後鳥羽院 ももちどり【後編】 | わたる風よりにほふマルボロ

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春の御歌の中に
 
ももちどりさへづる春のあさみどり野べの霞ににほふ梅がえ
 
後鳥羽院
風雅和歌集春上77(67)
 
 
 

訳や語釈、解説の前半は

昨日の記事をお読みくださいね。

 

 
 
さて、
話にならない「古今伝授」はともかく、
 
この「ももちどり」の歌自体も
見ておきましょう。
 
 
これ、構造が難しいですね。
というのも、
 
この「あさみどり」は
 
色を表す体言のようでもあり、
同時に「野べ」を導く枕詞として
働いてもいる。
 
 
 
声に出すと、
 
「ももちどりさへづる春のあさみどり」
で一度文が切れるように
聞こえるのです。
 
そう取るとすると、
三句が一度体言で切れ、
結句も「梅がえ」という体言で切れる、
ということになります。
 
三句と結句を体言で止める構造は
幼稚な韻律になりがちなので、
成功させるのは難しい。
 
添削でこういうものが来ると私は
「やめなさい」と容赦なく切ります。
 
(後鳥羽院には、この難しい構造で
 成功させた歌もありますけれどね)
 
 
ですが、「あさみどり」は
色名を表す体言であると同時に
「野べ」を導く枕詞でもあり、
 
「あさみどり野べ」までが
お約束のように
ひとまとまりに聞こえる、
 
というのもまた事実。
 
そう取ると、
 
「ももちどりさへづる春の/
 あさみどり野べの霞に/
 にほふ梅がえ」
または
「ももちどりさへづる春の/
 あさみどり野べの霞ににほふ/
 梅がえ」
 
のように読むのが自然になります。
 
 
この、
どちらとも読めるような構造を、
 
後鳥羽院のことですから、おそらく
意図的に創り込んだというより
半分ぐらい無意識に
選択したのではないかな、
 
と思われるところに身震いがします。
 
 
 
母音の選択も院らしい。
 
 
上三句は句頭を中心に
大きく口を開くO音とA音を配置し、
 
四句もO音で始め
A音の「霞」まで同じ調子か
と思いきや、
 
「KASUMI」の「SUMI」以降
U音、I音、E音といった
あまり口を開かない音の多い語に
移行させてゆく。
 
 
こういうの、
後鳥羽院はうまいのですよね……。
 
定家のように
神経質に創り込むことをせず、
 
「できちゃった」と言わんばかりの
さり気ない、しかし確かな完成度。
 
 
育ちが、出るのだよなあ。
育ちや気質というものが。
 
 
 
母音や子音といった音の響き合いは、
現代短歌で軽視されがちな
評価基準のひとつ。
 
現代短歌のことは
皆さん無視して構わないですが(笑)
 
古典和歌をはじめとした和歌を
鑑賞しようとするならば、
音の感覚に気をつける意識は
持っていたいものです。
 
 
ももちどりさへづる春のあさみどり野べの霞ににほふ梅がえ
 
 
この記事の【前編】

 

 

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