層や若者などまでもがコービン氏に夢中に

 

 

都市部のインテリ層に左派的思想が受けるのは新しいことではなく昔からよく見られる傾向ですが、メディアが「過激派アカ」として描くコービン氏の支援者層はそれだけにとどまりません。

 

政治に興味のなかった人、メイ首相の「緊縮財政ばかりでボロボロになったイギリス」にうんざりした長年の保守支持の人、小学生やサッカーや音楽ファンなどからも異常なまでに熱い人気を博しているのが新しいことです。さらに支援者層の熱意は凄まじく、これまでのイギリスの歴史や伝統が変わったとさえ言えるほどです。

 

総選挙での獲得議席数では保守党にわずかに及びませんでしたが、選挙運動前の座席の割合からの変化や選挙時に行われた不正な行為などを併せて考えると、労働党の圧倒的勝利とでもいえる結果でした。

 

Wirral Live music festival という音楽のフェスティバルで、突然ステージに表れたコービン氏に向かって群衆が「Oh, Jeremy Corbyn!」という今やかなり有名になったスローガンを叫んでいる圧巻の映像です。

 

最後にコービン氏は「この総選挙は、あなた方のためのものです!」と締めていますが、熱気がすごくて動画を観ているだけでも伝わってきそうです。

 

 

このスローガンは選挙戦中に始まったもので、全国で彼がスピーチに赴いたところの多くで大絶唱されていました。

 

 

うちの子供たちもお気に入りで(というか頭にすごく焼き付いて離れない)、気がついたら歌っていたりしています( ´艸`) 

 

このチャンツをリミックスしたものまで作られていました。

 

 

 

 

 

これは少し違うバージョンですが、リバプールのサッカーファンがジェレミー・コービン氏と現在のイギリス国内の問題を簡潔に、サッカーの応援風にしたてて合唱しています(*´ω`*)

 

サッカーファンという層は、一般的にはあまり政治に興味もなさそうなイメージが強いのですが。。。楽しそうです( ´艸`)

 

二つ上の音楽のフェスティバルでコービン氏は、「サッカーも音楽も、イギリスの労働者階級に支えられてきた文化です。そしてあなた方は、サッカーや音楽の教育を望む子供は誰もが自由にそういった教育を受けることが可能な社会を望みますか?」という内容の演説を行っています。

 

彼の発言は、実際に人々の話を聞き、現実はイギリスの今はどんな社会なのかをしっかりと把握して解決しようという姿勢が明らかにされるものです。そのためにメイ首相のような、概念をもて遊んでいるだけで、「Strong and Stable(強くて確固とした)」イギリスにしたいということを何度も繰り返すのよりもよほど多くの人の人の心を捕えてやまないのでしょう。

 

趣味は貸農園で、可能な限り自転車通勤をしていた彼は、多くの人の話を聞いてきたと話していましたが、実際にそうしていると思われます。

 

 

 

 

 

これは少し前の映像ですが、選挙運動中のコービン氏を信号待ちの車中に見つけたサイクリストが車に向かって話しかけ、コービン氏が窓を開けると「あなたのご成功をお祈りします!」と自分の熱い気持ちを語り始め、その周りからも彼の存在に気付いた市民から「コービン!イエー!」と歓声が上がり、彼はそれに向かって笑顔で手を振っています。

 

 

 

 

 

 

 

テリーザ・メイを嘘つきだと批判する曲を購入して、反対の意志を表明しようという運動も選挙活動中に起きていましたが、これはイギリスでチャートNo.1になっていましたが、これだけ見てもすごい差がありますね( ´艸`)

 

http://www.nme.com/news/anti-theresa-may-song-liar-liar-is-climbing-itunes-chart-2081069

 

 

 

 

Captain SKA - Liar Liar GE2017

 

 

(動画内の字幕の一部を翻訳)

「現在、イギリス国内で貧困層として生活している子供の数は370万人。

 

2020年までには、この数字はさらに100万人増えるだろうと上がることが予想されている」

 

【イギリスについての関連記事一覧】

http://ameblo.jp/wake-up-japan/themeentrylist-10050925894.html

 

そんな世の中で、(顔も怖い)テリーザ・メイ首相の描く「未来のイギリス像」は恐怖心しか与えない怖い感じですが、コービン氏によるイギリス再生計画のような「未来のイギリス像」は希望に満ちていていいですね。できるかどうかは、やってみないとわからないのではないかと思います。

 

彼と相棒のジョン・マクドネル(John McDonnell)氏のコンビがまたいい感じですね。プーチン大統領とラブロフ外相のコンビを連想させます。

 

 

 

 

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★イギリス歴代首相(候補)の中でもチャーチル以来の記録的な数の人が支援に集まる

 

 

 

イギリスのゲーツヘッド(Gateshead )という町では、コービン氏を一目見ようと1万人が集まり、さらに5000人は近づけなくて別のところで見ざるをえなかったとか。

 

http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/

 

 

選挙活動で各地を訪問する度、かなりの規模の人たちが集まっていました。

 

 

https://www.google.co.uk/search?q=corbyn+election+2017+crowd

 

 

 

 

 

一方、現首相のメイ女史は・・・・

 

 

 

不正選挙活動や、やらせ動員などは保守党の十八番のようですしね・・・

 

でもさすがにこれだけの違いを見ていると、ちょっと哀れな感じさえしてきます・・・

 

【関連記事】

保守党の不正選挙に対する捜査が延期される・イギリス

 

 

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ラッセル・ブランドが、メイ首相に「さすがにあれはかわいそうだろう」と同情の気持ちを露わにしていましたが、一方で彼女のことを「バンパイヤ」と呼んでいました。

魔女っぽくもありますね。

 

ジェレミー・コービン氏は「長老」だと表現していて、ぴったりな表現だと思いました。他の誰かは、コービン氏を「オビ=ワン・ケノービ」だと言っていましたが、それもよく似ています。

 

 

選挙の結果から、イギリスは「ハング・パーラメント( hung parliament )」の状態になりました。 宙ぶらりんの議会という意味です。 、議院内閣制の政治体制において、立法府でどの政党も議席の単独過半数を獲得していない状態です。

 

政府内部ではおもしろい動きが起きています。

 

テリーザ・メイ元首相が女王に「政府樹立させて」と懇願に行ったそうですが、どうも誤った情報を提示したようで混乱を招いています。女王様に嘘を言ってしまったようです。