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富山に帰りたい。

皆さんより一足先にクランクアップした私は、東京に戻ってもずっとその想いに駆られていた。
残りの撮影をしている現地スタッフにそうメールしたら、
いつでも帰ってきてね、
と言ってくれた。
共演者からも、
帰ってこい。みんな待ってるよ。
と言われた。
そして先日、ドラマ自体がオールアップしたらしい。
もう富山に戻っても、あのメンバーはいないのか、と思ったら、さみしくなった。

みんなに会いたい。

今回、このドラマは、主要キャストが七人いた。
虎ちゃん、ワラビー、私、そして、四天王と呼ばれる隆三お父さんを始めとした四人のベテランの先輩方。

四天王は、それぞれ旧知の仲で、付き合いは実に40年!
私は、先輩のお話を聞かせて頂くのが元々好きなのだけれど、今回は、四天王の会話に出てくる作品名や人物名が、まぁすごかった。
寅さんや西部警察や歴代の大河ドラマ、黒澤明監督や山田洋次監督に、勝新太郎さんや若山富三郎さんや、もう私からしたら現実的ではないくらいの名優や往年の名作に纏わる懐かし話がそこかしこで飛び交っていた。

この作品に入る前、とある作品で、あるベテランの先輩に、初対面で突然「あんたさー」とダメ出しをいただいた。それはとてもありがたい経験。
私は、後輩よりも先輩とご一緒するほうが楽だったりする。
和気あいあいが苦手な私は、緊張感のある現場のほうが居やすいのだ。
だけど、そのダメ出しを頂いてから、少しだけ大御所のかたと接することが怖くなっていた。

四天王は、嫌になるほど優しかった。
私は、皆さんが「若菜ちゃん」と呼んでくださることが、そもそも名前を覚えてくださったことが、猛烈に嬉しかった。
半月以上、富山県は高岡市のホテルと、伏木の現場を往復する日々。
最初は、誰の目から見ても明らかなくらい、私は四天王と距離をとっていた。
にも関わらず、四天王はいつも、にこやかに話しかけてくださったり、ご飯に誘ってくださっていた。
にも関わらず、生意気にも、私はずっと行かなかった。
一人が良かったから。
隆三お父さんは「いいんだよいいんだよ。色々あるからさ、気が向いたらでいいんだよ」とフォローしてくださった。

ある休みの日、お昼前にお父さんから電話がきて「みんなでラーメン食べるよ。若菜ちゃん、女の子だから15分後じゃ早いよね?」と言った。
私は「今日は、これから金沢に行こうと思って」とお答えした。

口をついて出た、嘘だった。

お父さんは「そうかそうか、気にしなくていいよ」と優しく言った。

勢いついでに支度をしてホテルを出たら、四天王と虎ちゃんとワラビーと鉢合わせしてしまった。
四天王が一斉に手を振って、一斉に声をかけてくださった。
「金沢楽しいよ」「気をつけるんだよ」「電車間違えないようにね」。
一斉に言うからよく聞き取れなかったけれど(笑)、そんな風に笑顔で送り出してくださった。

金沢でのことは先日ブログに書いた通り。
でも一つ、嘘がある。
茶屋でかき氷を溶かしてしまったのは、景色に見惚れていたからではない。
行く気もなかった金沢に、お昼ご飯を断わるためだけにわざわざ来た自分を、呪っていたのだ。

なにやってんだろ、私

四天王の優しさに全然甘えられないくせに、その優しさがある高岡に帰りたい、と思った。

そして、寄りかかることだけが甘えではなく、許されることも甘えなのだと気がついて、私はとっくにお父さんたちに甘えていたんだと知った。

自分の間抜けさに一人でシクシク泣いていたら、かき氷が溶けていた。

電車に乗って、高岡に帰ってきた。

だけどやっぱり、その日の夕飯も一人で食べた。


撮影が進むうち、私は四天王と同じ時間を過ごしていることに、誇らしさを感じ始めた。
それは、正確に言えば、他のキャストやスタッフといるときもそうだった。
物事を俯瞰視するくせのある私は、この現場に関わる人誰といても、もう一人の私に
「見て!私、素敵な人達と一緒に過ごしてるよ」
と言いたい気分だった。

