式子内親王 吹く風に | わたる風よりにほふマルボロ

わたる風よりにほふマルボロ

美しい和歌に触れていただきたく。

*:..。o○ ○o。..:*

 

 

梶間和歌作品一覧
 

 

堀河百首チャレンジ【連載中】

 

宇治十帖本説取りチャレンジ【連載中】

*:..。o○ ○o。..:*

new次回裕泉堂歌会は2月20日ですnew

 

短歌往来2023年9月号

作品が掲載されました

nagarami@jasmine.ocn.ne.jp

(ながらみ書房さま)

*:..。o○ ○o。..:*

 

 

吹く風にたぐふ千鳥は過ぎぬ也あられぬ軒にのこるおとづれ

式子内親王
式子内親王集67

 




【現代語訳】

吹く風に呼応してやって来た千鳥は

どこかに過ぎ去ったようだ。

声が聞こえなくなってしまって。

あまりに強い風のためか

千鳥のとどまることのできない軒に、

風と霰の音だけが訪れ残っている。

(訳:梶間和歌)


【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

吹く風にたぐふ千鳥:

 吹く風に呼応する千鳥

過ぎぬ也:過ぎてしまったようだ。

 その声の聞こえなくなった事実から

 過ぎたということがわかる。

 

 「なり」は

 「音(ね)有り」のつづまって出来た語で、

 もとは音や声が耳に入ることを表し、

 「……の音、声がする」意。

 活用語の終止形(ラ変型の場合は連体形)

 に付く(中古以降は連体形接続の場合も)

 

 断定の助動詞「なり」とは別語で

 接続も異なる。

 

 「過ぎぬ也」を断定の「なり」で解釈すると

 「ぬ」が否定の助動詞「ず」の連体形

 ということになるため

 「過ぎないのだ」という逆の意味になるが、

 文脈上そのように捉えることはできない。

 

あられぬ軒:複数の解釈が見られたが、

 『式子内親王全歌集』の

 「思いもよらぬ程荒れ果てた軒」には

 文法上無理があると感じられたため

 「千鳥がそこにとどまることのできない

 軒」と解釈。

 そのうえで同音、類音の「霰」「荒れ」の

 ニュアンスも感じ取る、

 という読み方が無難だろうか。

 

おとづれ:元は「音連れ」。

 その音がすることを擬人的に表す。

 

 

 

「堀河百首」題各題の本意を学び

シェアする記事の【千鳥】において、

歌例として2013年に訳したこちらを

引いたのですが、

 

2024年現在の目で読み

 

「この訳は……?

 拙いというより、誤訳では?

 

と感じられてしまったため、

急遽訳し直すことにしました。

 

 

当時参考にしていたのが

錦仁先生の『式子内親王全歌集』

のみ、

 

こちらの頭注に従った訳では

ありましたが、

 

「あられぬ」を「荒れ果てた」と読むには

どう品詞分解したものか、

ということでほかの本も参照。

 

 

引っ越し祝いに頂いたこちらに

掲載されている複数の解釈のほうが

文法的にしっくりきたため、

 

それらを総合し、最終的に私の判断で

今回のような訳にしてあります。

 

 

 

いわゆる「A百首」と呼ばれる百首歌の

「冬」部全15首中の12首目。

 

この「A百首」詠出時の

式子の状況や心境については、

その連作性や傾向から

奥野陽子先生が

 

A百首全体に表現されている詠歌主体の心境や、

体験詠に連続融即するような歌が見られることからして、

 

A百首は、呪詛した疑いをかけられ出家した式子が、

出家して間もない頃の自分の内面を、普遍的な和歌の詞や方法を使い、また時には生硬い表現で、

虚構の百首歌として対象化したもの

と考えるのが自然であるように思われる。

と述べておられます。

 

 

例えば『源氏物語』「須磨」においても

光源氏が

孤独な侘び住まいには

千鳥の声も友として頼もしいものだ

などと詠んだものですが、

 

孤独な作中(詠歌)主体が

唯一友として慰めたかもしれない

千鳥の声さえ聞こえなくなってしまった、

(と霰? )のだけが軒に訪れ

音を立てている、

 

というこの歌の雰囲気を味わうにも、

奥野先生のおっしゃることは

肯定できそうですね。

 

 

 

もう2年ぐらいになりますか、

お休みしていた和歌の訳ですが、

久しぶりにしてみると大変懐かしく。

 

これを機に復活できるかどうかは

なんともいえませんが、

やればできる、戻せる、

とわかったことにはほっとしています。

 

 

状況に応じてまた訳したり、

訳以外の記事を書いたりします。

 

ゆるりとお待ちください。

 

 

吹く風にたぐふ千鳥は過ぎぬ也あられぬ軒にのこるおとづれ

 

 

*:..。o○ ○o。..:*

 

いつも応援、また金銭的なご支援も

本当にありがとうございます。

 

 

最近、

「経済的に苦しいので助けてください」

というのも違うな、

という気がしてきました。

 

アルバイトを週2勤務に減らし

そちらでの収入が月に4万円前後、

特に年末年始や8月などの閑散期は

1ヶ月現場がないこともありますし、

経済的にかなり苦しいのは事実です。

 

ただ、

「和歌さんが困っているから助ける」

という形をお願いし続けるのが

私のめざす方向と

ずれ始めている気がしていて。

 

 

かといって、

「和歌さんを経済的に支援すれば

 自分にこれだけのメリットがある」

と、ビジネス的にわかりやすい形に

誘導するのも、絶対に、違う。

 

 

まだうまく言語化できていませんが、

 

「和歌さんを経済的に(も)応援することが

 人類のためであり、自分の喜びでもある

という動機で、

 

善なる行為としての確信をもって

お金を預けていただくことができたら、

それが現在の私の望む形に

近いような気がしています。

 

 

「今後とも

それぞれの及ばぬ高き姿を

それぞれの役割とペースで

追ってゆきましょうね。

 

私は和歌において、

あなたはあなたの領分で」

 

と訴え続けてきたこれを

改めて、もっと純粋に、訴えたいな、と。

 

 

また改めて文章化しますね。

 

それまでも、これからも、

梶間和歌にいっそう和歌仕事に

集中させるべく、

応援よろしくお願いいたします。

 

それでは、またね。

 

*:..。o○ ○o。..:*

 

音符講座動画を購入する

 

音符歌集『生殖の海』 を読む

 

音符梶間和歌の

宇治十帖本説取り和歌を読む

 

音符梶間和歌の堀河百首詠を読む

 

音符その他の作品を読む

 

音符梶間作品の載った雑誌を買う

 

new最新の掲載情報

『短歌往来』2023年9月号new

nagarami@jasmine.ocn.ne.jp

03-3234-2926

(ながらみ書房さま)

 

音符Facebookグループで遊ぶ

 

音符和歌みくじで遊ぶ

友だち追加