酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」Powered by Ameba-100315_1407~01.jpg

ホテルから石垣空港に向かうタクシーの中での会話。
ドライバーのおじちゃん(以下、お)「石垣島に一人で来る女の子はね、大体失恋してるんだよ」
私「へー、そうなんですかぁ」
お「でもお姉ちゃんは、そういう感じしないね」
私「なんで?」
お「失恋した子はもうね、ドヨーンと俯いちゃってるからすぐ分かるの。その点お姉ちゃん、陽気だもん」
私「そっかぁ。せっかく景色がきれいなのに、俯いちゃって見れないのかぁ。可哀想に」
お「うん。可哀想になっちゃう。だからおじちゃんはね、絶対に年に一回は諸島に一人で泊まりにいくんだ」
私「え?どういうこと?」
お「最新の情報を持っていたいんだよ。そりゃお客さんに聞くこともできるよ。でも、自分の目で見て、体で感じて、心に残ったものをさ、教えてあげたいじゃない。傷ついて一人でここに来た女の子に、そういうことをするのがおじちゃんの仕事なんだよ」
タクシーを運転して、目的地に送り届けるだけが仕事じゃない、とおじちゃんは思っていらっしゃるようでした。なんか、沖縄っぽい。
優しい。
お「それに、ほんとにここはいい所だからさ、好きになってほしいしね」
私「うん」
お「失恋した子だけじゃなくて仕事で疲れた子とかさ、とにかく傷ついた子だけが、人の痛みを分かってあげることができる。それってすごいことさー」
私は、「痛み」という言葉をブログで多用します。が、誰かの口から「痛み」という言葉を聞いたのは、初めてのような気がしました。これは、なんの因果か。
私「うん。そういう人こそ、優しいですよね」
お「そう。優しい。お姉ちゃんは失恋はしてなさそうけど、人の痛みが分かるんでしょ?」
私「なんでそう思ってくれたの?」
お「おじちゃんは40年この仕事してるんだよ。一目で分かるさー」
私「ほんと?そうかな。そうありたいな」
お「だいじょうぶさー。お姉ちゃんは、優しい娘さ」
私「ありがとぉ…」
お「仕事は?楽しい?」
私「楽しいですよ。すっごく。おじちゃんは?」
お「楽しい!幸せ!この仕事が好きでねー。顔で笑って心で泣く、なんていうけど、それは辛いじゃない?おじちゃんは、心が笑ってるから、顔も笑っちゃうの」
私「おじちゃん、かっこいいね」
お「…お姉ちゃん、泣かなくていいよ」
私「うん」
いつからか、いや多分だいぶ早い段階から感極まっていた私。
たぶん、その人柄に、びっくりしてしまったのか、安心したのかでしょう。
正直、15歳で芸能界に入って、今が一番ストレスがない私。
そりゃ、いろいろ考えることもあるし、がんばらなきゃいけないこともたくさんあります。だけど、悩みとは違う。すごく幸せで、仕事をしていることが楽しい。
おじちゃんのように、私も自分の仕事に誇りを持っています。
だから、きっと嬉しかったんだと思います。
みんな悩んでるのかな、って思ってたから、ただ幸せな話だけをしてくださる人が、貴重な存在に感じたのでしょうかね。
でも、おじちゃんもまた、人の痛みを知っているのでしょう。

人の痛みを知っている、ということは・・・。

私ももっともっと、いろんな経験を積みたいと思いました。
そして、痛みを共有するだけではなく、いつか、救いあげたり、包み込んだり、洗い流したり、そんな一歩進んだこともできるような人になりたい。
こんな人に、会いたかったんだ。
そう気づかされた今回の沖縄一人旅。
お「久しぶりにいっぱい喋れて楽しかったぁ、ありがとうねー」
私「こちらこそ、ありがとうございました」
タクシーを降りた私に、おじちゃんが声をかけてくださいました。
「また帰っておいで。待ってるさ~」

良い旅でした。
とてつもなく。

いくらでもがんばれる気がした、そんな旅の締めくくりに感謝を。
おじちゃんありがとう。
私は東京でがんばります。

さ、働きまっか。

明日も温かみのある一日を。

ごきげんよう