よかったね、若菜ちゃん

私を俯瞰で見ている私がニコニコ笑っていた。


四天王は、口を揃えて「こんなに楽しい現場は久しぶりだ!」と言っていた。
だけど、スタッフキャストともに経験値が決して高いわけではない。
そんな我々に対し、一番心配りをし、許してくださっていたのも、四天王。

これは虎ちゃんが言っていたことだけど、やっぱり、大ベテランというのは各作品において大抵一人で、四人ものベテランが一斉に集い「仲間」を演じる機会はそうそうないもの。
私は思うんだ。

「特別」になることは、同時に「独り」になることでもあるのだ。と。

そういう意味では、私たちにとってはもちろんだけれど、四天王にとっても、仲間が揃う貴重な作品だったのだと思う。

そんな場に立ち会えた私は、とても幸せだった。

四天王は、毎日一緒にご飯を食べて、休みの日にはみんなで温泉に行ったり、カプリチョーザやマックやミスドに行ってたんだって。
きゅーん。

可愛いしかっこいい。

あんまり素敵だから、役上の台詞で四天王を馬鹿にすることを言った虎ちゃんの芝居をみて、あまりにも悔しくて泣いてしまった私。その勢いで、撮影の合間に虎ちゃんに「なんでああいう言い方すんのよ?」と絡んでしまったりもした。
虎ちゃんも「ほんとのこと言っただけだ!」と怒りモードで返してきて、ちょっとした口論にもなった。
この頃はまだ実際に仲が悪かったし、役的にも仲が悪い設定なので、お兄ちゃんと虎ちゃんが私の中で混同して、本当に虎ちゃんのことを嫌いになりそうだった(笑)。
が、「台詞ですから」と返してこなかったのは虎ちゃんの優しさで、そのおかげで、私は我に返らなくて済んだ。
徹底して悪役をかってくれた虎ちゃんに感謝。

ワラビーも、2人のシーンで私が富山弁に困惑していたら、すぐに気づいてくれて、即座に動いてくれた。
頼れる後輩だ。
若手組の彼が、下手なとんがりかたをせず、四天王に可愛がられるキャラクターで本当に良かった。
だけど、座る場所、間違えてますよ、お兄さん(写真、控え室のいつもの光景。眠れる獅子、四天王の巣にうっかり入ってしまった孤独な青年)。

紅一点の現場には慣れているけれど、これだけジェントルマンが揃った現場も珍しい。

楽しかった。

羽田空港を出て、外気に触れたとき、
ガシャンッ
と大きな音がしたので、思わず振り返った。
何も起こってなかった。
確かに、耳をつんざくような、不快で大きな音がした。

直後、気がついた。

心のシャッターが降りた音だった。

東京は好きだけど、やっぱりまだガードが必要みたい。

そして、私は今、右目が腫れて、開かない。
ここ数ヶ月、一気に四人の人格を取り込んだから、一段落ついた途端、ちょっと疲れが出たみたい。
熱も出たし、吐き気頭痛もなかなかの勢いでやってきて、体調不良、フルコースいただいてる(笑)

分かりやすっ。

と思ったら、四天王も、クランクアップ後、体調不良になったり、気がつくとボーっとしたりしているらしい。
めちゃくちゃ楽しかったから、遊び疲れた子供のような感じかな。
そして、演者だけが分かる特別な疲れもあった。
それは、視線。
今回は地元のかたにたくさん協力していただいたこともあり、部屋にいるとき以外は、常にたくさんの視線を感じていた。
これ、結構ぐったりしてしまうの。もちろん、とてもありがたいことなのだけど、反動がくるんですね。
メイク直しも、うたた寝も、コーヒー飲むのも、お手洗いに行くのも、一挙手一投足全部知られてるから。
ま、今回で慣れたけど。

とにかく、みんな、ぐったりぐったりしながら、各自の日常を取り戻している最中。

富山にいる間、珍しくケータイがたくさん鳴った。
本当に珍しいくらい鳴った。

エールを送ってくれた友人たちがいる場所に帰ってきたのだと思ったら、東京にいることが少し嬉しくなれた。
おかげで降りたシャッターに、ロックはかけなくて済みそうだ。








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