高田崇史さんの『卑弥呼の葬祭 天照暗殺』を読みました。
いくつもの謎が謎を呼ぶ展開…。
結末に唖然とするばかりか、何かとんでもないことを知らされてしまったかのような気分になる、エンターテイメント性に満ちた1冊でした。
高千穂の夜神楽の真っ只中で男性の首なし死体が発見された。一方、宇佐神宮では御霊水の井戸に禍々しいものが……。その九州で「卑弥呼の調査に行く」と言ったまま行方不明の従弟・漣を追う萬願寺響子。実在する凶首塚古墳、百体神社の謎。奇妙な天岩戸伝説と隠蔽された事件とは。そして天皇家が鎮魂の儀式を続けてきた真の理由とは。この国の黎明に何があったのか。瞠目の古代史ミステリー。
以前、宇佐神宮に訪れたことがあったのですが、祀られている神についてや、その成り立ちについて、あまりにも知らないことだらけだったな…と、改めて再訪したくなりました。
(2013年 宇佐鳥居から最大門)
お話は、響子が従弟の漣が行方不明になっていると聞き、その足跡を追うように九州の地に降り立ちます。
漣の足取りをなぞっていくと、邪馬台国や卑弥呼、天岩戸伝説など古代の謎にも踏み込んでいくことに。
(2013年 高千穂峡)
響子のスタンスが、古代史に関しての素人なので、読んでいて同じような疑問点を持ち、同じ目線でストーリーを追っていくことができるので、何とかついていける感じです。
ややこしいのは、謎が次々でてくること。
・首なし死体は誰か。誰が犯人なのか。
・井戸に投げ込まれていたのは誰か。また誰が犯人か。
・漣を監禁しているのは誰か。
・響子をつけ狙っているのは誰か。
・また、それらの犯行理由、目的は何か。
それらの謎に加えて、宇佐神宮や百体神社の謎が絡んてくるので、焦点が定まらない不安定さを感じつつ読み進めていくと、最後に、謎が1点に集約されていきます。
その解決のほとんどを担うのが、「QEDシリーズ」等でおなじみのタタルさんこと桑原崇。
「QEDシリーズ」の外伝的位置づけなのかもしれません。
天照は男神だったのか。
天照大御神と卑弥呼、市杵島姫命の関係は。
記紀に隠されている出来事とは何か。
いろんな謎が解きほぐされていきます。
古代史ミステリーに興味がある方には鳥肌物といえるでしょう。
しかし、どうしても犯人の動機が後付けっぽく感じてしまう。あれこれ盛り込むためにが、物語をまとめるうえで仕方ないことなのかもしれません。
「邪馬台国と卑弥呼は、いつか踏み込まなくてはいけない領域だとは思っていた」(著者)
著者の言葉のとおり、
天皇家の根幹を揺るがしかねない大胆な考察に、唖然とするばかりか、今まで歴史の常識だと思っていた事柄がひっくり返されるショック。
なかなか新鮮な興奮を覚えた1冊でした。