グレーディング機関による誤判その5 | 和同開珎ー皇朝銭専科のブログ

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昨年中は大変にお世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
戻ってまいりましたので、本日より通常営業?させていただきます。
 
 
一昨年出土の銅製品の調査結果についてのチェックと改めての検証の依頼があり1週間ほど出張してました
同じ鋳型で製作された銅製品が数百キロ離れた地域からも発見されており当時の交易関係を調べる上で重要な資料、重文なども含む資料でしたのでよいデータなども収集できましたほか、依頼のありました機関のデータベースより弥生時代~桃山期頃までの銅製品や鉄製品のデータの一部もいただくことが出来ましたので今後の先皇朝銭期のデータが一気に充実したものへパワーアップできました
先日も新聞などで紹介されたそうですが今回材料調達地など新たな発見がありましたので近いうちにまた改めて発表があるかと思います
 
さて今回は前回に引き続き P社の誤判品を1点

 

 

結果です

間違いなくP社鑑定品であります

サービスカット

写真の右方向が光源であることがよくわかりますショットです

別個体でライティングテストをしてみましたところほぼ同じ位置に影が出ることも確認済みです

 

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2017年1月11日追記

この記事に対しお客様よりご意見を賜りましたため下記の通り回答させていただきました

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ご丁寧にありがとうございました
記事内容につき真摯にご精査いただきましてまことにありがとうございます
 
仰られますとおり部分重文のような現象は珍しい現象ではございません
これは鍛造銭の場合プレスによる地金伸延率の差から起こる現象で僅かに鍛造圧の低い方へより引き伸ばされる力が働くことによって起こる現象であり、金型そのものに存在する特徴ではなくプレス時に金型のセッティング誤差により起こる現象であります
 
当然その点についての検証は行いました
この現象が現れている部位ですが、鍛造工学的には最も金型との摩擦係数 が高い位置となるわけなのですが、そうした部位には鍛造特有の擦り傷のような筋状の構造が強く現れます
ところが本個体ではそうした特長が全く存在しなかったためにおや?と思い精査いたしました
 
記事の個体はそうした伸延率の差によるものとは全く異なる特徴でコインの中心部から6~7cm程度上からの照射時に出来る影と同じ形状で出ており影の短い部分ではより深く(影の場合濃く)長い部分では浅く(薄く)現れており一般的なLEDを光源といたします3D形状スキャナーで照射する高さ、位置とほぼ合致するものであります
実際3D形状読み取り機で様々な高さ、検体を極々僅か傾けたりして3D情報を取っていただきましたところ実際には存在しない構造(今回のもの や、以前ご紹介いたしました1円銀貨などと同じ現象)が影と同じ位置に凹凸構造としてデータ化されてしまうことも確認済みです
通常工業製品の場合3Dスキャンしましたデータをさらに修正や補正を行うのですがそこまではしていないデータを使って金型切削を行ったのでしょう
 
実はここ数年爆発的に市場に出てまいりました超スーパーと言われます贋作の一部にも同じものがいくつも見つかっておりますので現在のプレス贋作の金型はこうした3Dスキャンデータを基にレーザーやNCなどで彫られた金型が使用されているのだと思われます
ちなみにですがこのLEDタイプの3D形状読み取り機の読み取り精度ですが、200万円級のもので 500分の1mm程度、500万円以上級で すと1000分の1mm以下にまで上がってきておりますので鍛造の収縮痕跡や目に見えないような微細な形状もほぼ完璧に読み取ることができますので切削機さえ大型のものを使えばいとも簡単にミクロレベルで同じ形状を再現できます
大型の切削機はまだまだ 億~数億円と贋作業者の手の出るものではなく、わが国の場合そうした大型切削機を導入している大手大企業などでは一般からの切削依頼やこうしたコインのような贋作製作を助長するような依頼は絶対に受けてくれないはずですが、中国などでは大企業であっても個人からのこうした依頼も簡単に受けてしまうようですのでそうなりますと小型のプレス機と安価な3D形状読み取り機さえ導入すればあとは本物と同じものが簡単にプレスできる贋 作工場が出来てしまうわけです
現在では中国以外にもタイやインドネシアなどでもこうした贋作工場が乱立しているということで、ヨーロッパや日本などに大量に流入してしまっているのです
 
近代銭という点ではお恥ずかしい話、当方は全く不勉強のためそれぞれの年代の個々の特徴といったものを一切知りません
しかし鍛造工学、鋳造術、金属の経年変異などを元に精査いたしておりこれらは俗に言われております各年代や銭種などによる特徴とは全く異なりすべてに共通(もちろん材質、サイズ、製法によってそれぞれ異なりますが・・)するものでありますのでそれが伸延率差によるものなのか二重打(重文)なのか、またはそれらとは異なるものなのか?という点につきま しては十分すぎるほどの検証を行っております
 
開封さえ出来ればSEMやEDXも使えますし、材料の精製年代も特定できますので更に断定的な答えは出るのですが、いかんせんここへきてのスラブ入りコインの人気がこうしたスーパー贋作の蔓延を加速させているようで心配です
 
PCGS社さんのほうには実はこうした誤判については既に通知をしており対策を講じるといった回答や、一部グレーディングの取り消しなどに応じていただいておりますので今後何らかの対策はされる可能性もございますが、なにぶんこうした検査には1点当り数時間~長いものでは丸々一日費やしてし まうようなものもあるため現実問題なかなか難しいのかもしれません
 
いずれにいたしましても貴重なご意見、ありがとうございました。
今後も精進してまいります。
今後ともご指導ほか、何なりとご意見ご要望、ご感想などお聞かせいただけましたら幸いでございます。