専業主婦の私にとって、
家計のやりくりは大切な仕事。
特に我が家は、
二人の息子が道外の大学へ進学したので、
学費や仕送りで家計はかなり圧迫されている。
道外と言っても、
長男は東京。
次男は大阪。
それぞれ別に部屋を借りているわけだから、
そりゃもう大変だ。
私は、とにかく
削れるものは何でも削った。
光熱費や食費の見直し。
保険の見直し。
庭の花壇も、
今までは庭師を入れていたけれど、
昨年からは自分で草むしりをして、
秋には冬囲いもした。
美容院は半年に一回。
ネイルサロンやマツエクなんて、
もってのほか。
コスメは、一番安いやつ。
先日、小学生の姪が、
「最近メイク始めたの」
そう言って見せてくれたコスメが、
ダイソーの商品だった。
私、
小学生と同じの使ってたんだ……
そう思った瞬間、
胸がギュッと痛くなった。
「いいね。
今のうちに、おしゃれたくさん楽しんでね」
「結婚して、子供なんてできたら
もうできなくなるから」
自分で言っておいて、
胸がよじれた。
結婚して、子供ができたら
おしゃれしちゃダメなんて、
誰も言ってない。
なのに私は、
母らしく。
妻らしく。
つつましく。
それをモットーに生きるのが、
周囲との軋轢を生まない、
安全な生き方なんだと、
いつの間にか
自然に思い込んでいた。
二十一歳で結婚した私は、
ほぼ二十年間、
パートにも行かず
ずっと専業主婦だった。
夫は十二歳年上。
北海道でも有名な
大きな会社の役員をしている。
周囲からは、
「玉の輿だね」
そう言われてきたし、
私自身もそう思っていた。
でも、
子供が大きくなるにつれて学費はかさみ、
近年の物価高も重なって、
ここ数年は
そんなに裕福じゃない。
そんな気持ちが、
少しずつ芽生えていた。
それでも、
共働きをせずに
専業主婦で生きていけている。
だから、
夫には感謝している。
ただ……
感謝はしているけれど、
一緒に居るのは辛かった。
近くにいると、
嫌悪感から緊張が抜けなくなる。
首と肩が凝り、
気が付けば歯を食いしばっていて、
頭痛がすることもある。
夫の生活習慣が、
私と合わないことも大きかった。
夫は休日、
お風呂に入らない。
歯みがきもしない。
着替えもしない。
だから三連休の三日目には、
その体臭は凝縮され、
近くにいるだけで吐き気がしてくる。
そして私は思う。
なんで、
こんな思いをしなきゃいけないんだろう。
そう考えると、
涙が出てくるのだった。
📢【更新予定】📢
📖 5月8日㈮22時
第3話 近くにいるだけで、息苦しくなるんだ
📖 5月9日㈯22時
第4話 あなたには、名前で呼ばれたくない
📖 5月10日㈰22時
第5話 切ない声は体のどこから出るんだろう
📖 5月15日㈮22時
第6話 心療内科の帰り、もう一つの地球がひらく
