新古今・1504 三井寺の僧たちと
《新古今和歌集・巻第十六・雑歌上》1504三井寺(みゐでら)にまかりて、日ごろ過ぎて、帰らんとしけるに、人々なごり惜しみてよみ侍りける刑部卿範兼(ぎやうぶきやうのりかね)月をなど待たれのみすと思ひけんげに山の端(は)は出(い)で憂(う)かりけり☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆三井寺に行って、幾日か過ぎて、都に帰ろうとしました時に、人々が名残を惜しんで歌を詠みました、その時の歌刑部卿範兼月を、どうして、待たれてじれったい思いばかりすると、恨めしく思ったのであろう。なるほど、山の端は立ち出るのがつらいことだ。☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取ったしじまにこのオリジナル訳です。)題詞;三井寺に行って何日か過ごしました。帰ろうとしたところ、別れが名残惜しくて人々が歌を詠んでくださいました。作者;藤原範兼(三井寺の僧たちが)どうしてそんなにひたすらため息をつきながら月が出るのを待っておられるのかと疑問に思っていましたら私との別れを惜しんでのことだったのですね。そんなふうにされると山の端を出るのを渋る月のようにより一層、この山(三井寺)を出発することがつらくなってしまいましたよ。✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎藤原範兼:1107年〜1165年4月26日(享年59)。崇徳天皇、近衛天皇、後白河天皇、二条天皇に仕えた。刑部卿。三井寺:園城寺。天台宗の寺。大津市にある。作者はそこに参詣していた。つき:月。月の光。一か月。つぎ:後に続く事。次位。劣る事。控えの間。跡継ぎ。世継ぎ。つく:終わる。果てる。尽きる。なくなる。消え失せる。きわまる。つく:呼吸する。息を吐く。食べ物をはく。うそをつく。つく:突く。打ち鳴らす。手で支える。ぬかづく。つく:築く。つく:付着させる。体を寄せる。備わる。感情が生まれる。起こす。気にいる。取り憑く。後に従う。味方する。寄り添う。はっきりする。届く。就任する。関して。ちなんで。など:どうして。なぜ。どうして〜か、いやない。まつ:待つ。松。永久不変。たれ:誰。どの人。たる:垂れ下がる。ぶら下がる。したたる。したたらす。神仏が恩恵を現し示す。たる:十分である。相応する。価値がある。値する。満足する。のみ:〜だけ。〜ばかり。とりわけ。特に。ただもう〜する。ひたすら〜である。〜するばかり。のむ:頭を垂れて祈る。懇願する。み:美しい。立派な。み:からだ。身分。身の上。自分自身。命。本体。中身。みる:目にする。見て判断する。対面する。経験する。試みる。夫婦になる。世話をする。みゆ:見える。目に入る。来る。現れる。思われる。感じられる。見かける。見なれる。人に見せる。人に見られる。人に会う。結婚する。みす:ご覧になる。見るようにさせる。見させる。見せる。結婚する。めあわせる。とつがせる。占わせる。経験させる。おもふ:思う。考える。思案する。愛しく思う。恋をする。懐かしく思う。回想する。望む。願う。希望する。心配する。悩む。嘆く。苦しく思う。予想する。〜そうな顔をする。おも:母。母親。うば。おも:顔。顔つき。表面。面影。けむ:〜ただろう。〜たのだろう。〜たのだろうか。どうして〜たのだろうか。〜たとかいう。〜たとか聞く。〜たような。〜たという。けに:(〜より)いっそう。げに:なるほど。そのとおり。いかにも。ほんとうにまあ。まったく。やまのは:山の稜線。は:羽。羽毛。は:はし。へり。縁。やま:山岳。比叡山。墓地。天皇の陵。多く積み重なっていること。憧れたりあおぎみたりするもの。物事の絶頂。物事の最も重要な段階。いつ:どの時。いつ。いつも。ふだん。いつ:凍りつく。こおる。いてつく。氷がはる。いづ:出る。現れる。出発する。人に知られる。離れる。逃れる。うし:つらい。情けない。憂鬱だ。わずらわしい。気が進まない。憎らしい。うらめしい。つれない。薄情だ。うく:浮かぶ。漂う。表面に出てくる。落ち着かない。不安定だ。根拠がない。いい加減だ。あてにならない。浮ついている。浮気だ。うき:雨季。かり:一時的なこと。間に合わせであること。かりそめ。かり:雁。霊魂を運ぶ鳥とされる。かり:狩り。鷹狩り。桜狩りやもみじ狩り。かる:枯れる。干からびる。干上がる。涸れる。かる:離れる。遠ざかる。間をあける。隔たる。足が遠くなる。疎遠になる。よそよそしくなる。かる:草などを切り取る。かる:借りる。かる:追い払う。追い立てる。馬などを走らせる。✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎続詞花集