凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』を読みました。
2023年の本屋大賞受賞作。
『流浪の月』もそうでしたが、美しい文章に心惹かれ、誰もがどこか共鳴するであろう登場人物たちの心の揺れ、機微が滲み出るような描写。
ああ、上手い作家さんだなぁと思います。
恋愛ものは苦手なほうですが、読み終わった後の清々しさは癖になりそうです。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
瀬戸内のとある小さな島。
暁海(あきみ)と櫂(かい)、それぞれの目線で語られる物語は3Dのように立体的で、情景が見えてくるよう。
2人の恋愛には、様々な問題が立ちふさがります。
いちばん大きな荷物となっているのが、それぞれの母親。
タイプは違うものの、一人では生きられないという共通点があります。
櫂の母親は、息子に依存。
暁海の母親は、夫の浮気で心を病んでしまう。
ヤングケアラーという言葉を連想してしまいました。
また、2人が出会った「島」という小さなコミュニティは、皆、顔見知りで助け合うことができる反面、一度悪い噂が立ってしまうと居づらくなるという悪い面も。
都会と地方。
栄光と挫折。
情熱と安らぎ。
そしていろいろな形の「愛」
様々なコントラストに彩られた作品で、それを象徴するかのように「花火」が重要なシンボルとして描かれています。
2人の味方になってくれる北原先生。
こんなに懐の深い人が利用されるだけなら悲しいなぁと思っていましたが、そのあたりもちゃんとバランスをとって描かれていて、安心しました。
いろんな紆余曲折があって、2人が見出した人生がキラキラと美しい。
自分が自分を生きることって、悔いのない生き方って、実はとっても難しい。
私はちゃんと自分の人生を生きてこれたかな?と少しだけ切なくなりました。
プロローグで語られるある意味不思議な情景は、細部がよく見えなくてまるで古いモノクロの写真のよう。
同じ光景なのに、エピローグでは鮮やかな色を纏い、香りまでもが立ち上がるよう。
…すごいな…
凪良ゆうさんのファンになりそう。
この本に出合えて良かったです。
続編『星を編む』も、近いうちに読んでみたいです。