オリンピック招致など、暑苦しい言葉が流行している。論理性がなく、ただ感情に訴えかけようとしてくる。

道徳副教材「心のノート」が2013年度に復活した。どれだけ保守色が強いかと思ったが、驚いた。 “自分さがしの旅に出よう‣カバンに希望をつめ込んで‣風のうたに身をまかせ…輝く何かがたまってきたら‣心のページをめくってみよう‣そこに何かが待っている‣きっとだれかが待っている”(中学生向け)  完全にJ-POP歌詞の劣化コピーである。税金を使って何をしているのかと思ったら、こんなに夢見がちな国定ポエムを作っていたのだ。

道徳に期待してしまう人の気持ちはわかる。福祉や教育、地政学的要因などを無視して、ただ心を変えるだけで社会がうまく回るのならば、それほど安上がりなことはない。しかし実際は、いくら心に訴えかけたところで、人は人を憎み、争い、いがみ合い、戦争になることもある。「心のノート」や道徳教育に肯定的な人は心に期待しすぎだし、良識派知識人は心に警戒しすぎである。本当に誰かの心を変えようと思ったら、それは「心のノート」を通じた全国一斉教育などではなく、人と人との対話に期待するしかない。抽象的なポエムではなく、具体的な体験によって、心はきっと成長する。