後鳥羽院 唐衣 | わたる風よりにほふマルボロ

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梶間和歌プロフィール小説

 

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new第7回「現代短歌社賞」

選考結果の載った

『現代短歌』2020年1月号に、

梶間の8首抄が掲載されました。 

「梶間和歌の歌の載っている1月号を」

と言い添えてご購入いただけますと

とても有難いです。

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new『短歌往来』2020年4月号に

評論を執筆しました。

3月半ばの発売です。

「梶間和歌の評論の載っている4月号を」

と言い添えてご購入くださいませ。

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柳をよませ給ひける

 

唐衣たつた河原の川風に波もてむすぶあをやぎの糸

 

後鳥羽院
続後拾遺和歌集春上41

 


 
 
【口語訳】

唐衣裁つ立田川。その川原の川風に

波を用いて結ぶのは、

唐衣のような紅葉ではなく……

青柳の糸。

(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

唐衣:「裁つ」やそれと同音を持つ語

 「立田川」「立田山」などを導く枕詞

 

たつた河原:立田(竜田)川の川原。

 立田川は紅葉の名所。

 「裁つ」「結ぶ」「糸」が縁語。

 

波もて:波を用いて、波を以て

 

あをやぎの糸:

 青い柳の枝を糸に見立てた表現

 

 

 

こちらにも書きましたが。

 

読みにくい文章ですが、初出はこちら。

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立田川といえば紅葉。

 

ちはやぶる神代も聞かず竜田川唐紅に水くくるとは

在原業平 古今和歌集秋下294

を引くまでもなく、

立田川といえば紅葉というのが

和歌の常識でした。

 

 

「柳をよませ給ひける」ということで

「柳」題で歌を詠むことが

想定される場において、

 

題を忘れたふりをして

「唐衣たつた河原の……」

 

 

ハラハラしますよね、周りは。

 

「え、「柳」だよね? 」

「「紅葉」じゃないよね? 」

「上皇さま、御気は確かか? 」

と戸惑ったはず。

 

 

その緊張と戸惑いを

四句まで引っ張りに引っ張り

極限まで高めたのち

 

結句「あをやぎの糸」。

 

 

「おおー! 」となりますでしょう。

 

こういうところ、後鳥羽院の

腕だけではなく

人の気持ちを巻き込もうとする

嗜好というか、

茶目っ気というか、なんというか。

 

定家にはなさそうですね。笑

 

 

 

そして、丸谷才一も述べていますが、

 

「唐衣たつた河原の……」

と始めたことで、

 

述べられてもいない紅葉の唐錦が

青柳の糸の背景に

ちらついて見える。

 

紅葉ではなく柳だ

と種明かしされたあとでも。

 

紅葉の赤は残像のやうにちらつきながら、柳の緑をいつそう強調して、まさしく唐衣さながらの豪奢な風景をわれわれに示すことになる。

一首が衣装の縁語で出来あがつてゐるのは当然のことであつた。

 

 

こういう言葉の使い方は

定家とも通じますね。

 

例えば、「花も紅葉も」

 

「なかりけり」と詠まれながら

花も紅葉も意識から離れない、

浦の苫屋の寂しい秋の夕暮れ。

 

寂しい風景なのに、鮮やかでもある。

 

 

後鳥羽院や定家にかぎらず、

新古今歌人は

日本語のこういう特徴を愛し

積極的に用いたと言えるでしょう。

 

宮内卿の愛用語は「跡」。

 

いまはないものや

本来はないものが見えますよね、

「跡」という語を用いた時には。

 

 

「跡こそ見えね春は来にけり」には

春の気配が見えますし

 

「あとまで見ゆる雪のむらぎえ」には

すでにとけてなくなった雪の

まだ残っていたころの雪解けの

早い遅いが見える。

 

私の特に好きな

「漕ぎ行く舟のあと見ゆるまで」

本来一瞬で消えてしまう

舟の漕ぎ跡なのに、

一定の時間残す花びらを

配置することで、

舟の漕ぎ跡そのものが顕ってくる。

 

 

同時代の歌人の共通項も違いも、

その時代の歌を一定数読み込むと

おのずと見えてきますね。

 

中学高校で受験勉強のために

「『新古今集』の特徴は

 体言止めと本歌取り。

 幻想的な作風……」

と丸暗記しなくとも、わかります。

 

 

唐衣たつた河原の川風に波もてむすぶあをやぎの糸

 

 

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「現代短歌社賞」応募作8首詠の

掲載された

『現代短歌』1月号はこちら

「梶間和歌の歌の載っている……」

の一言もぜひお願いします^^

 

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