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をちこちのいづくもかくやしぐるらんこなたかなたにまよふうきぐも

 

源具顕

中院具顕詠百首和歌12

 

 

 

【現代語訳】

あちらこちらの、どこも

このように冷たい時雨が

降っているのだろうか。

こちらの空と思えばあちらの空

と迷い漂う浮雲を見て、

そんな事を思う。

(訳:梶間和歌)

 
【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

をちこち:あちこち

 

いづくも:どこも

 

かく:このように

 

しぐるらん:時雨れているのか。

 「時雨」は晩秋から初冬にかけて

 降ったり止んだりする冷たい雨。

 「時雨る」はその動詞形。

 「らむ」は現在推量の助動詞で、

 現在の原因の推量を

 表すこともある。

 ここでは目の前の

 「こなたかなたにまよふうきぐも」

 という事象から

 「をちこちのいづくもかくしぐる」

 ことを推測し、

 「や」を挟んで疑問形にしている。

 

こなたかなた:あちらこちら

 

うきぐも:空に浮いて漂う雲。

 不安定なものや不安な気持ちを

 喩えたり、

 「憂き」を掛けたりすることも多い。

 

 

 

昨日の「ふりしける」と同じ

「中院具顕詠百首和歌」の

12首目。

 

閏12月のある弘安末年の詠だ

と歌などからわかるので、

 

弘安九年(1286年)

閏12月(1287年)に詠まれた

と考えられます。

 

 

具顕の死の約1年前の作なので、

百首歌全体に

そのような気配があります。

 

ただ、死を前にしてそれを

恐れ、哀しむがゆえの甘さの

排除できなかった歌もありますが、

 

そうした甘えを超越した観点から

静かに詠まれた、優れた歌も

同時に残っています。

 

 

この歌は、その後者寄りの歌と

いえるのではないでしょうか。

 

「や……らん」とか

「うき」に「憂き」を掛けるとか、

そういったところに

多少の主観や感情は

入っていますが、

 

だからといってその主観や感情が

うるさすぎるということもない。

 

特に下の句は整えられており、

私の好きなつくり、また韻律です。

 

 

 

自身や肉親の死という

誰にでも共感してもらえる不幸に

甘えて歌を詠むか、

 

そうした不幸を味わいながらも

それに甘えることをせず

歌は歌として

研ぎ澄ました心で詠むか、

 

残酷に分かれるものです。

姿勢も、その結果としての作品も。

 

 

それは、

歌人によっても分かれますし、

 

ひとりの歌人のある時期には

前者だったが

ある時期には後者になった、

また逆になった、

 

ということもありますね。

 

 

をちこちのいづくもかくやしぐるらんこなたかなたにまよふうきぐも

 

 

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