ゲーマーの君 | 万事塞翁がフランス

万事塞翁がフランス

フランス南西部に住んでもうじき30年になります。双子男女の母、フランス人夫の妻です。日常のあれこれをつぶやいています。

  土曜日だというのに出かけもせず、大人しく自分の部屋でゲームに興じていた息子。

今は先週のケンカに懲りて飲みに行く気になれないのかしら…。

 

 この息子ちゃん、6月の2週目に大学が夏休みに突入し我が家に帰省、今絶賛バイト中ですが、3年前からボルドーで一人暮らしをし、大学で化学を学んでいます。

 今年はコロナのせいで、去年の9月の入学以来、ほとんど教室での授業はなかったと言います。Zoom授業ですよね。最小限の買い物など以外は家を一歩も出ず(外出規制がかなり長い間実施されていました)、もともとのゲーム好きに拍車がかかったようです。

 去年、夏のバイトで稼いだお給金でゲーマー用のPC、モニターなど夢のお宝を手に入れた彼ですが、正直私はこうなることを危惧しておりました。その予想を彼は超えて来ました。今や見事なまでのゲーマーぶりです。

 家と離れて一人暮らしをしていますので、週末などに電話をするんですが、昼にかけてもだいたい出ない。明け方までゲームをしているようで。それが"ゲーマー"さんの日常なのか分かりませが、私の感触では午後1時、2時頃にやっとこさ起きているような感じなんです。

とは言ってもZoom授業のある月-金は一応起床して参加していたのかどうなのか…。

 

 そんなことで満足の行く成績が取れるわけがありません。家に帰省して来て間もなく、夕食の席で勉強のことを何気なく聞くわけですな(あくまで何気ない風を装って。なぜなら息子君はプライドが高く怒りん坊さんなので、ここは慎重にいかないといけません)。どうなの?成績だけどさ~、と。すると、やはり口調が重い。芳しくないわけです。

 「今年一年はコロナのせいでほんとややこしかったんだよ」と。ビデオ授業と本当の授業とは違う、質問するのも簡単じゃない、などなど。何週間もワンルームの部屋で閉じこもっていてモチベーションが崩れ去ったのだ、と。

 私は、まあまあ、そうだろうな、と心で呟きました。ましてやオンラインゲームの画面を開ければ気の合うゲーム仲間が夜が明けるまで楽しく相手をしてくれるのだから、そりゃそうだろう、数学や化学のページを開こうっていう気にはならんよな…と。

 そして放った言葉が「わからんけど留年もありえる…」!!! 

 

 私は頭が一気にきゅ~っと締め付けられたような感覚でした。込み上げて来る何かがありましたが、そこはぐっと心を平静にして私は続けた。ふむふむ。そう思うってことはそれなりの理由があるのよね。けどあなた、高校卒業後にBTS(日本でいうと専門学校?)に2年行き、その後大学に入りなおして修士課程をやりたいって決めて、よし、やる気があるならやってみなさい、ってお母さんの支援を得て大学から再スタートを切った。なのにここで留年かも、ってのはこれはキツイんじゃない?何のために勉強してるのかって話よね。そしてお父さんもお母さんも何のために頑張って仕事してあなたに仕送りしてるのか、本当にそこを考えて欲しい。そして何よりあなたの生活が私は心配。ゲームに没頭して睡眠のリズムが逆転しているようだけど、食事とか運動とか、健康管理にもう少し気を付けないと、これ本当に大切だからね…。

 こんなことを淡々と落ち着いて言ったんです。それを聞いた彼の反応は…

 

 ブチ切れ、でした。まあそうよね。プライドが高い怒りん坊さんですから。

 今思えば留年かどうかまだ結果が出ていないのに、そんな先走りしたことを言った私も悪かったとおもうのですが。自分の招いた状況であることは鑑みず、私に怒りに怒っていました。逆ギレ、というのか?「大変だったんだこの1年、こんな状況でモチベが持続しない、ずっと部屋に閉じ籠りっぱなしでやる気が起きるわけがない」(外出規制中も自宅から半径1キロだったかな、は散歩やジョギングが許可されていたが彼はそんなことしないよね、ゲームがいいよね)、と同じことを繰り返すわけです。しまいには悪いのは私だ、お母さんはいつもオレのことを評価しない、みたいなことまで言っていました。彼が先生から褒められたとき、テストで結果が出せたとき、一緒に喜び合った時の記憶などはすっぽり抜け落ちていたようで…。 

 

 誰かに責任転嫁すれば、問題と正面から向き合わなくていいから楽。でもそれではずっと同じことの繰り返しになる、向上して行くことはできない。こんな正論を言うから、私は彼を怒らせるのだろうと、最近になって少し分かったのですが…。

 

 この夜は結局、1時間だか2時間だか続いた私たちの話?議論?は遠い2本の平行線のまま。

その後少しの時間を置いて、気持ちが冷静になった息子の方から歩み寄って来たのかな、ちょっと覚えてないですけど、再び話をしてちょっぴり和解となりました。

 寝る間際、布団の中で「留年したら奨学金がストップするのかしら(ほんといつもお金の心配ばかりしている)…」

「留年したら益々モチベーションを維持するの難しそう…ふう…」

 などとあれこれ考え行き着いたのは、人生なるようにしかならない。心配してもしょうがない。いつもの私の着地点でした。

 そして翌日。仕事をしている私の携帯に息子からメールが。

「ごめんね、昨日の夜は。心にもないことを言って。お母さんがオレのことを心配してくれるのは当たり前だよね。今後、生活面を改善するようにするから。じゃあ今夜。おっきなキスを送るよ。愛してる、お母さん」

 

 こいつは本当に…。プライドが高い怒りん坊さんで難しいヤツだけど、やさしい。あー、もう泣かされるのはいつもコイツ。

 

 肝心の大学進級の結果は。7月7日に通知があり、無事に2年に進級。これが本当にぎりぎりのラインだったようで、来年はこんな思いさせてくれるなよ!たのむ~!