やっぱり名探偵の登場する本格物は楽しいラブラブ

本格推理展覧会『名探偵の憂鬱』(青樹社文庫)を読みました本

 

本格推理展覧会シリーズと題して、鮎川哲也監修・山前譲編で「大乱歩から新本格派までを集め、トリック別に分類したミステリー・アンソロジー」の5本目で、他に『密室の奇術師』『犯罪者の時間』『凶器の蒐集家』『迷宮の旅行者』があります。

 

 

鮎川氏が巻頭随筆を、山前氏があとがき解説的な「名探偵の系譜」を書かれているのですが、なかなかにこのお二人の対比が面白い。

鮎川氏の語り口は、お酒赤ワインの席でたまたま隣に座ったかたが、問わず語りに話しだすような雰囲気のリラックスしたもの。

締めの山前氏は、教科書テキストのようなカッチリした内容。

いろんな名探偵を読んできたつもりでしたが、山前氏の解説を読んで、まだまだ読んでいない名探偵がたくさんいるのを知り、早く出会ってみたくなりましたカギ

 

名探偵の活躍は、ミステリーの醍醐味ニコニコ

いずれも個性的な名探偵の活躍する短編8作品が収録されています。

 

 

「疾走する死者」島田荘司 -御手洗潔ー

 既読。あいかわらずの御手洗さんの変人ぶりがファンには愛おしくさえあります(笑)

 「糸ノコとジグザク」の糸井氏や、「嘘でもいいから殺人事件」の熊能美堂巧、「吉敷竹史シリーズ」の中村刑事など、島田氏の他の作品に登場するキャラクターが顔を合わせるファンサービス的な作品ニコニコ(勝手にそう思っておきます)

 大胆で奇想に富んだ、島田氏の初期の作品。

 

「後光殺人事件」小栗虫太郎 -法水麟太郎ー

 読んでみたくてもなかなか手に取ることが出来なかった小栗虫太郎作品。

 と思ったら、青空文庫にすでに収録されているらしい…あせる

 読む進めるのに一番苦労した作品。

 その奇妙な事件の様相が強烈すぎて(笑)、肝心の探偵さんの謎解きを読んでも、納得にたどり着けなかった自分の頭の悪さにショックを覚えましたびっくり

 

「蝙蝠と蛞蝓」横溝正史 -金田一耕助ー

 読めましたよ、このタイトル(笑)

 金田一シリーズではありますが、ちょっと趣向が変わっていて、面白かったニコニコ

 ちゃんとオチまであって、軽いタッチで読みやすかったです。

 

「夜の殺人事件」島久平 -伝法義太郎ー

 伝法探偵のシリーズ。

 キャラクター的には、無骨でとくに個性的ではないものの、後輩の刑事らからの信頼も厚く、そのあたりの関係も他の作品を読めばもっと窺えるかもしれません。

 

「罪なき罪人」高木彬光 -神津恭介ー

 60余編ある神津恭介シリーズで文庫本未収録(200年発行当時)となっていた作品。

 頭脳明晰で眉目秀麗という出来過ぎくんの神津のキャラクターはファンタジー寄りですが、遭遇する事件は妙に生々しく、リアリティがある印象です。

 証言者の言動の意味、大仕掛けのトリックではなく複雑な心理を解きほぐす謎解きですびっくり

 

「車引殺人事件」戸板康二 -中村雅楽ー

 演劇論評に携わっていた作家さんによる、歌舞伎の世界を舞台とした作品で、初めて読みました。

 語り口も優しく、演劇記者の目を通したものとして書かれているので、専門用語なども簡単な解説が加えられており、案外読みやすかったです。

 出納帖を<湊の賑わい>という表現が粋で気に入りました星

 探偵役の中村雅楽はお爺ちゃんの歌舞伎役者で、バリバリに活躍するというよりも安楽椅子探偵の如くで、穏やかな独特の持ち味が新鮮に感じました。

 

「昇仙峡殺人事件」津村秀介 -浦上伸介ー

 ルポライターの浦上伸介がアリバイ崩しに挑むシリーズ。

 サクサク読めて面白かったです。

 最後の1ピースがハマらないもどかしさが、ちょっとしたきっかけでストンとハマる快感(笑)。

 こちらも人間の心理を突いた謎解きで、面白く読みました。

 

「「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件」山口雅也 -キッド・ピストルズー

 おなじみパンク探偵・キッドの活躍。面白かったです音譜

 他のキャラクターも個性的で、憎めない面子ばかり。

 コミカルな設定ながら、謎解きは本格的で、尚且つ被害女性の人生には同情を禁じ得ません汗

 

 

チョイスされた作品が割と古め(出版自体も2000年7月)ですが、個性の違う探偵の活躍をつまみ食いできて、面白い企画アンソロジーでしたラブラブ

それぞれ魅力的な探偵ばかりですが、やはり御手洗潔とキッド・ピストルズは、わたしにとっては別格でしたウインク

 

本格推理展覧会シリーズの他の本も読んでみたいのですが、入手が難しそう…かなあせる