『14歳の世渡り術「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 | 節操の無い庭

節操の無い庭

築40年近い中古物件で意図せず手に入れた和の庭園の模様。自然、生き物、家族、自分のことなど。備忘録。

児童書から借りてきた本。

ろう者の写真家、齋藤陽道の章より

 

『「孤独」とは、自分以外の他者がいない」という単純な状態ではありません。教室というたくさんの人に囲まれた環境にいながらも寂しさがつきまとうように、人との関係の真っ最中にあってこそ、よりいっそう厳しく感じられるものが「孤独」です。』

 

『ろう学校の仲間たちは、ただ優しいだけではなく、孤独を通過した人たちでした。だから、手話のわからないぼくを、なにひとつ否定することはありませんでした。会話のたびに手話を教えてもらいながら、ゆっくりと時間をかけて、ぼくは手話を身につけます。』

 

『ひとたび手話で会話ができる喜びを知ってみれば、ぼくの思っていたことばの世界は「音声」だけに縛られた狭い世界だったことに気づきます。もっといろんな「ことば」を知りたい。かつて嫌悪していたはずの「ことば」が、一転して、興味の対象となりました。それがきっかけとなってカメラを手にするようになりました。(中略)ことばの可能性を広げてくれる人と出会いながら、「ああこうやって話をすることもできるんだ」と感動していました。体の芯が震えるような感動は、未知の存在と、世界と、自分を貫いて、なお深く繋ぎなおしてくれます。』

 

『悩みのほとんどは、人間関係がもとになっています。お金とか、進学とか、一見そうとは見えないものであっても、その根本を探っていくと「人間関係」に行き着くはずです。もしも、あなたが、それがどんなに小さなささやきであっても、その直感を信じてください。そして自分の抱えている孤独を、我慢して突っぱねることなく、「今、私は、寂しいんだな」と受け止めてください。なぜなら、人をおかしくさせるほどの悲しみや苦しみ、寂しさを生み出す孤独は、同時にしたたかで、しなやかな生きる力をもたらしてくれる源でもあるからです。』

 

『「ことばにがんじがらめになって、人間関係に窒息しそう」それでも、それでも…、世界には「ことば」が、いろんな形で満ちています。人間関係に疲れたなら、身の周りにあるせせこましいことばから、逃げてください。勇気をもって、時間をかけて、逃げていってください。逃げたと思った先で、きっと、あなたにとってふさわしい形で語りかけてくれることばを持つ存在が必ずいます。それは人間に限らず、本や、芸術、映画、動物、自然…想像もしたことがない未知のもの…であるかもしれません。どうか自分のかなにある「ことば」を大切にしてください。狭い世界の、少しの人に気に入られることを目的としないでください。あなたがその「孤独」を受け入れることができたそのとき、あなたの「ことば」に引き寄せられて出会う、未知の「ことば」があります。そこから始まるかかわりこそが、あなたにとっての本当の希望となります。ぼくが伝えたいことは、あなたの孤独の中から芽生える、あなただけの「ことば」が必ずあるということです。どうか、そのことばを信じてほしいのです。』

 

心がじんわり暖かくなる文体。

児童書ながら、乾いた中年の心にも十分響いた。

そもそも「14歳の世渡り術」というシリーズ名を持つこの本が響く自分ってのは中二病みたいなもんかね。

節操のない家庭で育つ子どもらが、息苦しい環境下でもし躓いたら。苦しくなったら。

こういうことを言ってくれる人が、本があればいいと思う。

自分がそんな存在になれていないことへの罪悪感もありつつ。

子どもたちも、この先いろいろあるんだろうと思うけど。

死にたくなることもあるんだろうけど、乗り越えて生きていってほしいなと思う。