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その後、マッサージを受けにとある街に。
マッサージが終わり時計を見ると、知人との夕飯の約束までまだ少し時間があることに気がつきました。
なので、そのマッサージ店から3分の場所にいた松尾スズキさんと数年ぶりに一瞬合流。
松尾さんもちょうど仕事と仕事の間だったようで、私的にはラッキーでした。
で、ミカンを貰いました。
そして、今月発売される小説「宗教が往く」の文庫を発売前に頂くという大ラッキー。
私は実は、この作品を執筆されている松尾さんの姿を目撃したことがありまして。
マンハッタンラブストーリーというドラマの撮影中、たぶん追い込みの時期だったのだと思いますが、隣りの控え室からずっとカタカタパソコンを打つ音が聞こえていて、出番になって部屋から出てきたときにゃそれはまぁフラフラされていました。
それが今や文庫化。
良かった良かった。
なんて分厚い文庫。しかも上下巻。
この小説がハードカバーで出版されたときも「分厚いなぁ」とずいぶん驚いた記憶があるけれど、文庫になると凄みすら感じます。
ほんとによくこんなに大量に書けるな、とひたすらに尊敬です。
私にとって数少ない友人(大先輩だけど)の松尾さんがこういう大作を世に出し、また別の小説では芥川賞にノミネートされたりしている姿は、強烈な刺激になります。
ブログと小説とは全く別で、私はブログをスーパー長文で書くことにはなんの苦労もしないけれど、小説になると話は違う。
心のどこかで100ページ先のことを考えているから、目の前の5行が踏み出せなくなる。
怖いんですよ。書く、って。理性を捨てなきゃいけないのに、一方で絶対に理性を失っちゃいけないから。
心をどこに置いていいか分からなくなる。で、心を削りながら書いている作家ってとても多い。
だから、書くことを続けるって、私のような凡人にはとてもじゃないけれど「真似ごと」すらしようのない超人技なのです。
でも一冊とはいえ小説を出した経験がある私。ミジンコ程度にはエネルギーの消費がどんなものか分かります。
でも経験を踏まえたらそれはそれで、より強く、心からすげえ!と思うのです。
ま、松尾さんはプロの作家だから、分からないけれど。
でも更に演出家と役者もバリバリやっているわけですからやっぱりすごいですよね。
それとね、女優だかなんだか分からない当時の酒井若菜に目をつけてくれたわけですから。私からすれば、それだけでもすげえ!なわけです。
すげえ嬉しい!かったのです。
関係ないけれど、すげえ、とか、男言葉を使うの好きじゃないです。
それでね、後に私は大人計画のミュージカルを降板するわけです。主演なのに。
今だから笑って話せる、と言いたいところですが、今でも笑っては話せません。
たぶん、これからも、笑っては話せない。
当時は、松尾さんとも絶縁状態で、私としては合わせる顔がなかったわけですが、ある日、松尾さんが雑誌の連載に私のことを書いてくださっていた記事を読んで、驚きました。
当時、舞台降板に関して、私に伝わってくるのは非難の声だけ。
無責任、プロ失格、自己管理ができてない、死んでもプロの女優なら演じるべき、女優ぶってるから罰があたった。
でもそれは全て間違いではない意見で、だからこそ誰にも相談できなくてとても苦しかった。
プロ意識も強いと自認していたし、たぶん誰よりも、女優になりたかったから。
グラビア出身の私は、人よりもうんと頑張らないと女優と呼んでもらえないから、降板したときどんな言葉よりもつらかったのは「やっぱり」という言葉だった。
悔しくて悔しくてたまらなかった。
今思い出してもそれは変わらないし、憤りも虚しさも、簡単すぎるほど簡単に、そしてあまりにも新鮮に蘇ってくる。
今はようやく自分を許せるようになったけれど、当時は加えて病気の辛さもあったから、いやーきつかったァ。
そんな時、唯一人、私をはっきりと公の場で擁護してくれたのが、一番私を怒る権利を持っているはずの松尾さんでした。
どれだけ救われたか。
それでね、2、3年前かな、降板から数年経ってやっと和解をしたわけです。
なんとなーく。いつの間にか。かと言って、遊んだりも特にせず。
昔も今も、めったに会わないけれど、私は松尾さんの文章をひたすら読み続けています。
本はね、私にとって、なくてはならないんでね。
酒井家の本棚には松尾さんコーナーがあって、写真はハードカバーの段。
別の段には文庫コーナーもちゃんとありますよ。
同じく大好きな爆笑問題さんのコーナーと並べて、私的には自分の本棚の中で一番好きな段です。
活字で笑わせたり、人を救うって、すごいことだと思います。
憧れる。

ちなみにですが、そんな素敵な松尾さん、ポンチョコートを着ている私にこう言いましたよ。

「蛾みたいだねぇ」

と。
どう思う?
私は戸惑ったね。
でも可笑しかった。

続く