3月5日 【The Telegraph】http://blogs.telegraph.co.uk/finance/ambroseevans-pritchard/100015432/spains-sovereign-thunderclap-and-the-end-of-merkels-europe/

【訳文】

「スペイン統治者の雷鳴とメルケル支配のEUの終

 スペインの反逆が始まった。それは私が予想していたよりもずっと早く、そしてずっと劇的だった。

 読者の多くの方が既にご存じの通り、スペインのマリアーノ・ラホイ首相は、欧州委員会(European Commission)とメルコジにハイジャックされている欧州理事会(European Council)からの緊縮財政の要求を、単刀直入に拒否した。

(訳注 ドイツのメルケル(Merkel)首相とフランスのサルコジ(Sarkozy)大統領を合わせてメルコジ(Merkozy)というそうです)

 ラホイ首相は、自らがいうところの「主権者としての決断」を採択し、今年の財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率として、EUが提示した4.4%は無視し、代わりに(2011年の8.5%から減少した)5.8%という彼自身が定めた目標を設定する意向を表明した。

 私は、過去20年ほどEUの動向を密接に追跡しているが、これほどまでに力強く率直な挑戦的な態度を取った加盟国の他の例は思い出せない。普通はこのようなことは避けられてきた。境界線を広げようとする国はあっても、その線を実際に超える国はなかったのである。

 ラホイ氏は、ブリュッセルでEU首脳会議の後、委員会のメンバーやEUのリーダーなどに前もって通知もせずに、爆弾発言を行った。

 確かにラホイ首相は、自らがルールブックを引き裂き、EUの予算統制機構全体を否認しているという事実を楽しんでるかのように見えた。

 彼が主導権にしがみつこうとするのは、間違いなく正しい行動であった。スペインの経済は、彼の修正計画の下で今年1.7%縮小するであろうし、また失業率も24%に到達するだろう(または1990年の計測方法によると29%)。このような状況と狂信的な財政引き締めを組み合わせ、さらに平価引き下げという緩和策もないなどとは、知性をもってすれば弁解の余地はないことだろう。

 1930年代のような焦土政策を強制するよう決定を下した保守的なイデオロギーの信奉者を喜ばせるために、民主主義国家が自らの国民を犠牲にすることがこれ以上できなくなった時点にさしかかっているのだ。もう十分過ぎるくらいなのだ。

 印象的なのは、スペインの評論家からラホイ氏に対する支援の波が押し寄せていることだ。
パブロ・セバスチャン(Pablo Sebastián)のコメントを聞いて、私は言葉を失った。

 以下、私のおおまかな翻訳を紹介する。

 「スペインは、ドイツの首相などから屈辱を受けるようなつまらない国ではありません。
欧州委員会がここ数日スペインに対して見せている態度は恥ずべきものであり、条約の権限を超越したものです。彼ら欧州官僚は、自らがスペインの所有者で指導者であると思い込んでいます。

 メルケル首相は干渉し、ドイツは他国の権利の侵害を行っています。そこにフランスのサルコジが加わって、共に「政策を決定する総裁」の振りをしていますが、実際のところはEUにはそのような立場を定めている条約はありません。スペインも他のEU諸国も彼らにはうんざりしています。

 ラホイ首相は一歩たりとも引き下がるべきではありません。危険性が高く、また、我が国の国民は、メルケル首相などからの屈辱を受けるような気分にはありません。メルケルは、あたかも同盟の独裁者であるかのようにヨーロッパ中の全貯蓄金を蓄えておいて、誰にも耳を貸そうとしていません。

 メルケルも委員会も、我がスペインの、あるいは他の国の主権に手を差し入れようとする前に、しっかりと考える必要があります。なぜなら、差し入れた手が火傷してしまうからです」


 あの桁外れに誇り高く、歴史の長いスペインという国は、私の思い違いでなければ、現在、おそらくは1640年以来史上最悪の不況に入って3年目となる。そのスペイン国内で湧き上がっている国民感情は彼のコメントの中に見ることができる。
 「財政協定」について言えば、これはスペインの発言によって空文化されたことになる。

 グレシャス・ディオス。万が一あの財政協定が強制されていたら、その結果は甚大なダメージをもたらしていただろう。この協定はフーバー主義をEU法にて法定化したもので、今後も、ドイツ連邦協議会を含めた国会からの承認を得ることなく縮小政策を強制するものである。実に、この協定はドイツ憲法にも違反するものであろう。

  しかし、これはどのような意味合いにおいても施行されることはないだろう。なぜなら、既にEUの政治情勢がこの財政規律の妨害となり始めており、今後もさらに妨害となるからだ。フランスのフランソワ・オランド大統領はこの協定を破棄することだろう。

 ラテン連合が目を覚まし始めている。


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【コメント】

 スペイン首相のこんな毅然とした態度、素敵です。一主権国家の代表である以上、他の国に隷属的な態度など見せる必要はないでしょう。

 経済・財政が緊迫した状態にあるとしても、政府が国民のことを考えてくれている姿勢が見えたら、国民にも希望が持てそうなものです。

 グローバリズムの「副作用」によってこんな目にあっている国があるのにもかかわらず、未だにTPPなんかでグローバリズムに固執する民主党って何なんでしょうか。支持率もあんなに低いのに政権にしがみついているなんて、本当にそれでもサムライの国の首相なんでしょうか。これ以上恥をかく前に早く退陣して欲しいものです。

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 参考までに、これと同じ主題のニュースが日本語のロイターにありました。
【ロイター】 3月5日 http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT810591720120305
 
 短い記事ですが、この中ではスペイン首相がEU中枢による権力の決定に反抗していることについては一言も書かず、「欧州委員長は、スペインがEU財政規律の順守を確信している」などと、核心には触れずにEUの権威の安定性だけを印象付けようとしているように思われます。

「左 画家ブリューゲルによるバベルの塔

 右 仏ストラスブルグの欧州議会建物」


「人に銃を与えたら、銀行強盗をすることができるようになる。

 人に銀行を与えたら、世界から強奪することができるようになる」




「私たちの祖父母はファシストに投票などしかなった。
そいつらに鉄砲玉を喰らわせたのだ」