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思ひ寝の夢の浮橋途絶えして覚むる枕に消ゆる面影
俊成卿女
千五百番歌合2375
俊成卿女家集17
【現代語訳】
あの人のことを想いながら眠った、
『源氏物語』最終帖「夢の浮橋」
とも言うべきはかない夢が、
浮橋のように途絶えた。
夢が覚め
憂きうつつに引き戻された
我が枕に、
夢に見たあの人の面影も
消えていったのだった。
【本歌、参考歌、本説、語釈】
春の夜の夢のうき橋とだえして峯にわかるるよこぐもの空
藤原定家 新古今和歌集春上38
思ひ寝:思い続けながら寝ること。
恋の相手や昔を想いながら
寝ることを表すことが多い。
夢の浮橋:
『源氏物語』最後の帖の題。
「浮橋」は、水上に
いかだや船を並べて縄でつなぎ、
その上に板をかけて橋としたもの。
「途絶え」やすいものの象徴。
また「憂き」も響かせる。
途絶え:「浮橋」が途絶えるように
「夢」が途絶えること、
またそのように
相手との関係も途絶えたことを
暗示。
建仁元年(1201年)企画の
「後鳥羽院第三度百首」を
翌年から翌々年にかけて
歌合の形に番え判をしたのが、
いわゆる「千五百番歌合」。
その恋歌として詠んだ一首です。
いかにも俊成卿女
という感じですね。
これ、作者名が伏せられていても
絶対に判る歌でしょう。
絶対に宮内卿ではないし、
参考歌「春の夜の」の作者
藤原定家の歌とも、
なんだかんだ気配が違う。
私、短歌結社に
所属しているのですが、
数年前までは現在ほど積極的に
結社のメンバーと交流することが
ありませんでした。
それでも毎月の月詠は
欠かさず投稿していたので、
なんだかんだ
「梶間の歌はこんな感じ」
というのが
一部の人には共有されていた。
なので、
東京歌会とか全国大会とかで
無記名の詠草が共有されると、
歌友の数人に
「和歌ちゃんの歌は、無記名でも
下に名前が書いてあるよね」
とよく言われたものです。
俊成卿女と比べるのも
畏れ多いことですが、
そういうの、ありますよね。
今回の「思ひ寝の」と似た雰囲気の
俊成卿女の歌を、
せっかくなので紹介しておきますね。
ぜひ読み比べ、
味わってみてください。
風かよふ寝ざめの袖の花の香にかをるまくらの春の夜の夢
新古今和歌集春下112
橘のにほふあたりのうたたねは夢もむかしのそでの香ぞする
新古今和歌集夏245
露はらふねざめは秋の昔にて見はてぬ夢にのこるおもかげ
新古今和歌集恋四、1326
思ひ寝の夢の浮橋途絶えして覚むる枕に消ゆる面影