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百集御歌の中に、同じ心(歳暮)を
年暮るゝ今日の雪げのうすぐもり明日の霞や先立ちぬらむ
伏見院
玉葉和歌集冬1034
【口語訳】
年の暮れる大晦日の今日
雪の降りそうな薄曇りのこの空は、
春を迎える明日立つはずの霞が
立春に先立って掛かり始めた
ということなのだろうか。
(訳:梶間和歌)
春を迎えれば霞が立つもの、
霞は春の徴、春の証し、
という約束ごとのあったうえで、
明日迎えるはずの春に先立って
大晦日の今日立ったように見える霞、
実際には薄曇りであるに過ぎない空の様子を
霞の立った空に見立てて
暦を越境した発想の歌。
この記事の公開日は12月30日、それも新暦ですが、
もとは旧暦の大晦日、
翌日には新たな年を迎えるという日に詠まれた
という想定の歌です。
以前もコメントしましたが、
『玉葉和歌集』の歌には
季節の約束ごとを踏まえたうえでその季節を越境する
という発想の歌が、
他の勅撰和歌集より多いように感じます。