アメリカはイランを平和への最大の脅威だと考えているのに、残りの世界はアメリカこそが平和への脅威だと考えている理由とは?【ノーム・チョムスキー】
Why Does U.S. Consider Iran the Greatest Threat to Peace, When Rest of World Agrees It’s the U.S.?

4月4日【Democracy now!】

トランプ政権が発足してから最初の75日間の間に、ホワイトハウスはアメリカとイランの間の戦争を起こす可能性を徐々に高める段階を踏んできた。アメリカによるイスラム系国市民の入国禁止第一弾と第二弾の両方のリストに、トランプ大統領はイランの名を挙げている。

選挙期間中のトランプ氏は、重要なイランとの核協議の最終合意(訳注:イランの核開発を制限はするものの、核開発能力は完全には否定していない)を廃絶すると脅迫を行っていた。

アメリカとイラン両国間の関係について、私たちは世界的に著名な反体制派であり言語学者、執筆家のノーム・チョムスキー氏の意見を伺った。

フアン・ゴンザレス(インタビュアー):
オーストラリアの男性から届いた、もう一つの質問をお伺いします。

「アメリカ合衆国に対する最大の脅威はイランだ、と今週、ジェームス・マティス国防長官が話していましたが、質問があります。

 

なぜアメリカは、イランとの戦争を起こすための根拠となる状態を作り出すことに固執しているのでしょうか」

ノーム・チョムスキー氏:
それは何年も続いていることです。オバマ政権時代を通して、イランは世界平和に対する最大の脅威だとされてきました。

そしてオバマのキャッチフレーズ、「すべての選択肢の可能性があります」が何度も繰り返されていたのです。つまり、私たち(アメリカ)が核兵器を使用したいと望めばそれは認められているが、それはこの(イランという)平和に対する脅威が理由だというのです。

この件に関していくつかおもしろいコメントがありました。

まず、世界の意見というものがある、というものです。アメリカの調査機関による世論調査からも皆さんご存知の通り、世界の市民が考えている「世界平和に対する最大の脅威の国」は実はアメリカ合衆国です。

 

(画像 国別で「世界の脅威だと最も考えられている国」を国旗で表現したもの 2013年度 リンク

 


他のいかなる国を遠く引き離して、他のいかなる脅威よりも断トツの一位です。二位のパキスタンという意見は、それと比べるとはるかに少ないものでした。イランは(世界の脅威として)言及されることがほとんどありませんでした。

ではなぜ、ここでイランが世界平和への最大の脅威だと考えられてるのでしょう。世界的な戦略的状況に関する定期的な評価を連邦議会に提出している情報機関がありますが、そこに権威筋による回答があります。

1、2年前の情報機関による報告書内には当然、いつも通りにイランに関する報告が含まれていました。報告内容は常に同様のものです。

報告書によればイランの軍事費は中近東の標準と比較しても非常に低く、サウジアラビアやイスラエル、その他の国よりもはるかに低いということです。

イランは防衛的な戦略を取っており、外交担当が対策を検討するために十分に時間を取ることで攻撃を抑止させようとしています。

その数年前の諜報機関による結論によれば、イランが核兵器を配置しているとした場合、私たちはその是非を知りませんがそう仮定したとすると、イランの核配備は戦争抑止力としての戦略の一部だというのです。

ではなぜアメリカ合衆国とイスラエルはそこまで、戦争抑止力について懸念しているか考えてみましょう。戦争抑止力を懸念するのは、自らの戦力を使いたいと思っている者たちです。

自らの戦力を自由に使いたがっている者たちが、戦争抑止力の可能性を深く懸念するのです。だからなのです。イランは私たちの戦力を抑止する可能性があり、そのため世界の平和に対する最大の脅威だというのです。

アーミー・グッドマン:

今日は、キング牧師が(NYの)リバーサイド教会で「ベトナムを越えて」という演説を行った50周年の記念日になりますが、そこで彼がアメリカ合衆国は「世界中でもっとも暴力行為を行っている」と話していました。

