ナイフ | 万事塞翁がフランス

万事塞翁がフランス

フランス南西部に住んでもうじき30年になります。双子男女の母、フランス人夫の妻です。日常のあれこれをつぶやいています。

 スーパーは有難い。色んな物を買える。 

昨日仕事帰りにスーパーに立ち寄ったおり、そういやあの本、もう店頭に並んでいるかしらと覗いたらあった。

 

 この人の本読むの初めてだわと思い、ラジオでインタビューを聞いて響いたのも縁を感じた気になって購入した。今年の年頭にもっと本を読むこと、を決意の一つにしたのだったな。そういえば。

 

 サルマンラシュディの新刊、Knife(原題)、フランス語タイトル Le Couteau。2022年に起きた暴漢による自分の殺人未遂事件の体験をもとに「どうしても書かなければならなかった」という本作。

 

 「悪魔の詩」一連のイメージがあってか取っ付きにくいイメージがあったのだけど、意外に読みやすい。難しい言葉や言い回しを使わない。ある種、第三者かのような距離さえ感じられるほど、冷静に事を見つめているのだ。

 

表紙の中央にある切れ目、私は店頭ではナイフだと思った。鋭利な物で切った裂け目だった

 

 

 

 不幸なことに事件の舞台となったこの講演会をなぜ引き受けたのか。そして事件の前日の作家の行動と犯人のそれが照らし合わされ、偶然とか運命の糸とか不思議なことが淡々とも言っていいような静かな口調で語られていて、彼の作風に非常な魅力を感じて読み進めている。