高田崇史さんの『采女の怨霊 ー小余綾俊輔の不在講義ー』を読みました。
高田先生のシリーズものの中で、わりと新しい「小余綾俊輔(こゆるぎしゅんすけ)」のシリーズ。
2019年に『源平の怨霊ー小余綾俊輔の最終講義ー』
2021年にこちら『采女の怨霊ー小余綾俊輔の不在講義ー』
そして最新刊は2023年の『猿田彦の怨霊ー小余綾俊輔の封印講義ー』が上梓されています。
ミステリー仕立てで歴史の闇に切り込む、大胆な考察が見どころとなっています。
謎めいた社、誰のためとも知れぬ祭から、古代史の新たな真実が浮上する!
奈良・猿沢池の畔に鎮座する春日大社の末社。なぜか池に背を向け、普段はひっそりと門を鎖す。年に一度、連綿と続く祭の二日間以外は……。そこに祀られる入水した采女とは誰なのか。異端の民俗学者・小余綾俊輔(こゆるぎしゅんすけ)が采女神社の謎を解き明かす時、壬申の乱から奈良朝に至る歴史の真実が塗り替えられる。長編歴史ミステリー。
フリーの編集者の加藤橙子は、担当の作家・三郷美波
三郷のつぎのテーマは「壬申の乱」
打合せのあと、橙子はたまたま駅のポスターで見た春日大社の末社・采女神社で中秋の名月の日に行われる「采女祭」に興味を持つ…。
冒頭から、高田ワールド全開といった印象です。
采女神社で祀られている采女とは誰なのか?
なぜこれほどまで大々的な祭りが続けられているのか?
一方、歴史学研究室の大学助手である堀越誠也は、飛鳥・奈良時代、初期の藤原氏の資料を探していた。
橙子は誠也とともに、奈良へ、また近江へと向かいます。
2人は色々と調べるのですが、謎はすっきり解けないまま。満を持して民俗学者・小余綾俊輔が名探偵よろしく謎を解いて聞かせてくれる(まさに講義を受けているような感じ)のですが、その内容は、想像をはるかに超えた驚愕の考察でした。
毎度のことながら、テーマになっている「采女神社」も、その祭りも言い伝えも初めて知ったので、とても興味深く読みました。
「日本書紀」は勝者の歴史書。
本当は何があったのかは、考察するしかない。
それにしても。
私の知識なんて学校の教科書程度ですが、「壬申の乱」の印象がガラリと変わりました。
何重にも糊塗されたものを少しずつ剝いでいく面白さもさることながら、小余綾が登場してからの怒涛の展開と情報量の多さに溺れそうになりながら、手品をみているような鮮やかさで、気が付けば、ひとつのまったく新しい絵が描き出されてしまっていた…そんな印象でした。
強者の歴史のなか、軋轢に苦しんだ女性たちの悲しみに思いを馳せると、胸が詰まります。
そりゃ怨霊にもなりましょうや…(涙)
とはいえ、橙子や誠也の真似をして、歴史に触れる旅に出たくなりました。
面白かったです!