皇朝銭期貨幣分析結果 | 和同開珎ー皇朝銭専科のブログ

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和同開珎をはじめとする皇朝銭のことなら!!!

日本の初期貨幣鋳造技術の変遷をデータで追ってみよう!!
ということで富本銭から延喜通宝までの5銭を対象に成分分析を行ってみました!!
今後、出土地のはっきりした貨幣や、他、の種の皇朝銭類など、さまざまな個体のデータを収集して行こうとおもいますクラッカー


まず最初は日本の貨幣の礎となった富本銭からクラッカー
本銭はあまりにも有名な飛鳥池跡地からの出土銭となります音譜


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富本銭鋳放し銭破片 Fts01

    ポイントA     ポイントB     ポイントC    ポイントD    ポイントE
Cu  84.25      91.54      87.26    93.12     87.85
Sb   3.59       4.82       3.39     1.06      5.35  
Pb   0.75       0.34       2.15     1.24      0.19
Fe   0.78       0.44       1.68     0.91      1.93
他  10.63       2.86       5.52     3.67      4.68

他は As砒素 Biビスマス Sn錫 Beベリウム Mgマグネシウム Ag銀 Au金 Bホウ素 Caカルシウム Si珪素 S硫黄 Pリン Naナトリウムなど

銅を主成分にわずかなアンチモニーが加えられたアンチモニー銅合金で、他は不純物と考えられる
当時、銅鏡や、その他銅製品の鋳造や、蝋付け用に用いられたものなど、5種ほどの銅合金が使い分けられていたことがわかっている
現代、近代の精製鋳造技術と比較するのは酷な話だが、1300年以上昔にこれだけの技術を有していたのだから日本もなかなかのものだ


次はいよいよ貨幣を一般に流通させるための準備段階期の貨幣であります 古和同開珎の銅銭です音譜


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古和同開珎銅銭 W0312

    ポイントA     ポイントB     ポイントC    ポイントD    ポイントE
Cu  90.69      90.59      84.55    72.44     82.32
Sb   1.67       2.73       6.12     4.86      7.43  
Pb   1.01       2.81       1.67     7.33      0.87
Fe   0.44       0.79       1.31     1.95      3.01
他   6.19       3.08       6.35    13.42      6.37

他は As砒素 Biビスマス Sn錫 Mgマグネシウム Ag銀 Au金 Caカルシウム Si珪素 S硫黄 Pリン Naナトリウムなど

富本銭が完全な試鋳レベルの貨幣であったのに対し、この古和同開珎は流通を強く意識して鋳造されたものであったと考えられる
そのためだろうか・・・
増産のため銅の節約の必要性が当時より検討されていたのであろうか?
テスト的に僅かな鉛を混ぜてみた痕跡がうかがえるあせる

富本銭と比較してみると、僅かではあるが品質ムラがみられたり、少量ではあるが鉛類の混入も認められるのは今後、大量に鋳造しなくてはならなくなることを想定して鋳造工程そのものに何らかの改変をしたと考えられる!!

実際に富本銭の堰や湯道など、ロスになる部分は非常にたくさんあり、量産よりも、いかに完成度の高い貨幣を鋳造しようと試みたかがうかがえるのに対し、それ以降、貨幣の流通期の鋳造は湯道など明らかに細くなり材料の銅の節約を図り如何にたくさんの貨幣を作ろうとしたか。。。という方向へと変わっていっている証拠がたくさん発見されている!!


次はいよいよ実際に貨幣が一般に流通した時期の貨幣であります
和同開珎 となります
もっとも基本の 中字の母銭を検証してみました


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和同開珎 標準銭母銭 W0219a

    ポイントA     ポイントB     ポイントC    ポイントD    ポイントE
Cu  84.58      79.50      69.19    90.01     71.51
Sb   1.82       1.48       2.66     0.89      3.52  
Pb   6.78       9.42       4.52     3.06      1.77
Fe   0.84       0.45       0.91     0.33      1.23
Sn   3.26       1.79       4.45     2.02      2.16
他   2.72       7.36       18.27    3.69      19.81

他は As砒素 Biビスマス Mgマグネシウム Ag銀 Au金 Caカルシウム Si珪素 S硫黄 Pリン Naナトリウムなど

古和同開珎は実際には一般への流通はしておらず、あくまでも官使用のみであり、民流通への準備段階のためのものであったため使用された材料は富本銭などに近い当時の純銅レベルのものであったのに対し、新和同開珎は完全な民間流通銭であり、そのためかなりの数の鋳造が必要であったので、材料のかさ増しが必要であったのであろう、、相当量の鉛を混ぜた鉛銅合金へと変わっていることがわかる!!

品質的にも富本銭と比較してみるとかなりのばらつきがあり、大量生産による弊害が早くも現れだしていることが伺えるあせる


しかし、まだ和同開珎、萬年通宝、神功開宝、隆平永宝など、前期皇朝銭期の貨幣は比較的同一レベルの鋳造がなされているのであるが、その後徐々に材料不足や貨幣の一般流通の難しさなどからインフレが加速してゆき、結局鋳造工程、施設などはどんどん簡素化されてゆき晩期皇朝銭ではとても一般に流通が可能とは思えないほどの劣悪な貨幣を鋳造していたのである

今回最後に検査したのは全皇朝銭の中で最も質の劣るとされている延喜通宝のエラー銭を分析してみました音譜


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延喜通宝鋳放しサクハン銭 Eerr000

    ポイントA     ポイントB     ポイントC    ポイントD    ポイントE
Cu  22.56      37.19      30.22     1.88     50.68
Pb  56.51      45.25      21.80    79.13     14.46
Fe   2.68       1.11       4.21     1.12      0.26
Sn   1.41       0.36       0.10     0.00      1.23
他   16.48      16.09      43.67    17.87     33.37

他は Sbアンチモニー As砒素 Biビスマス Beベリウム Zn亜鉛 Mgマグネシウム Ag銀 Au金 Caカルシウム Si珪素 S硫黄 Pリン Naナトリウムなど

貨幣を一般に流通するようになったため材料のかさ増しが必要であったことは初期の和同開珎でもうかがえることだが、この延喜通宝に至っては不足した銅に鉛を混入する、、、というレベルを明らかに超え、大量の鉛の中に申し訳程度に銅が混じっている。。。あせる
といったレベルの材料である爆弾
今回検査した個体は延喜通宝の中では比較的銅の純度は高い個体である
ひどい個体になると平均して銅が10%にも満たない個体さえあるほどだ
また品質的にも恐ろしいほどのムラがありこれは明らかに鋳造工程、設備などに明らかな変化があったことを示す証拠であるといえよう!!

この後の乹元大宝もほぼ同じで、結局その後日本の貨幣制度は完全に崩壊するのであるドンッ