動物がどういう死を迎えるのか、意外と知らないことが多い。
身近な昆虫から動物園でおなじみの動物など、いろいろな生き物に目を向けた『生き物の死にざま』。
雑学と言ってしまえばそれまでではあるのですが、読み終わったときに、生きとし生けるものが愛しく思え、生きるということについて動物たちから学ばせてもらえたような感覚がありました。
イラストも交え、大人から子どもまで楽しめる本です。
内容紹介
生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている―数ヵ月も絶食して卵を守り続け孵化を見届け死んでいくタコの母、地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、成虫としては数時間しか生きられないカゲロウ、老体に鞭打ち決死の覚悟で花の蜜を集めるミツバチ……。生き物たちの奮闘と哀切を描き感動を呼んだベストセラーの文庫化。
<生き物の死にざま>
明日の命もわからない世界で、生き物たちは「今」を生きている―土の中から地上に出たものの羽化できなかったセミ、南極のブリザードのなか決死の想いで子に与える餌を求め歩くコウテイペンギン、毎年熱帯から日本に飛来するも冬の寒さで全滅してしまうウスバキトンボ……限られた命を懸命に生きる姿を描き感動を呼んだベストセラー『生き物の死にざま』の姉妹編。
<生き物の死にざま はかない命の物語>
今を懸命に生きる生き物たち
食育の教材にもなりうる本だと思います。
食肉にされる牛や、若鳥として出荷される鶏の物語は、あらためて突きつけられると命を頂くことの意味に思いを馳せることができました。
実験用のマウスなどに対しても感謝をわすれてはいけない、動物は人間のためにあるわけではないのにと思います。
取り上げられている動物たちは、ただ命をつないでいくために「今」を生きている。
そのように遺伝子にプログラムされているのかもしれませんが、子孫を残すために懸命に生きる姿に、一種の尊敬の念を覚えます。
生命の神秘
「はかない命の物語」の最後の章は<生命の神秘>というタイトルがつけられていて、植物と人間について書かれています。
大木よりも雑草のほうが進化をしている、というのは目から鱗でした。
そして人間だけが、まだ見ぬ死を怖がる生物だということ。
ヒトは、脳が発達したがために予測ができるようになりました。
先のわからない未来(死)におびえるよりも、未来を想像することで「今」を大切にもできる。それを<希望>と呼ぶのだと筆者は訴えます。
いろいろな生き物の死にざまを描いたうえで、最後の最後に筆者は読者に問いかけるのです。
あなたの死にざまは、どのようなものだろう。
と。
2冊ともお勧めですが…
『生き物の死にざま』『生き物の死にざま はかない命の物語』の2冊では、扱っている生き物が一部ダブっていますが、(セミとかミツバチなど)切り口が違うのでガッカリすることはありませんでした。
普段、あまり気にしたことがなかったアリやカゲロウ、ミノムシなど、本を読んだあとは気にして見てしまいます。
地球上には多くの命があふれていて、それぞれに生きのびるため進化を遂げ今の形があります。
生き物の死に方を知るということは、生き物の<生きざま>そのものを知ると同義だと感じます。
人間以外の生き物にも敬意を払うことができたら、地球が愛おしい命に満ちていることに気づくことができるのかもしれません。
どちらを読んでも、きっと気づきはあると思います。
もし、どちからか1冊しか読む時間がないなどで選ぶとしたら
『はかない命の物語』のほうをお勧めします。
難しく考えず、気軽に読んでみて欲しいお勧めの本です。