歩いて学んだ世界のトリセツ

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世界120カ国と日本の全47都道府県を巡って見聞きし・考え・体験したヒト・モノ・コトについて、地理・歴史・芸術・芸能・スポーツ・政治・経済・ビジネスなど様々なテーマで書いています。最終目標は南極旅行です。

去年のことですが、「アンディ・ウィアー」が手掛けた長編小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が極めて高く評価されているのをYouTubeで目にしました。

さらに映画化も決定していると知り、私の期待は大きく膨らみました。

 


アンディ・ウィアーの小説の映画化といえば、私の大好きな作品の上位に入る『オデッセイ(原題:The Martian)』があります。

現在でも時折配信サービスで見返すほどです。

マット・デイモン」演じる宇宙飛行士が火星にたった一人取り残され、科学の知識を総動員して生き残り、遂には奇跡的に地球へ生還する物語。

本職の科学者から見ればツッコミどころもあるのかもしれませんが、素人目には非常に科学的で、現実的な設定に見えました。

 

だからこそ、彼の最新作となれば嫌でも期待は高まります。

映画の公開が待ちきれず、つい原作小説のネタバレを含む口コミをいくつか読んでしまいました。

もちろん、それだけで物語の細部まで把握できるはずもありませんし、映像化において設定が変更されることは往々にして起こり得ます。


公式ホームページにあるあらすじは、おおよそ以下の通りです。

未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、数十年後に地球は氷河期に突入する。原因解明のため宇宙に送り込まれた主人公は、科学の知識だけを武器に80億人の命をかけた人類最後の賭けに挑む。そこでこの危機を救おうとする小さな相棒と出会い、共に愛する故郷を救うため宇宙の超難題に挑む——

 


公開日が近づくにつれ、テレビやネットで予告編が流れる頻度が増えてきました。

初期の予告映像は非常に漠然とした思わせぶりな構成で、「相棒」に関しても手の一部が登場するのみでした。

しかしその後、あろうことか相棒が宇宙人であることがわかる全身像までが、はっきりと映し出された予告編としてジャンジャン流れるようになってしまったのです。

これには「実際に劇場で観た時に何のサプライズも無いのではないか」と、強い疑問を感じざるを得ませんでした。

 

ですが、公開前にここまで手の内を晒すということは、配給側が「この映画は安易なサプライズや大どんでん返しを売り物にする作品ではない」という、脚本の完成度や映像の説得力そのものに絶対の自信を持っている証左だとも解釈できます。

そう考え直すと、「それならば、お手並み拝見といこう」と、逆に作品の仕上がりが楽しみになりました。

 

ただ、個人的に大きな懸念点もありました。

私は「宇宙人」「超能力」「タイムトラベル」といった要素が少し苦手です。

サイエンス・フィクション」というよりも「ファンタジー」の領域に思えてしまうからです。

(もちろん『インデペンデンス・デイ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように、それらが物語の主題であり、必然性がある場合は抵抗なく楽しめます。

しかし、問題解決の手段として安易に用いられている場合は冷めてしまうのです)。

 

その意味で、本作に「遠い異星への光速飛行」や「宇宙人」が登場すると事前に知った際は、正直少々落胆しました。

本当は『オデッセイ』のような、宇宙人の出てこない人間ドラマを期待していたからです。

 

さて、遂に迎えた映画公開日。

IMAXの初回上映で鑑賞してきました。

私がいつも行く映画館はこれまで満席になったのを見た事がないのですが、連休初日という事もあってか、初めてほぼ満席の状態でした。

しかも熱気がムンムン伝わってきます。

きっとこの日を待ちきれなかったSFファン、いや「SFマニア」と言った方が良いような方々が、原作を読破したり予備知識を入れたりした上で駆けつけていたのでしょう。



映画のあらすじについては前述の通りですし、予告編を観れば大体の事はわかるので割愛しますが、これから観に行かれる方々のご参考までに、素人の私からの意見を2つお伝えしておきます。

 

① 個人的には「原作を読んでから」がおすすめ


事前に読んだ口コミでは「原作は読まずに観た方が新鮮な驚きがあって良い」という意見が大半でしたが、私は逆の感想を持ちました。

上下2巻に及ぶ長編小説を映画の枠に落とし込んでいるため、どうしても「説明不足」が目立ちます。

地球を救う解決策の科学的根拠も、主人公の葛藤なども表面的な描写に留まっているように感じました。

私は敢えて原作未読で行きましたが、映画だけでは「どうしてこんなに高評価の口コミが多いのか」が完全には腑に落ちず、「今からでも原作を読んでみたい」と思いました。

 

② 『E.T.』+『アルマゲドン』÷  2


あくまで私が過去に観た映画の中での比喩ですが、一言で言えばそんな印象です。

中高年になった今でも『E.T.』を観て感動で泣けるような方なら、素直に楽しめる作品だと思います。

 

最後に、映画のタイトル『プロジェクト・ヘイル・メアリー』について、私が調べた興味深い事実をお話しさせてください。

 

ヘイル・メアリー」を調べると、「アメリカン・フットボールで試合終了直前に逆転を狙って投じる一か八かのロングパス」と出てくると思います。

映画のタイトルの意味なんてこの程度の知識で十分、と思う方も多いかもしれません。

でも、ここで深掘りをやめるともったいないと思うのが私です。

そして、それこそが外国語や異文化を学ぶ上で大事なことだと思っています。

 

実はこの「メアリー」は一般の女性名ではなく、「聖母マリア様」のことなのです。

「ヘイル・メアリー」とはラテン語の「アヴェ・マリア(こんにちは、マリア様)」が英語になったもので、カトリックでマリア様に捧げるお祈りの言葉です。

アメフト」との関係ですが、昔ある試合で奇跡的なパスを成功させた選手が「ヘイル・メアリー(日本式で言えば神様仏様どうぞお助け下さい、というような感覚)と唱えて投げたよ」と言った事が起源だという説が有力です。

そこから転じて、一か八かの起死回生の手段を「ヘイル・メアリー」と呼ぶようになりました。

 

本作では、まさにこの起源に近い使われ方がされていると思います。

11.9光年離れた場所への片道飛行。

成功するかどうかはわからないが、このまま待っていれば人類滅亡。

とりあえずロケットを発射してみるしかない、という一か八かの作戦です。

 

ちなみに、人類唯一の希望となった主人公の名前は「グレース (Grace)」。

英語で様々な意味がありますが、その一つが「神の恵み」です。

偶然かも知れませんが、意図して付けられたのだとすれば、物語を象徴する非常に深いネーミングだと思います。