酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」Powered by Ameba-090526_1745~01.jpg
実家に帰っていました。
写真は祖母がくれたブレスレットと謎の生き物。
実家の縁側でごろごろ転がっていると、祖母がいつものように私の横にきて、新しい作品たちを見せてくれました。作品たち、とは、コサージュとかブローチとか、エコバッグとか(私、実家に帰るたびに、祖母の手作りアイテムを大量に貰ってくるんです)。
今回まず見せてくれたのは、紫とピンクのビーズでできたネックレス。
私も祖母も大の紫好き。
「きれいねー。欲しいけど、でも私、ネックレス苦手なんだ」
と私が言うと、祖母はこう答えました。
「そっか。ばあちゃんのお友達、みんな何万円もする石でネックレス作ってるから、こんな安物あげるの、ばあちゃんもほんとはちょっと恥ずかしかったんだ」
「恥ずかしくないよ。ただ私、首周り苦手なだけだよ」
「100均とか、サテー(SATY)だしね」
「いいじゃん、サティー。あ、じゃあこれ、ブレスレットにしてもいい?そしたらばあちゃんとお揃いにできるし」
「お揃い?嬉しいけど、サテーだし」
「サティー好きだよ、あたし」
「東京でサテーのビーズつけてたら笑われっちゃうよ」
「笑われないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「・・・ばあちゃん嬉しい」
こっちが嬉しい・・・。
「この濃い紫のビーズ、特にきれいだね」
「あーこれはね、サテーじゃないんだよ」
「へー、どこの?」
「ビバホーム」
「へー」
「じいちゃんが、プレゼントしてくれたんだ」
「え?あのじいちゃんが、ばあちゃんにプレゼント?」
1年半前に亡くなった祖父は、とても自由人で、すんごいかっこよくて(ご存じかな、白州次郎みたいな感じ)、中身はとにかくやんちゃな明るい人でした。
とにかくやんちゃなんで、とてもプレゼントをあげるようなタイプには見えなかったんだけど、当時じいちゃんはずっと入退院を繰り返していて、一度退院できた時、家に帰る前にわざわざホームセンターへ寄って、「ばあちゃん、ビーズ好きだからよ、買ってってやんだよ」と両親に言ったのだそうです。
祖父が選んだビーズ。一つは祖母の年代にしっくりくるちょっと渋めのグリーン。一つは祖母があまり持っていない紺。一つは女性らしくて、祖母には派手すぎるほどの可愛いピンク(写真のは違うよ)。そして、ばあちゃんの大好きな紫。
祖父のセレクトを見て、ちょっと感動。
じいちゃん、本当はなんでも知ってたんだな・・。
少女っぽいピンクを選んじゃうのも、なんか素敵。選んでもらえた祖母も素敵。
祖母の好きな紫も、ほんとにキレイ。
「じいちゃんがくれたビーズなのに、ほんとにもらっちゃっていいの?」
「いいよ、だって、お揃い嬉しいもの」
「ありがとう。お守りにする」
「でもサテ」「サティーは置いておこう、とりあえず」
「うん」
そして、一つのネックレスは、二つのブレスレットに変わり、祖母と私、それぞれの手首にパワーと彩りをもたらせました。
祖母は言いました。
「そういえばね」
「ん?どうしたの?」
「サテーでね、犬のぬいぐるみみたんだよ。で、ばあちゃん、真似して作ってみたんだけど、失敗して猫になっちゃった。見てくれっかい?」
SATY大活躍。
「見せてぃ」
出てきたのが、写真右。

ぶふぉッ!!!!!

こ、これは!!

顔から直接、前足が生えている!!

なぜ全体的に左上に引っ張られている!!

どこで犬を諦めて、どこに猫を感じとったのだ!!

あれ・・・。
鈴??
ってことは・・
飼い猫ッ!?

酒井、リアクションに困る。
だって、今まで祖母が作ってくれたものは、みんなすっごくオシャレで素敵だったから。まさかこんな前衛的なアートを見せられるとは。こちとら驚きの隠しようがありません。ぶったまげ。
ふと顔をあげると、祖母が涙を流しながら声を押し殺して笑っていました。そして、言いました。

「・・・これ・・なんか・・・変だ!」

二人でお腹を抱えて笑う。
「これ貰ってもいい?」
「いいけど、東京でこんなのつけてたら笑われっちゃうよ」
「いや、東京で落ち込んだときにこれみたら、すぐ元気でそうだよ」

そして、東京へ向かう電車の中。

ふとニヤつきたくなって、バッグから犬的ネコを取り出してみました。

あら?
グッときた。

ニヤリどころかウルリ。
犬的ネコの不恰好さや、犬なのかネコなのか定まらない感じに自分を重ねたのか、はたまたさっきの会話がすでに過去になっている感覚を瞬間的に察知してしまったのか、だけど温もりを感じてしまったのか、理由は分かりません。
ただ、妙すぎるほど妙にグッときてしまいました。
そしてその瞬間から、この犬的ネコが猛烈に可愛くなってしまいました。

私のお守りが、一気に二つも増えました。
嬉しい。
ありがとう、ばあちゃん。

明日から、またちょっとずつがんばろう。
みなさんもね。
ちっぽけなプライドなんか捨てよう、と努力したり、ちっぽけしか残っていないならせめてそれだけは持っていよう、と必死に守ってみたり。
そんな両極な思いを行ったり来たりしているうちに、それを心地良い波にすることができたら、揺られるのも楽しくなりますね、きっと。ちょっとずつちょっとずつ、歩いていきましょうね。
泣いてる暇はない?
んなバカな。泣いてる暇なら山ほどあるさ。なくてもちょっと作ってみる。それくらいがちょうどいい。
目的地に向かって脇目もふらず一直線、も素敵だけれど、景色を見ながらゆっくり進むのもいいですよね。「おっせーなぁ」って笑う人がいたら、よくある例えだけど「この人はきっと、道端に咲いていたあの花に気づかなかったんだ。あんなにキレイだったのに。私、気づけて良かった」と誇りに思いましょ。焦らずゆっくり、花やら風やら感じましょ。んね。

泣きたいことがあったの?と思いましたね、みなさん。
びっくりしてください。
ないっす!
なんか、雑な人間性ですみません。
みなさんに私の幸せをおすそ分けしたいくらいです、ほんと。
ひとまず作品を通してお届けできるよう、がんばります。

ちなみに、家を出たとき、祖母に「またね~」と手を振ったら、真顔で「さよーなら」と言われました。
びびりました。
イカしたばあちゃんです。

ごきげんよう