では、今日のあなたのお考えをまとめとして教えてください。

ノーム・チョムスキー氏:
当時の他の演説と同様、そのキング牧師の演説はとても重要なものでしたが、当時のリベラルな北部出身者の間で彼の評判がかなり損なわれてしまいました。

キング牧師はベトナム戦争を鋭く非難しましたが、この戦争は第二次世界大戦に次ぐ最悪の犯罪でした。彼は他にも貧しい人の運動を作り出そうとしていました。人種によって分断されていない、貧しい人のための運動です。

 

 

 

(翻訳終了)

 

【参考】https://www.democracynow.org/2017/4/4/why_does_us_consider_iran_the

 

(インタビューの動画は上記リンク先からご覧いただけます)

 

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【コメント】

さすがチョムスキー氏、明瞭でわかりやすい説明ですね。

 

よくアメリカや日本のメディアや政府が「世界はこう考えている!」「国際社会は・・・」などと言われていますが、実はそこでいう「世界」というのはアメリカとわずかな同盟国だけを指していて、実際には残りの本当の世界や国際社会はまったく異なる考えのようですね。

 

「世界平和にとって最大の脅威」と考えられている国別の統計

 

http://brilliantmaps.com/threat-to-peace/より抄訳

 

上記の地図は、2013年(トランプ時代以前)のWIN・ギャロップによる国際アンケートの結果を表したもので、世界平和にとって最大の脅威だと考えられている一番の国を表したものです。

 

調査の結果は次の通り。

 

現在、世界平和に対する最大の脅威だと考えられている国として、アメリカが圧倒的(回答者の24%)の一位でした。下位の国を大きく引き離しています。

 

世界平和に対する最大の脅威だと考えられている国(数字は回答者内の割合)

一位 アメリカ(24%)
二位 パキスタン(8%)
三位 中国(6%)
四位 北朝鮮・イスラエル・イラン(各5%)

 

アメリカを脅威として感じている回答者が最も多かった国はロシア(回答者の54%)、中国(49%)、ボスニア(49%)でした。

 

アメリカやカナダ、イギリスはイランを最大の脅威と考えているのに対し、オーストラリアではアメリカが最大の脅威だと考えられているのは興味深いことです。

また地域的な対立国を挙げるケースも目立ち、例えば韓国は北朝鮮日本やベトナム、フィリピンでは中国がそれぞれ最大の脅威だと考えられていました。

インドではパキスタンが最大の脅威だと考える一方で、パキスタンはインドではなくアメリカが最大の脅威だと考えています。

その他、意外な結果の国もありました。バングラデシュではイスラエルが、イタリア人はアフガニスタンアフガニスタン人はパキスタンが最大の脅威だとそれぞれ考えていました。

 

 

(翻訳終了)

 

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古く歴史的な経緯や国境問題などから近隣諸国と仲が悪いケースは、上記以外にも世界中に存在しています。

 

日本の大手メディアの報道では、国際情勢についてはアメリカ系のメディアの要約版がほとんどのようですが、イランの様な遠い国よりも近隣諸国に対する敵対心が強い傾向があるようです。(アメリカのメディアでも中国はあまり好意的に描かれてない場合も多いですが)

 

そして依然として、「アメリカは世界最大の超大国で、世界の中でも安定した強い立場を占めており、軍備も最強と」考えている人も日本には多そうですが、そういったアメリカが世界に信じてもらおうと必死になっている一極的な権力の集中した状態は危険ですし、夢物語にすぎないようです。プーチンさんの演説にもありましたね。

 

現在はロシアや中国を中心とした反米的な国が一丸となりつつあり、米ドル中心から金本位制度の金融システムへの移行を目指しつつありますが、その動きがまた最近になって加速化してきているようです。詳しくは次の動画にまとめられています(英語)。