源具顕 吹風に | わたる風よりにほふマルボロ

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「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年2月分アップしましたnew

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吹風になびく柳のけしきまでながめことなる春の夕ぐれ

 

源具顕

弘安八年四月歌合 二番左持

 

 

 

【現代語訳】

吹く風に合わせてなびく

柳の様子まで

眺望の異なって見える、

そんな春の夕暮れよ。

(訳:梶間和歌)

 
【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

けしき:様子

 

ながめ:多くは

 「もの思い」の意味を含むが、

 京極派の特徴を見せ始めた

 最初期の和歌として

 「眺望」「眺め」と訳した。

 

 

 

現代語訳すると

良さが死にますね……。

 

「訳は必要悪」とは

いつも言っている事ですが、

改めて……。

 

 

 

弘安八年(1285年)四月、

春宮時代の伏見院の周辺で

二十番の歌合が

おこなわれました。

 

 

「吹風に」は二番左持。

 

伏見院筆と思われる判詞は

(前略)左、ことなる事なくいひくだして侍。(右実兼と)なずらへて持にて侍れかし。

 

 

 

「吹風に」を含む具顕詠10首を

挙げ、岩佐美代子氏は

具顕詠に限らぬ歌合全体の

歌風について

次のように述べています。

 

この歌合の歌風は、

 

縁語や懸詞の類をほとんど用いず、

叙景と抒情をかなりによく分離し、

曙・夕暮・霞・霧等の薄明の景観を好み詠み、

対象を動的に把握し、

かつ時間的推移を描写し、

「にほひ」「かすみのそこ」「草のひとむら」「身にとをる」「ながめなれぬる」のような後に京極派に愛用される特異な語句を好み、

(略)

 

はるのみやまぢ弘安三年十一月三日記の続歌百首に見る温和な伝統的歌風に比して著しく斬新奇警で、

京極派歌風にかなりに近づいたものとなっている。

 

弘安三年の続歌百首については

このあたりを。

 

 

また、「吹風に」を含む

弘安八年四月歌合の

具顕詠10首に対する判者の評も

引用され、

岩佐氏の分析が記されています。

 

㈠ 実景実情を迫真的に表現したとして同感の意を表したもの

 四番・九番・十二番・十六番

 

㈡ 技巧を弄せずすなおに言い下したことをよしとしたもの

 二番

 

㈢ 作者の誠意に意義を認めたもの

 二十番

 

㈣ 措辞の欠陥を指摘したもの

 十四番・十八番

 

㈤ 特に具体的な評言のないもの

 六番・十番

 

となる。

これは後の京極派の評価基準(略)と全く一致する見解で、

この時期において、京極派の庶幾する歌の条件が判者にはかなり明確に把握されていたこと、

具顕はその中の主要条件である表現の迫真性においてすぐれていると認められていたことが知られるのである。

 

(略)具顕の作品及び判詞のみについて見ても、

この時期において春宮グループの中には京極派的な歌風がすでに誕生しており、

作品としては未発達であっても、彼らの意識の中には京極派の理想への志向がほとんど確立していたものと推定してよいのではなかろうか。

 

 

 

 

イデアの話を始めると

果てしない記事になるので

ここではやめておきますが、

 

京極派に限らず和歌に限らず

こういう事例を見るたびに

しみじみしたものが

心に広がります。

 

 

時間とは、果たして

過去から未来に流れるのか、

未来から現在、そして過去に

流れるのか。

 

どの次元から語るかによって

どちらとも言える、

と私は考えます。

 

京極派和歌が

あのような京極派和歌として

成立したのは、

 

偶然であり、

 

必然でもあった。

 

 

それはすべての事に言えることだ

と思う。

 

なかなか正確に表すことの

難しいものですが、私は

そういう世界観で生きています。

 

 

吹風になびく柳のけしきまでながめことなる春の夕ぐれ

 

 

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梶間和歌の評論の掲載された

『短歌往来』2020年4月号

 

「現代短歌社賞」応募作8首抄

掲載された『現代短歌』

2020年1月号

 

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