田原 コロナ患者対応に時間をとられ、他の病気治療が非常に遅れているらしい。がん手術ができなく死亡してしまった例など。早い時期から専門病院とそれ以外の病院を分けるべきだっと思う。

 

山口 教訓にしなければならない。多くの医療関係者から指摘されたが、医療における戦略を立てておくべきだった。

 東京には、都立病院系統、国立病院系統、国公立大学病院、私立大学病院と様々なグループがある。都は全ての病院にコロナ病床を用意してほしいと要請した。今考えれば少々問題があった。反省すべき点だ。公的支援を受けられることを前提に、公的病院が優先的にコロナ患者を引き受ける役割分担をすべきだった。

 教訓を生かし、都は東海大学医学部付属東京病院、都立府中療育センターをコロナ専門病院として開設する方針を固めた。

 公明党は、日本版CDCを作る計画を提案している。川崎市健康安全研究所所長岡部信彦さんも、対策のための機関を常設すべきと訴えている。

 

田原 司令塔と言えば、専門家会議の果たした役割は大きい。情報を発信し、予防方法を訴えていた。

 

山口 ダイヤモンド・プリンセス号の際、専門家と称する人たちがあちこちのメディアに出演し、それぞれの主張、相反するようなことをバラバラに発言していた。これでは、情報の受け手側の国民は何を信じたらいいか、戸惑うばかり。そこで、権威ある、信頼できる専門家を集め専門家会議を作るべきと政府に提言した。

 

田原 あれは公明党の提言だったんだ。

 

山口 会議を設置する際にお願いしたのは、チームとして一体となり正しい見解を発信してくださいということ。設置して良かったことは、10日程度で状況分析と提言を出したことと、限られたスタッフと機材の中で医療崩壊を起こさないためにPCR検査をどう活用すべきか、方針を決めることができたこと。会議の役割は大きかったと思う。

 

田原 ところが突然廃止された。事前に話はあった?

 

山口 まったくなかった。公明党が提言し一定の成果も上げてきたのに、何の相談もない、一体どうなっているのか。政府がそういう勝手なことをやるから政権批判が高まる。

 

田原 廃止された理由をどう捉えているか。

 

山口 会議自体はうまく機能していたし、専門家の果たす役割はとても重要。ただ、3月はじめにかけ、8割が無症状という情報がマスコミに流れていた頃、無症状者が感染を広げている側面もあると会議がストレートに伝えてしまった。そうするとどんどん感染が広がると受け止められ、社会がパニックになりかねず、表現を変えた方がいいという結論になった。専門家の見地をストレートに発信するのではなく、一旦政府に伝え、どう発表すべきかを考えようという問題提議があったようだ。

 例えば、人との接触を8割減らすべきだというのは、専門家からすれば当然だが、政府は経済に与える影響も併せて考えなければいけない。そうなると、経済や社会学の専門家も会議には必要となる。それぞれの分野の専門家のアドバイスを受けながら、最後は政府が責任を持って決めるような枠組みを作り直しましょうということになったのだと思う。

 その過程を説明せず、いきなり廃止、設置と宣言してしまうことが、今の政府のまずいところではないか。政府が独走しているように見えると、国民の不信も募ってしまう。コロナ対策では何度も起きている。今後も政府とぶつかったとしても言うべきことは言っていく。