俊成卿女 橘の | わたる風よりにほふマルボロ

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題しらず

橘のにほふあたりのうたたねは夢もむかしのそでの香ぞする

俊成卿女
新古今和歌集夏245

 

 


【現代語訳】

戻ることのできない昔を

思わせる橘の香。

その匂うあたりでうたた寝をすると、
そうして見る夢のなかでさえ、
昔愛し合ったあの人の

袖の香りがする……。

(訳:梶間和歌)
 
 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

さ月まつ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
詠み人知らず 古今和歌集夏139

 

橘:昔の恋や思い出を

 連想させるものとして、和歌では

 主にその香りが詠まれる。

 

むかしのそでの香:本歌より、

 「昔の人の袖の香」の短縮表現。

 新古今時代には特に、

 和歌的教養を土台にした

 短縮表現が用いられる。

 

 

 

(堀川)通具とおこなった

「通具俊成卿女歌合」と呼ばれる

歌合の十八番右の歌。

 

成立年は

判明していないようですが、

建仁三年(1203年)四月以前と

考えられています。

 

 

通具は俊成卿女の夫。

 

建仁三年より前の建仁元年冬から

翌二年初めごろにかけての

どこかの時点で、通具は

政略結婚として新しい妻を迎え、

 

その建仁二年七月十三日、

俊成卿女は後鳥羽院女房として

初出仕しています。

 

 

通具の結婚ののちも

双方の協力関係が見られること

 

後年の俊成卿女の出家を境に

通具との関わりが

記録に見られなくなること

 

などから、

 

現代の私たちの考える

“離婚と再婚(政略結婚)

というものとは

だいぶニュアンスが違う

 

と考えるべきでしょうね。

 

(夫在俗中の既婚女性の出家は

 婚姻の解消を意味します。

 つまり、それまでは

 ふたりの婚姻関係が続いていた

 という解釈も成り立ちます)

 

 

ということで、この歌の成立時期は

確定していないわけですが。

 

仮にこの歌の詠まれたのが

通具の結婚よりあとだったとしても、

 

題で詠まれた歌に

作者の人生経験の投影を見るのは

ご法度です。

 

このブログの読者さんであれば

もうご承知ですよね^^

 

 

 

この「橘の」は、

「さ月まつ」の本歌取りのなかでも
特に見事ですよね。

 

 

本歌取りをするなら

本歌の何倍も趣向を凝らさねば

本歌に対して失礼だ、

 

というのが

新古今歌人の基本姿勢です。

 

 

「橘の」に織り込まれた

複雑なのに難解ではない

風情、色気、そうしたものの連なり。

 

それらが

ただただ美しい。

 

 

 

 

橘のにほふあたりのうたたねは夢もむかしのそでの香ぞする

 

 

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