賭け事はどの程度で事件になってしまうか。 | 若狭勝オフィシャルブログ「法律家(Lawyer)、議員(Legislator)、そのL字路交差点に立って」Powered by Ameba

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先日来、プロ野球元選手が逮捕されるなど、
賭博に関する事件がニュースを賑わせています。

5月の連休中、掛けゴルフ、掛け麻雀をしている人も少なからずおられると思います。
確かに、何かを賭けると、緊張感が生まれたり、 わくわく、ドキドキ、ハラハラします。
賭けには、人の精神を高揚させる作用があると思われます。

私は、刑事事件の専門家として、人から
「賭け事って、どこから事件になるのですか?」
と質問されます。

刑法の賭博罪は、賭博した者を罰すると規定する一方で、
「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは」罰しません、
と定めています。

もっとも、どこまでが「一時の娯楽」の範囲なのか、
必ずしも明らかでありません。

特に、現在、日本では、競馬、競輪などの公営ギャンブルも開催されており、
一時の娯楽を超えた多額の金銭がギャンブルにつぎ込まれる場合もあるので、
一層、そのあたりの線引きが曖昧になっているとも言えます。

そもそも、賭け事は、薬物と同じで、国民の多くがそれに手を出し、のめり込むと、
そのうち、多くの人が勤労意欲をなくしてしまい、国が弱体化するので、
それを防止するために禁じられているのです。

ですから、賭け事で事件になるかどうかは、
「のめり込むような金額や態様であるかどうか」
が基準になります。

具体的には、大きく負けが込んだときに、
「この負けを取り返してやろう」
と思うようになりますが、これが、のめり込んでいるかどうかの
一つの判断要素になります。

通常、何十万円、何百万円という負け金額になりますと、
熱くなり、何とか負けを取り戻したいと思いますから、
このような場合は、賭博罪として罪になります。


少し前に、大相撲の力士らの野球賭博が問題になりましたが、
ある元力士は、「友人から誘われて軽い気持ちで始めたが、
次第に熱くなり、人から金を借りるようになって、負けを取り戻そう、
借りた金を返そうと思い、どんどんはまっていった」と語っています。

逆に、熱くならず、のめり込まない程度の賭け事であれば、
刑事事件にはならないものと考えるべきだと思います。

例えば「昼メシのおごり」とか、負けを取り戻そうなどと熱くならない程度の
お金の賭けであれば、処罰されることはないものと考えています。
(判例は、現金を賭けたら賭博罪になるとしてますが、常識はずれだと思います。)

もっとも、法律家、政治家である私としては、
法律にある「一時の娯楽…にとどまるとき」という言い方は、
もう少しわかりやすい条文にできないものかと思っています。