今週の火曜日は、具体名を出していいのかわからないが、私が実際に取材をきちんとしていると尊敬しているジャーナリストにお会いした

かなりの知的刺激を受けるが、日本の○○通と称する(とくに外交問題で)ジャーナリストの取材源が、いかに偏っていて、それを垂れ流し、日本人が情報操作されているかがよくわかってかなりの知的刺激を受けた

ある程度、予想はしていたが、その中には、私もかつて尊敬していた人もいるし、日本人がどんなに情報操作に弱いかと思うと暗澹たる気分になる

アメリカの情報操作は目に余るものがあるが、外国もそうだ

ロシアのKGBとか韓国のKCIAからの情報を垂れ流し(それが確信犯としてやっているのか、ほかのソースがないからやっているのかわからないが)ある情報が入った時に、別の角度の情報を取ろうとせずに、それを面白おかしく料理できる人間がテレビや週刊誌でコメンテーターとして大活躍し、それが日本の世論を形成していく

しかし、結果的に、それが情報操作になり、日本の方向が誤ってしまう

その人に言わせるとKCIAからの情報を垂れ流す北朝鮮通とされる人たちが誰一人として、金正恩が後継だと予想できなかった(料理人の人が予想できたのだから、そんなにハイレベルな情報でない)のは、彼らのニュース・ソース不足ではなく、KCIAが現在、情報機関としてかなりレベルの低い期間に落ちぶれているからだろうということだった。

予算も削られ、大統領からの庇護も得られないとそうなるだろう

しかし、いっぽうで金持ちの韓国人が、多額の金を使って、たとえば従軍慰安婦問題のプロパガンダをアメリカでやる。日本の金持ちはケチだから(日本一の大富豪は韓国系だから仕方ないが)、そういうことに金を使わない

さらに、こういうことは組織的に検討しないと、解明できないのに、日本ではそれをやろうとしないで、逆に特定機密保護法案で、一部の(おそらく頭の悪い人たち)人たちだけで情報を検討する

結局、日本は情報操作されるだけで、する側には回れない

記者クラブ問題にしても、その存在が悪いとか、入れてもらえないメディアがあるのが悪いという論を立てる人がいるが、記者クラブ発表を垂れ流し、その背景取材もしなければ、自分の頭で考えないマスコミがいて、どの新聞も、どのチャンネルも同じ論調になるのがまずいという意識がないという問題が論じられないことに疑問を呈されていたが、その通りと思う

とにかく日本のジャーナリストは、一つのニュースソースから「確からしい」情報をもらえば調べない

別のソースを得ようとしないし、現地取材もしない

さらに統計数字の裏付けを取らないから、たとえば、たった一件の凶悪犯罪や事故(たとえば飲酒死亡事故)が起これば、統計上は減っていても、法律を変えろと大騒ぎをする

なんて数学ができないのだろうと思っていたら、とある新聞記者から、文科省が国立文系を廃止する方向を打ち出したという通知を出したということで取材を受けた

確かに、文系が私立だけになると、そうでなくても数学のできないジャーナリストだらけなのが、もっとひどいことになる

このことについては、日経BPの連載
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120419/306192/
で書くつもりだが、日本の大学、とくに文系の大学教授はそう言われても仕方ないところもある

そんな中で、前に紹介した『男性漂流』の奥田祥子さんは、きちんと調べて取材するという点ではすばらしい記者だ

この本の中の登場人物も、何年、何十年にわたって、経時的に会い続けたり、追跡調査的なことをやっているので説得力がある

最終的にある種の悟りのようなものを体験して、幸せになるというパターンが多いのが気になるが、事実は小説より奇なりなのだろう

ただ、読みようによってはリストラされても、気の持ちようで幸せになれるということで、リストラが合理化されたり、そういうことを平気でする経営側の気を楽にしかねないので要注意な気がした

私は精神科医のためか、そういう人の中に何人も最悪の結果、つまり自殺に陥った人も知っているので、素直に納得できないところはある

ただ、それでもこの本は名著であることに変わりないし、私自身はっとさせられたこともある

というのは、奥田さんはきちんと統計数字にも当たっているからだ

男性の生涯未婚率が2割を超えたのは知っていたが、30年で8倍になっているという。女性は現在10%強だが、この30年で2倍になったとのことだから、男女が逆転したわけだ

さて、私は高齢者を専門としているので、介護家族をおびただしい数で見ているのだが、そんな私が驚いた数字がこの本にある

要介護者の主たる介護者であるが、妻が一位、夫が2位で、娘が3位なのだが、4位が今では息子になっている

この36年間で息子介護が5倍に増え、嫁は1977年当時は1位だったのが、4分の1に激減し、息子に抜かれたとのことだ

夫介護も含めて、まさに男性介護の時代がきているといえる

うすうす感じていたが、数字を見せられる説得力がある

この本を読んで、納得できないわけでないが、少し悲しく思ったのは、アンチエイジングの末路のレポートだ

アンチエイジングが一時的にうまくいき、若い女性に手を出し、結果的に家族に捨てられそうになり、アンチエイジングをやめ、老いを受け入れるというストーリーがいくつか出ている

著者はハッピーエンドのように見ているようだが、私の知るアンチエイジングに努める人たちは違う

文化人や富裕層なのだが、若い女子穴と再婚したり、若返りを楽しみ、歳をとらない生き方を謳歌している

少なくとも、50代、60代、そして70代の人が老いと闘い、こちらが想像する以上に若々しくしているし、本人も幸せそうだ。家庭崩壊になるというよりパートナーチェンジをする人が多い

道徳的なことはともかくとして、私はそれを好意的に見ていたし、自分もいつまでも若々しくしていたいし、自分のアンチエイジングの患者さんにもそうしたいと確信していた

しかし、実際には、ここでも格差社会が進行し、富裕層はアンチエイジングで老化を避け、人生をエンジョイしているのに、中流以下の人間はアンチエイジングをするより、老いを受け入れたほうがいいということであれば何か哀しかった

ただ、取材をしっかりしているいいジャーナリストの書くものは、そのリアリティは参考になる

私も今後はアンチエイジングを富裕層に勧めるということになるのだろうか?