榎田ユウリさんの『この春、とうに死んでるあなたを探して』を読了。

 

2018年に筑摩書房からソフトカバーで、2021年に文藝春秋から文庫で出版されています。

榎田さんの「死神シリーズ」を読んでいたのでシリアスな内容かと勝手に想像していたのですが、そんなことはなく、亡くなった先生の死の原因を探す、ミステリー仕立ての内容で、軽快な筆致でテンポよくお話が進んでいきます。

 

まじめな主人公と、バディを組むチャラ男のコンビが面白く、BL要素などもあり面白かったです。

 

 

 

妻と別れ仕事にも疲れた矢口は、中学時代を過ごした雨森町に戻り、元同級生の小日向と再会する。いまだ騒々しい小日向に振り回されながらも、新生活になじんでいく矢口。そこへ舞い込んだ恩師の死の謎……事故死か、それとも生徒からのいじめを苦にした自殺か?

人は喪失し、絶望し、それでもまた出会う――心に迫る希望の物語。

 

主人公・矢口(島谷)弼は、38歳。訳ありで雨森町に引っ越してきた。

大家で喫茶店「レインフォレスト」を仕切る小日向ユキは、矢口の中学の同級生で、学生時代散々足を引っ張られたのに、周囲からはじゃれ合っているようにしか見えなかったらしい。

 

とにかく、登場するキャラクターが個性的。いわゆる「キャラが立っている」ので、まるでアニメでも見ているかのように彼らが活き活き動きしゃべっている感覚が痛快に感じます。

 

同級生のもとに、脅迫めいた文章が届いたことから、矢口と小日向は、事故だと思われていた担任の先生・文月葵先生の死の原因について調べることに。

 

とにかく、この二人のやり取りが面白いのです。

 

小日向の手のかかるイケメンっぷりと、いやいやながらも小日向を突っぱねない矢口のボケとツッコミ!

 

主人公・矢口(島谷)の奮闘ぶりとは別に、ときどき彼にかかってくる元妻の電話が何やら謎めいていて…。

この電話についても気になっていたのですが、小日向にはすべてわかっていたというのも、彼の観察力というのか直観力というのか、勉強はできないけれど人の話をよく聞く彼ならではの能力にも感心させられました。

 

文月先生の日記と、それに書かれた短歌、転校時に矢口あてに先生から届いた短歌などから、実際には登場していない文月先生の優しい面影が自然と浮かんできます。

 

ミステリーとしては、ちょっと物足りなかったけれど、明らかになった真相には、少し胸が切なくなりました

 

後日談的なラストシーンは、あったほうがいいのか無くてもよかったのか微妙なところ。

ここにBL要素入れなくても…とは思いましたが、あったほうがしっくりまとまるような気もします(笑)

 

それにしても、亡くなったあとでも生徒たちに慕われている先生。真相が明らかになって、ホッとしているかもしれませんね。