源具顕 時来ぬと | わたる風よりにほふマルボロ

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夏の歌とて

時来(き)ぬと下り立つ田子の手もたゆくとるや早苗を今いそぐなり

源具顕(ともあき)
玉葉和歌集夏352

 

 
 
【現代語訳】
 

いよいよその時、と
田に下り立つ農夫の手も

だるくなるほどに
早苗を植える作業もせわしく盛んな、
ああ、夏だよ。下り立つ田子の……。

(訳:梶間和歌)

 

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

袖ぬるゝ恋路とかつは知りながらおりたつ田子のみづからぞ憂き

六条御息所 『源氏物語』「葵」

 

あら玉のとしある御代の秋かけてとるやさなへにけふも暮(くれ)つゝ

藤原定家 続拾遺和歌集夏175

 

時来ぬと:(田植えすべき)その時は来たと

 

手もたゆく:

 手もだるく、手もだるくなるほどに

 

 

 

源具顕は前期京極派歌人、というか

京極派揺籃期に活躍し

早世した歌人です。

 

揺籃期の京極派歌人、というか

春宮煕仁(のちの伏見院)の側近、

文学サロンメンバーのなかで

具顕は年少のほうで、

春宮より数歳年上。

 

春宮の践祚を前に病に侵され、

二十八歳前後と推定される年齢で

亡くなります。

 

 

もともと豊かな文学的感性、素養を

育んでいた春宮とその側近たちは、

「心のまゝに詞のにほひゆく」ことを

唯一の歌論として

新参メンバーである京極為兼に提示され、

 

「そんな考え方があったのか!! 」

 

と驚きながらものびのびと

歌を詠み始めます、

 

が、

 

 

なんといっても

固定観念から自由になるというのは

言うほど簡単なことではない。

 

揺籃期の京極派は

のびのびと歌を詠み始めるいっぽうで、

「しかし、どこをめざしたものか」と

迷走している気配も濃厚です。

 

 

そんななか、

いち早く自身の歌風を確立したのが

源具顕だったのですが、

 

その理由が

 

「病に倒れ、命の長くないことを悟り、

 他のメンバーが十数年後の政変で

 挫折して初めて得た境地に

 病のため先んじて辿り着いたから」

 

というのが何ともせつない話。

 

 

病という抗いようのないものを前に、

「なぜ自分だけ」という気持ちも

ないではなかったでしょうが、

 

それ以上に具顕は

 

自身の考えや行動といったものでは

どうにもならない

何かしらの巡り合わせ、力の前に

謙虚にたたずむ

 

という精神性を

持つことになったのではないか。

 

 

伏見院が念願の、

京極派による勅撰和歌集

『玉葉集』を編んだ際、

具顕はとうに故人となっています。

 

現役で活躍している仲間でもない、

恩を売る義理もない彼の和歌が

2首入集している事実に、

 

伏見院が「友」と呼んだ具顕への

変わらぬ親愛のおもいを

読み取ってもよいのではないか。

 

 

 

そのうちの一首がこちらの

「とるや早苗を」でした。

 

『源氏物語』の有名な

六条御息所の詠んだ恋歌を踏まえ、

正統的な教養ある詠み方をしています。

 

しかし、そのなかでも

 

四句の目を惹く句割れ、

また結句に至る軽快な韻律に

(この歌の詠まれた段階から見て)のちの

京極派の優れた音楽性の萌芽が

見えるでしょうし、

 

韻律も含め、目の前にしかと広がる

実景を言葉に起こしたかのような

いきいきとした詠み口、

これものちのち京極派の特徴として

指摘されるものです。

 

 

病を得て純度を高めた具顕の心と

その彼への伏見院からの親愛の情とに

敬意を表して。

 

 

時来(き)ぬと下り立つ田子の手もたゆくとるや早苗を今いそぐなり

 

 

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いつも応援、また金銭的なご支援も

本当にありがとうございます。

 

 

ご支援を募ることについて

考え方が変化しつつあり、

 

 

 

 

現在このようなとおりです。

 

 

「経済的に困っているので助けてほしい」

という募り方をなるべくしたくない。

 

「この人を応援することは良いことだ」

という確信を以て、または

「この人おもしろい。応援したい」

という明るい動機から

応援していただくため、

 

経済的に困っている時も

困っていない時も

堂々と支援を求められる自分であるべく

日々全力で和歌と向き合っております。

 

 

このあたりの文章化には

もう少しお時間いただきますが、

 

それまでも、これからも、

梶間和歌にいっそう和歌仕事に

集中させるべく、どうか

応援よろしくお願いいたします。

 

それでは、またね。

 

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