「続」で、稲田朋美議員に触れましたが、ジャーナリストの江川紹子さんが紙上(12/25)で論評しましたので、行きがかり上みたいではありますが、未婚ひとり親への目線という視点も含め、比較的短い文章ですので、こちらも全文を紹介します。

 

稲田朋美さんの「いい仕事」から考える「多様性」と「保守の役割」

 稲田朋美さん、実にいい仕事をされました。

 この問題についての稲田さんの動きを知った時、私は正直に言えば、大変失礼ながらびっくりしました。この論考<稲田朋美氏の寄稿 未婚でもひとり親なら同じ大変さ>も、投稿者の名前や写真が載っていなければ、稲田さんのものだとは分からなかったでしょう。

 なにしろ稲田さんと言えば、もっとも保守的な論客の一人で、安倍晋三首相の秘蔵っ子と言われている政治家。いわゆる「伝統的家族」観に縛られ、シングルマザーには冷たい、と思い込んでいました。

 この論考を読んで、私は大いに自分自身を反省しました。書かれていることはいちいちもっともで、しかも血の通った内容です。

<いろいろなやむにやまれぬ事情があって、それでも子どもを産もうと決心した人をなぜ差別するのだろう。子育てをがんばっている人を支援するのは当然ではないか>

<反対意見を聞いていて、申し訳ないけれども、子育てをしたことがない人、妻に子育てを全部押しつけている人が言っているなと感じた。子どもを育てるということは本当に大変なことだ。(中略)2人でやっていてもくたくたになった。それを1人で産んで1人で育てている人をどうして差別できるのか>

<家族は大切だ。しかし、いろいろな形があることを受け入れなければならない。(中略)どんな形であれ家族を守っていくという政策をとるべきだ>

 

 考えてみれば、稲田さんはLGBTなど性的少数者に対する差別についても、もっとも早く声を上げた政治家の一人です。単に旧来の価値観にしがみつくのではなく、もっと柔軟な「保守」を目指しているのでしょう。

 1210日付の毎日新聞記事でも、稲田さんはこう言っています。

「多様性を認め、いろいろな立場の人を考えるのが本当の意味での保守だ。今回の問題は家族のあり方ではなく、現行制度が未婚のひとり親を差別している点だ。(今回の税制改正が)自民党を変える第一歩になるといい」

 LGBTの時も、今回の税制での未婚のひとり親支援に際しても、稲田さんは当事者の声に耳を傾け、その現実を見た上で、動き、自分の考えを発信しています。

 

 今回の論考で、稲田さんは反対する人たちに、こんな反論もしています。

<「キャリアウーマンがかっこよく1人で子どもを産んで育てているのだから支援する必要はない」なんて、机上の空論だ。現実を見ていない>

 多くの課題で、もしかしたら、保守かリベラルか、という分け方は、もはや意味を失っているのかもしれません。現実を見ているか、そうでないか。そこが一番大事なような気もします。

 ツイッターなどでは、「稲田さんは、大化けするのではないか」という声も聞こえてきます。

 与党で稲田さんのような女性議員がもっと増えて、活躍の機会があり、政治家として成長していけば、政治のあり方も変わっていくのかもしれません。