2017年『このミステリーがすごい!』第1位、第17回『本格ミステリ大賞小説部門受賞』の『涙香迷宮』(講談社文庫)を読みました
読みやすい文体にも関わらず、意外と読了まで時間がかかってしまいました
自己分析するに、竹本健治さんの作風に慣れていなくて、どこが流して良くて、どこが重要ポイントなのか勘どころがわからず、一字一句見落とさないように…と無意識に慎重に読み過ぎたのかも
読む前に覗き見たネット評では、評価が分かれているようだったのですが、わたしは面白く読むことができました
囲碁界では有名な老舗旅館で発生した怪死事件。
IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久は謎を追いかけるうちに明治の傑物・黒岩涙香が愛し、朽ち果て廃墟になった茨城県の山荘に辿りつく。
そこに残された最高難度の暗号=日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」48首は天才から天才への挑戦状だった。
<裏表紙内容解説より>
以下、多少内容に触れているところがありますので、未読の方はご注意ください
この作品の一番の魅力は、やはり、作者自作の(作中では涙香作とされている)48首の「いろは歌」とそこに仕掛けられた暗号パズル。
そして黒岩涙香に関する薀蓄のボリュームが圧巻です。
恥ずかしながら、黒岩涙香という人物については、この本で初めて知り、こんな遊び心満点の天才がいたのかととても興味を持ちました。
日本語の面白さ、奥深さも堪能できるし、星座二十八宿、囲碁の五目並べ・連珠などいろんな要素を用いて、壮大な謎解きを仕掛ける作者が誰よりも天才なのではないかと思いました。
二十八宿は…『ふしぎ遊戯』(渡瀬悠宇)のコミックで馴染みがありましたが、囲碁はほとんど知らないので、よく知ってる方なら、もっと楽しめるのかもしれません
冒頭、殺人事件が起こり、高校生探偵で天才囲碁棋士の智久が捜査に関わり、定番の展開を予想したのですが、途中、事件はほったらかし…な印象
山荘では、嵐の密室状態にもなりますし、そこで新たな事件も発生して…
尚且つ、涙香の謎も解かなければならないので、どんどん謎が増えていき、どうなるんだどう収拾するんだと、違う意味でハラハラ(笑)
そして探偵役の智久に、みんな頼り過ぎ(笑)
とはいえ、登場人物それぞれちゃんと持ち味というか得意分野があって、解決に一役買っています。
智久の彼女・類子ちゃんがワトソン的な立ち位置で、ナイストスを上げていて、いいコンビです
犯人の動機に関しては、あまり納得はできませんでしたが、そんな思考の人だからこそ、罪を犯したのだろうと。
そう思うと、いつ暴かれるかと平静を装っていたであろうシーンや、ちょっとした言動の違和感がリアルに感じます。
もどかしい前半とは打って変わって、後半は怒涛の展開。
詰め込み過ぎな印象はあるものの、最後はすべてを回収して、後味のよい終り方です
あ、いやひとつ、謎のままの問題がありました
作中、雑談の会話の中で、「ウミガメのスープ」とともに提示された「匕首(あいくち)」の謎。
なんとなく、これかなという答えは自分なりに持っているのですが…さて、正解はどこに
いろんな側面から楽しめる一冊だと思いました
黒岩涙香のミステリーも読んでみようかな…
涙香迷宮 (講談社文庫)
929円
Amazon |
幽霊塔
Amazon |