酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」Powered by Ameba-091208_1538~02.jpg


昔話です。
私は食事が嫌いで、数年間ほとんどポニーとしか食事をしませんでした。
なぜ嫌いだったかというと、人と話すと傷つくし、また、傷つけるのではないかと思っていたから。
そして、何かを食べるたびに「私ごときが、明日も生きようとしているのか」ともう一人の自分が笑うのです(青春な感じね)。
だから、食事がいやでいやで仕方ありませんでした。
そんな中で、唯一一緒に食事をできたのが、ポニーでした。
とは言っても、「当たり前に」ではありません。
そこには道のりがあって、何十回もドタキャンをしたし、お店の前まで行って立ち止まってそのまま帰ったこともあったし、お店に入っても箸を掴まずポニーを置いて帰ったり、そんなことを繰り返し繰り返し、何年もかけてやっとポニーとだけは食事ができるようになっていったのです。

でも喫茶店で、ポニーに「ブログを読んでるけど、最近外でご飯食べれるようになったみたいだね」と言われ、気づきました。
あれ?
最近人とご飯を食べることが多くなってる。
いつの間に?と。
あんなに苦痛だったのに。

2人で喫茶店を出て、ご飯屋さんに入りました。
お腹いっぱい、ご飯を食べました。
途中、私は言いました。

「美味しいね」

ポニーは、
「うん、美味しいね」
と答えました。
私はもう一度、
「美味しい」
と言いました。

声が上擦りました。
東京に出てきて、初めて言った言葉だったからです。

食べ物の好みも違うし、私はいつもポニーに対して失礼なことばかりしてきたのに、いつだってポニーは私を見ていてくれたし、私を諦めないでいてくれました。
そして、やっと言えた「美味しい」。
美味しい、って、嬉しい、って意味なんだね。
初めて知りました。
好きな人と食べるご飯って、嬉しい。
楽しい。
あったかい。
優しい親友に、あらためてありがとうを。

先日、お気に入りの場所に本を読みに行きました。
レジャーシートを広げて、日が暮れるまでゴロゴロしながら本を読んだり、仰向けになって視界いっぱいに広がる青空の中に、フワって入った気分を味わったりするのが大好きなのです。
こういうのを思う存分満喫できることが私にとっての「一人」の醍醐味。
太陽が沈みかけたころ、男女6人組みの大学生くらいの子達が、写真のちょうど紫のラインが写っている辺りにやってきて、全員で影絵を作って遊びはじめました。
寝っ転がって夕陽を眺めていた私。
夕陽と私の間で、人の顔を作っている彼ら。
眉毛2本に目が2つ、そして鼻と口。
6人がそれぞれのパーツを担当して、あーでもないこーでもないと戯れている様がとても可愛くて、またできた影絵が全く上手くなくて。
妙に情けなく笑っているような顔をしていました。
でもその顔を見て、ふと自分も影絵とおんなじ表情をしていることに気づきました。
つられたのか、最初からこんな顔をしていたのか。
ポニーや喫茶店で会った友達、いろんな人の顔を思い出しました。
私が笑うのも泣くのも、全部人との関わり合いの中でできること。
悔し泣きも人にもらうものだけど、笑いも喜びも人にもらえる。
人付き合いは避けられないからさ、好きな人達の顔だけは、せめて忘れないようにしなきゃねと思う。
そうだ。今度、私だけのこの特別な場所に、ポニー達と一緒に来よう。
それで影絵を作ろう。
例えば私の顔を作ったとして、人数が足りなくて眉毛が一本くらい作れなくても、笑ってくれる仲間だから。
口を作れなくても、私の気持ちを汲んで代弁してくれるから。
鼻が作れなくても、こんな香りよ、と教えてくれるから。
目が作れなくても、見落とすようなことは決してさせないでくれるから。
出会いに恵まれている。
友達は少ないです。
でも、どんな人とでも友達になれるよ、と言われても、私は間違いなく、その中からポニー達を選ぶ。
何人でも選んでいいよ、と言われても、今いる数人の友人しか選ばないかもしれない。
この人達がいれば、なんにも怖くない。
嘘。
怖いものは怖い。
だけど、乗り切れるように「あなたが好きだ」と言ってくれる。
そして乗り切ったときには必ず一緒に喜んでくれる。
信じてるんじゃない、疑えないだけ。
そんな出会いができたことに、心から感謝を。

そして、そんな友人にたくさんの幸せが訪れることを願いつつ。
もちろんみなさんにも。

ごきげんよう