歩いて学んだ世界のトリセツ

歩いて学んだ世界のトリセツ

世界120カ国と日本の全47都道府県を巡って見聞きし・考え・体験したヒト・モノ・コトについて、地理・歴史・芸術・芸能・スポーツ・政治・経済・ビジネスなど様々なテーマで書いています。最終目標は南極旅行です。

私が目にする海外関係のブログでは旅行者の立場からの記事が圧倒的に多く、現地在住・在勤の方のブログの場合は女性の書き手の方が殆どだと思います。 

そこで、日本の企業から派遣された男性の現地駐在員の経験談も誰かに興味を持っていただけるかも知れない、いつか誰かのお役に立つ事もあるかも知れないと思い、加齢とともに記憶がこれ以上失われる前に、出来る限り綴ってみる事としました。

 

海外駐在員にとって、日本からの出張者対応、いわゆる「アテンド」は、日常業務の枠を超えた重要なミッションです。 

滞在中のケアが円滑にいくかどうかは、自身の評価はもちろん、所属する現地組織の評価にも直結する、とても神経を使う業務と言えるでしょう。

 

実は、アテンドの成否は当日の対応力ではなく、事前の「情報戦」で9割が決まると言っても過言ではありません。 

そこでシリーズ第1回となる今回は、最強のアテンドを実現するための土台となる「情報収集」について解説します。 



因みに、本シリーズは全6回を予定しており、次回からのテーマは以下の通りとなっております。

 

【第2回】空港で出迎える 

【第3回】ホテルにチェックインする 

【第4回】会食する 

【第5回】観光する 

【第6回】空港へ見送る

 

さて、我々駐在員が集めるべき情報とは何でしょうか?

 

旅行会社が手配するパックツアーでも、参加者の生年月日、喫煙の有無、アレルギーの有無、身体障碍の有無などは必ず調べる事だと思います。 

しかし、駐在員の場合、旅行会社では事前に集めない、いや集められない様な情報も集める必要があります。 

それは「パーソナリティ」です。

 

役職や社歴、海外渡航歴、趣味などは表面的な情報で、これも現地での受け入れ体制に大いに影響しますが、「気質」「性格」「人格」の様な深い情報が非常に重要です。 

例えば、以下の様な情報です。

 

■内向的 or 社交的 

■神経質 or おおらか

 ■粘着気質 or 淡泊 

■几帳面 or 大雑把 

■慎重 or 大胆

 ■悲観的 or 楽観的 

■頑固 or 柔軟 

■誠実 or 狡猾

 ■責任感が強い or 無責任 

■理性的 or 感情的 

■温厚 or 攻撃的

 


他にも、個人ごとに「これだけは現地に伝えておきたい」と言う滞在中の希望やNG事項などもある場合が多いので、それも集めます。

 

これらの情報さえ取れれば、自ずと準備すべきことも決まりますし、対象者にとって最適の行程表を作る事が出来ます。

 

では、どうやって情報を取るのか?

 

まず、基本情報、具体的な希望、NG事項などは部長や役員でしたら秘書、アシスタントの方から事前に聞いておきます。



ただ、これらの人達は、上司のネガティブな面は口外しない傾向が強いので、気質、性格、人格面は質問するわけにはいきません。 

そこで、自分自身の個人的なネットワークを駆使して、世界中から情報を集めます。 

例えば、過去に対象者の部下だった人、近年対象者を海外で受け入れた事のある人、等です。

 

また、日本から遠い国の場合、そこだけ訪問するのはもったいないので、事前や事後に他国も訪問される事が多いです。 

よって、自国の直前に訪問される国の駐在員とは、事前に色々と情報交換をして、スケジュールのダブりを調整する(例えば前の国の最後の食事が和食で、自国での最初の食事が和食にならない様に)のは勿論、前の国を発ってから自国で迎え入れるまでの間に、「○○さん、どんな感じだった?」と最新の情報(特に体調面や機嫌)を仕入れて、スケジュールを微調整する事もあります。



実は、私の経験上、海外でのアテンドが難しかったのは、部長や役員の人達ではありません。 

これらの人については、そもそも社内で認知度が高いので、事前情報も比較的取りやすい傾向にあります。 

更に、本来の気質、性格、人格はさておいて、職務上はそれらをコントロールできる人こそが高い職位についている場合も多いですし、日本の本社で直属の部下にはとても厳しい事で知られている人でも、異国の地で頑張っている駐在員に対してはとても低姿勢で接してくれる事も多いです。

 

一方、課長や係長、一般社員の方が情報が取りにくく、本来の気質、性格、人格をそのまま海外にまで引きずって来る事が多いので、意外と扱いには苦労しました。