榎田ユウリさんの死神シリーズ4作目『死神と弟子とかなり残念な小説家。』を読了。

 

前3作『ここで死神から残念なお知らせです。』 『死神もたまには間違えるものです。』 『ところで死神は何処から来たのでしょう?』と、どんどん筆が乗ってきている感がありますが、今作はいよいよ死神・余見にも弟子が!

 

弟子となるのは、お仕事ネーム「ナナ」享年17歳のヤンキー兄ちゃん。

余見とナナの掛け合いが楽しく、かつ、サスペンスありで、ラストはホロリとさせ、エンターテイメント性も抜群

 

面白くて一気読みでした。

 

ナナが死神修行のうちにたどり着いたものとは!

 

 

 

名前も帰る場所もない。

では、弟子入り決定です!

 

少年は、突然現れた黒づくめの死神から、何故か見習いに採用された。ナナと名付けられ、「あの世」へ向かう契約書にサインをもらうため、死者(クライアント)の許へ――家族を待つ元音楽教師の老女や、バレリーナを夢見てレッスンに励む13歳の少女に胸打たれる。だが、過去の栄光に縋る中年小説家にはさすがに呆れ……。死を前にしても希望を抱く彼らに接したナナは、死神の任務を全うできるのか。

 

以下、内容に触れている部分があります。

未読の方はご注意ください注意

 

 

 

 

 

何故、女子高生の制服がナナのお仕事着となったのか?!

作者のノリなのかなと安直に考えてしまったのですが、最後まで読むと、ちゃんと点と点を繋ぐガジェットになっていました!

 

中身は昭和のヤンキー、見た目は女装男子。

この強烈なナナのキャラクターが、余見の唯我独尊的演説に突っ込みを入れる…。

上等なしゃべくり漫才のような掛け合いが、とっても楽しいのです。

是非とも、アニメ化して欲しい!

(余見のCV.は是非、石田彰さんで!)

 

口が悪く、態度も上品とは言えないナナですが、基本、素直で優しい男の子だなぁと、そんなところも魅力です。

 

ナナは、死神修行として老女、少女、そして落ちぶれた小説家の中年男性のもとへ赴きます。

 

 

 

 

■「死神の弟子と、亡き王女のためのパヴァーヌ」

 

認知症を患い施設に入居している元音楽教師の婦人がクライアント。

人間はひとりでも夢の中で自由になれるのかもしれない。

寂しさも、終わりがあると思えば希望なのだと。

 

タイトルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」がBGMでずっと耳の奥で鳴っているような感覚でした。

 

 

 

■「死神の弟子と、金平糖の精

バレエに打ち込む13歳の少女・星梨香(せりか)は、パパとの二人暮らし。コンクールに向けてバレエ三昧の日々。

 

精神的に大人な少女と、子供のような父親の対比が面白いのですが、彼女が大人にならなくてはならなかった親子の関係性と達観したような態度が余計に哀しく感じます。

 

星梨香が残してくれた金平糖が、切ない。

こちらも、読みながら「金平糖の踊り」がずっと頭の中で鳴っていました。

 

 

■「死神と弟子と、かなり残念な小説家」

 

落ちぶれた中年の小説家・林大輝(はやしだいき)がクライアント。

契約書にすぐにでもサインしそうな彼が最後に死神たちと訪れたのは、彼を間接的に死に追いやった、売れっ子作家の茜澤彬(あかねざわあきら)の部屋。

そこで、林の疑惑は確信にかわります。

 

茜澤の人間性には寒気がすると同時に激しい怒りを覚えます。

小説を愛している訳ではなく、顕示欲を満たすための道具としか見ていません。

過去の犯罪ですら、誇らかに語る茜澤。

 

ラストの畳みかけるような展開は、スリリングで手に汗を握ります。ナナがあまりにかわいそう…。

小説愛だけで、人間としての欲望の薄い林が、ナナのためにとった行動に衝撃!

 

これまでの死神シリーズで、これほど暖かくてハッピーな終わり方ってなかったのではないでしょうか。

 

過去から見て、いくつもある未来の可能性のうちのどれかを我々は今生きているのかもしれないと思わされました。

 

トンデモの設定だからこそ描けるストーリーというものがあることを、改めて感じたシリーズでした。

 

せっかく余見に弟子が出来、コンビで活躍するのかと楽しみだったのですが、この1冊でコンビは解消してしまったのが残念。

 

是非とも続編を期待しています。