『贈る物語』は綾辻行人さん編の<MYSTERY(ミステリー)>、宮部みゆきさん編の<TERROR(ホラー)>、そして瀬名秀明さん編の<Wonder(SF)>と3冊出ていて、<Wonder>だけ未読になっていました。

編者の瀬名秀明さんは、編纂にあたりSFを<すこしふしぎ>と定義し敷居の高いと思われがちなSFを空想科学的なものからファンタジーまで広義で解釈して作品を編まれています。

 

SFというジャンルは守備範囲が広すぎて難しいイメージ…。

自分の感覚にフィットするかしないかは、読んでみないとわかりません。好きな作家さんの作品なら大丈夫と思って手に取っても、これはちょっと自分には合わなかったな…なんてことも多々あります(汗)。

 

SF・ファンタジーは決して嫌いではなく、小松左京、眉村卓、筒井康隆、光瀬龍、新井素子、星新一など、昔からよく読んでいました。

ただ、正直、自分にとって<合う・合わない>が極端なジャンルでもあるような気がして、自分にとって面白かったからと言って、他人に勧めるのは難しい。

 

でも、だから。

短編集ですが、いろんな作家さんのいろんなタイプのお話が読める、このような短編集は大歓迎!

読後、人様のレビューなども拝見して、やはり、好みというのは人それぞれなんだと改めて感じました。

 

 

「本書では、日常の世界からだんだんとあなたを宇宙の果てまでお連れします。といっても、一本先の路地を侮ってはいけません。そこは宇宙の果てより不思議な世界かもしれないのです」
(編者「はじめに」より)
古典的名作からコミック作品まで、ジャンルを超えた「すこし(S)ふしぎ(F)」なわくわくする物語。さあ、ページを捲って新しい地平線へ――。

<カバー裏表紙内容紹介より>

 

 

第1章 愛の驚き(4編)

山川方夫「夏の葬列」は、教科書に載っている(た)そうなのですが、わたしは初めて読みました。最初にこのお話をもってこられたのにはいささか驚きました。ちょっと怖い。過去を昇華されるべく故郷に帰った主人公は現実からは決して逃れられなかったのですね。

ジャック・フィニイの「愛の手紙」は、時空を超えた愛のお話で、大好きな作品です。

式貴士「窓鴉」も面白かったです。

 

第2章 みじかい驚き(4編)では、ショート・ショートを中心に。

井上雅彦「よけいなものが」は、二人の会話の中にいつのまにか紛れ込んだ<よけいなもの>に気づく瞬間の驚き!こういうお話が大好きです。

「絵の贈り物」は画家の描いた絵に物語を付けるという作品群。

岡崎二郎「雪に願いを」は漫画作品。

 

第3章 おかしな驚き(2編)では、大場惑「ニュースおじさん」いとうせいこう「江戸宙灼熱繰言」

「ニュースおじさん」は『世にも奇妙な物語』から派生した作品で、着地点の不安定さがいつまでも後を引くようなお話。心理的に一つの事象にはまり込んでいくと、いつの間にか現実なのか幻想なのかわからなくなってくる感覚。

 

第4章 こわい驚き(2編)

江戸川乱歩「鏡地獄」は、挿絵の不気味さも相まって悪夢をみているようでした。

平山夢明「托卵」は、印象には残るものの私的にはちょっとグロすぎる怖さでした。

 

第5章 未来の驚き、「私」の驚き(3編)

光瀬龍「戦士たち」星新一「ひとつの装置」も面白かったのですが、いまひとつ入り込めず。

わたしとしては最後のアーサー・C・クラーク「太陽系最後の日」が一番面白かったです。地球外生命体から見た地球、地球人の描写がユニークかつ、シニカルです。そして新鮮。ああ、なるほどという気づきはちょっとした快感なんですね。

 

 

久しぶりにSF・ファンタジーの短編を読みました。

これだけ多種多様な作品が収録されていると、誰でも自分の感覚ににフィットする作品が見つかるでしょう。

わたしは、難しい科学用語・専門用語が出てくるスペースファンタジーよりも、日常のすぐ隣にあるような異世界に惹かれます。

世界観がシンクロしたらどっぷり入り込めそうなのに…(自分の知識・空想力の貧困さ故なんですが)中途半端に片身だけ無理やりねじ込むと読後、消化不良になるのが常。

これからも、どっぷり入り込めるSF・ファンタジーに出会えるといいな…♡と改めて思いました。

 

 

 

 

 

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